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怪談の学校  作者: runa
40/48

クラスマッチ前後譚~瓢箪から駒という例えは、非日常にこそ似合うのかもしれない*解答編~

久方ぶりの投稿に、ようやくこぎ着けました(=゜ω゜)ノ

もうすぐ鎮めの谷編も、折り返し地点へ辿り着けそうな今日。

今回はサブタイトル通りの解答編となります。


 *


 取り敢えず、今の状況に至る過程を纏めてみることにした。

 周囲がまるで死人の如き顔色を保ったまま、茫然とあらぬ方向を向いている最中では有意義な時間になるだろう。

 以下、さくさく進めます。


 明け方に、螢澪邸を高麗、風狸青年、自分の面々で飛び立った後。

 合間合間に休憩をはさみながらも昼前には『鎮めの谷』へと辿り着いた。そこでハンザキたち(やや大きめのオオサンショウウオの群れ)と遭遇すると共に、山姥である周防様とも顔を合わせることとなる。

 その後は、周防様の案内で山を登ること暫し。辿り着いた山頂にて、巨大な巌を見つける。

 巌の中には『緑麗の神』。しかし、狸寝入りであったことが判明。

 周防様の噴火が小休止を迎えた頃、明かされたのは驚愕の事実であった。


『桜庭の咎』を雪ぐ際には、おそらく最も有効的に作用するであろう『証』の存在。

 それ即ち。

 喪われた筈の『海側の一怪異』が鎮めの谷で眠ったまま埋もれているという神の言葉。

 その証を探し出し、再び仮の社(巌)を訪れることを約束して下山した。


 しかし時は夕刻。

 山間で一夜を越すなどという恐ろしい選択など選べるはずもなく、今日のところは一先ず螢澪へ帰還して明日に備えようと言っていた最中。

 摩訶不思議現象により、神域の境から見知らぬ場所へ飛ばされることとなった自分。

 具体的には、夕顔の花につられて屈みこんだ後には周囲の光景が一変していた。

 何それだね。

 うん、意味が分からない。私もだよ。――――それはさておき。

 夕顔と橙色の明かりに照らされた山間の里の入り口で、思わぬ人物と遭遇することとなる。それは数日前から里帰り中であったという瓢箪君。

 やむを得ず、彼に協力を仰ぐこととなった。

 それに対し、ため息をつきながらも案内を承諾してくれた瓢箪君。いい友人を持って自分は本当に幸いである。

 夜の闇の中、山間を山狩りされる事態を防ぐため、鎮めの谷へ降りて来た瓢箪君と自分であったが。ここでやはりというか何というか、ハンザキたちと再遭遇。

 一瞬の隙を得て、鎮めの谷を渡ろうとしたがその半ばでハンザキたちの襲撃に合う。

 そうして揉み合った末の――――岩間落ち。

 当然のことながら、傷だらけになった自分(基本的に身体は普通の人間と変わりません)と自分の満身創痍に絶句しながら薬草で手当てをしてくれた、瓢箪君。

 その後、穴の底へと舞い降りて来た高麗、風狸青年と合流し――――まあ、取り敢えず無事で良かったと。そう言って半ば強引にオチまで持っていこうとした自分であったが。


 結果は、見てのとおりである。

 やはり、穴の底へ落ちたのはまずかった。

 骨折はもちろん、大きな外傷こそ見当たらないものの。手足、首、顔……まあ、要するに衣服で覆われていない大部分に切り傷やら打撲痕などが多数。

 遠目で見ても、誤魔化せないだろう。

 誤魔化せなければ、何が起こるか……それを改めて口にするまでもない目の前の惨状。


 周囲に転がる面々のメンタルケアには、相当の時間がかかることだろう。

 兎にも角にも、この満身創痍によって罪のない『彼ら』が祖父の口に飲まれる事態を回避しなければならない。

 いずれにしても、重要な点。それは『時間』だ。

『螢澪に帰宅するまでの時間』をどれだけ伸ばせるかに、全てが掛かっているといっても過言ではない。



 ――――以上。ここまでの纏めでした。何か質問はあるかな、瓢箪君?」



 そう締めくくり、他の二人とは違ってまだ虚ろさが軽度で済んでいる瓢箪君へ視線を向ける。

 視線を向けられた当人はと言えば、逃げ場のない現状を再確認すると共に、混沌の最中に在るらしい。

 非常に恨めし気な視線を返すと共に、何やら色々と諦めた様な声でこう言った。



「君が非常に面倒な家系に連なる怪異だということは、改めて分かったよ」



 それには、真正面から賛同したい。賛同します。寧ろ他にない。

 仮に一般的な怪異家庭の場合を想定してみよう。

 一先ず生きて戻るだけで、幸運ではなかろうか。

 この際、多少の傷などは諸々目を瞑って皆で無事を喜び合おう。帰宅後には、そんな微笑ましい情景が広がるはずだ。


 うん、分かっている。これが所謂、現実逃避の典型的なパターンだとも。

 片や、一般。片や、それ以外。

 日和の一族がどちらに振り分けられるかといえば、うん。恐らく後者だ。


 ……微笑ましい情景は、零という数字の遥か向こうにあるのだ。

 現実というものは、得てして儘ならないものである。

 理想はあくまで理想のままに留まる。それが真理だ。安易に踏み込んではいけない。

 現実を見据え、謙虚に生きよう。



「……この傷が目立たなくなるまでに、どれくらいの日数が必要になるだろう……」

「……仮にも龍の血を引いているのなら、全快までに二日は掛からないと思うけど。……ただ君が全快する以前に、ここら一帯が壊滅的な被害を受けることになる予感がする」

「……全くもって笑えないなぁ。うん、笑えない」

「真顔で言わないで。これ以上空気を重くして責任とれるの?」

「……取れないです」



 未だに明ける見込みのない、春の宵。

 先の見えない焦燥と自分の不甲斐なさに眩暈に似た何かを覚えている。

 そんな最中。

 ごそごそと懐から、小さな小瓶を取り出した瓢箪君。

 何をするつもりだろうと、見守っていれば徐に蓋を取って徐に中へ呼気を吹き込んでいる。


 ――ふわり、と。

 小瓶の中から明かりが漏れ出したのと、目を丸くした少女が問いかけるのとはほぼ同時だ。



「瓢箪君、それは?」

「うん? ああ……君、見たことないんだね。これは狐火の残り滓。非常用に懐中へ入れておいたやつ。これからどうなるにしても、こうして合流出来た以上は谷に留まる必要はないよね? ――――一先ず、里へ戻ろう」



 そう言って差し出された手に、思わず見上げた先。

 苦笑交じりのそれに、その場で小さく首を横に振る。

 瓢箪君を、ひいてはその故郷をこれ以上巻き込むことはできないと思った。

『何』をきっかけとして、月見里の里へ導かれることとなったのかは分からない。

 だからこそ余計に、躊躇いも強くなる。



「……君は本当に。初めて会った時から思ってはいたけど、変な怪だね」



 ぽつり、と零れた瓢箪君の声に俯いていた顔を僅かに上げた時だった。

 いつの間にか、高麗と風狸青年が双翼を広げて同じ方角へ警戒のまなざしを送っている。


 ひらり、ひらりと。

 頬を掠めて、一瞬の間のあと。


 一帯を、上空から吹き降りてきた一陣の風が薙ぐ。

 身体を巻き上げられそうなほど強い風力であったろうそれを、翼を広げた彼らが相殺したらしい。思ったよりか、吹き当たる衝撃は少ない。

 微かに、潮の香を纏った風が通り抜けて行った後。

 そろそろと顔を上げ、続く余波は無いものか構えていたものの。


 頭上から落ちて来たのは、何やら見覚えのある一片だった。



「――――風便り?」



 丁度、目の前に落ちて来たそれを掌で受け止めた。

 尚、目を瞠ったのは少女だけではない。



「……ここ一帯の大気が、異常なほどに揺らいでいる所為なのかもしれません」



 風の凪いだ谷に、高麗の張り詰めた声が響いた。



「先ほど私が螢澪へ向けて送った『風便り』が弾かれ、届かずに帰って来た以上……いずれにしても帰還は困難です。御身の安全を図るためにも、まずは原因を突き止めなくては。姫様、おそらくは螢澪からここへ辿り着くことも含めて双方向の干渉が断ち切られた現状です」



 開けた谷に、何の冗談かと言いたくなるほどの不可解な現状を告げられて。

 風の過ぎ去った後を、些か呆然と見送っていた少女。

 そのまま視線を上げ、空を仰いだ。

 暗い暗い、夜の色。月明かりは、雲に隠れてほんの少し。



「……さて。とんだ休みになったようだ」



 思わず零れ出た言葉の後、けれども少しく口許に残る微笑。

 考えようによっては、好機とも。猶予とも言い換えられなくもない。

 それが一体、何の意図もしくは余波によって引き起こされた現状であるのかはさておき。



「うん、まずはお言葉に甘えて養生することにしよう」

「……君といると、何だかんだで退屈はせずに済みそうだよ。日和の姫様」



 宜しくお願いするよ、瓢箪君。と。

 今度は少女から差し出された手に、やはり苦笑交じりに伸ばされた手。


 こうして傷だらけの少女と、二色の翼を先導して山間へ向かって歩き始めた瓢箪君。

 木々の間を縫うようにして進めるのも、その手にある懐中狐火のお蔭である。


 彼の案内によって彼らが月見里の里へと辿り着いた時には、既に夜は白々と明けていた。

 淡い菫色に染め上げられた明け方の空に、星が一つ瞬くばかり。



「改めてようこそ、月見里の里へ」



 疲れ切った様子こそ、隠せないものの。

 振り返りながら、そう告げた瓢箪君の表情は明るい。

 彼にとっては、こうして故郷に無事に帰りつけたこと自体が何よりも喜ばしいことであったのだろう。

 巻き込んでしまった原因としては、なかなかに眩しくも痛い笑顔であったとだけ伝えておきたい。


 何はともあれ、夜の谷から朝の光降り注ぐ山間の里へ移動してきた現状。

 葛の葉に覆われた緑深い集落の小道を進んでいく間、まだ早朝であるにも関わらず好奇心旺盛な視線が四方八方から向けられているのを感じる。

 うん、何というか予想外だ。

 こうした山奥では、割と閉鎖的な対応が取られても不思議ではないと思ったが。

 やはり人と怪異では、似通っている面もある一方。

 何故にと言いたくなるほどに、不思議なベクトルを感じ取ることも儘ある。

 具体例としては、まるで険を感じられない四方の視線然り。

 何の躊躇も無く、駆け寄って来る数人の子供たち然り。



「次期里長! どうしたの? 何か珍しいの連れて来てる!!」

「なあ、なあ。その傷、山頂から転がり落ちたの?」

「これ、家のとーちゃんからとっときの軟膏」

「あ、わたし裏山のバァ様に話し付けてくる!!」



 賑やかである。加えてとても親身だ。

 そして二番目の子よ、山頂から転がり落ちたら今頃自分は生きていないと思うよ。

 差し出される『とっておき』の軟膏も、感謝を伝えて受け取れば。真っ赤になって葛の葉の茂みへ戻ってゆく。

 可愛いな、何だろうあれ。

 本当に怪異かな……

 おや、何だかデジャヴ。このやり取りは以前にも覚えがある。



「次期里長さま、宜しければこの薬壺も……」

「今から子供たちがバァ様を連れてくるからな。養生しなさい、若いの」

「酷い傷だねえ……山頂からでも落ちたのかい?」



 子供たちだけではなく、あっという間に周囲を囲む大人たち。

 ワイワイガヤガヤと早朝から何とも皆様、早起きである。

 そしてまた言われました、山頂落下説。怪異基準が恐ろしすぎて、寧ろ苦笑しか浮かばない。

 浮島の様相を再現しつつ、瓢箪君の案内で辿り着いた先。

 それは大きな、茅葺きの家である。思わず足を止めて、屋根に見入ってしまう。



「……そんなに珍しいかな?」

「うん。実際に現物を見たのは初めてかもしれない。構造を知りたいです」

「君って……いや、まずはそれより先に体を休める方が先だよ。さあ、中へ。空いている部屋に案内するから」



 呆れ声も何のその。

 普段から、肩にモッ君こと冷静な着眼点を常備している自分にとっては寧ろ日常です。

 そう、口から出掛ったのを辛うじて噤む。

 少なくとも人様の家で、声高々に伝えるような内容でもない。

 まだまだ自分の良識は、人並みに機能しているようだ。何よりである。



「古い板の間だから、足元気を付けてね」



 瓢箪君からの親切な前置きを挟みつつ、外観よりも遥かに長い廊下を進んでは折れ、折れては進みつつ。

 途中、趣のある回廊を通り過ぎ、案内された先は南の離れであるという。



「ここが一番、家の中では日当たりもいいからね。……とにかく今は、休むのが君の仕事」



 そう言いながら手際よく布団を敷いてくれるばかりか、納戸からは浴衣と薄手の羽織まで出して、きびきびと用意してくれる瓢箪君。

 君は出来た嫁か何かだろうね……と。

 言葉にはならずとも、無言の視線に何かしらを悟ったものだろう。

 若干何か言いたげな表情を浮かべたものの、寸前で言葉にはしなかった模様だ。

 聡い、聡いね。瓢箪君。

 寧ろその点においては、モッ君の上を行くのかもしれないよ瓢箪君。



「一先ず、これでいいかな? 水差しと念の為に熱覚ましを取りに行ってくるから、その間に着替えを済ませておいて」



 そう言い残し、颯爽と障子戸を閉めて去った背。

 それを見送った後、深呼吸を一つ。これは何となくである。

 手早く着ているものを脱ぎ、用意してもらった浴衣を纏う。手触りのいい羽織に袖を通し、脱いだ服を一先ず畳んだ。乾いてはいるものの、解れもあるし泥だらけである。

 後で洗濯様式の確認をしておこう。

 内心で一人頷きながら、ここでようやく離れの障子戸を開放する。


 まるで図ったように空から舞い降りて来た二人。

 箱庭の風情漂う一角へ翼を畳んだ二人に、これまでの状況を説明した。

 それと同時に、彼らからの報告も受ける。

 報告とは何の話かと、疑問に思われる方もいるかもしれないね。

 彼らが今までどこにいたかといえば、空の上。

 月見里の集落が見えてきた辺りで一度上空へと上がっていたのである。

 いきなり大勢で押し掛けるのもどうか、という心象的な意味合いもあるが。

 夜が明けた後、大気の歪みが改善されているかどうかを確認しに行ってもらったのが一番重要な目的だ。

 しかし舞い降りて来た彼らの表情を見れば、大凡は察せる。



「……やはりまだ、大気の歪みは残ったままなんだね?」

「はい、姫様。原因すら掴めない現状に作為的なものも感じるところではありますが……確証のないことを口にするのは避けるべきでしょう。私たち二人で定期的に大気の様子は確認してゆきます。姫様は、何よりもまずその身体を休めることに専念なさってください」



 うん、それについて異論はないよ。

 今を好機と捉えて体の回復に努めることで、二人の助命に直結するとあれば。

 この満身創痍を可能な限り、出立前の状態へ回復させることに努力は惜しまないつもりである。

 まぁ、努力云々で傷口が癒えるわけでもないだろうけどね。

 病は気からというように、気を回復方向へ意識させれば何か変わるかもしれない。

 まずは、そんなところだった。



 それから暫し、里の賑やかな様子について彼ら二人へ語っていると。何やら遠方から子供たちの楽しそうな声が離れの方まで聞こえて来た。

 何事だろうかと顔を見合わせれば、何やら高麗だけはピンとくるものがあったらしい。

「すぐに分かりますよ」といったきり、直接的な回答を保留していた。


 結果、高麗の言った通りになるのだからやはり年の功というのは侮れない。


 水差しと薬を持って障子戸を開けた瓢箪君の後ろに、灰色の老婆。


 言うまでもなく、山姥こと周防様である。

 昨日の夕刻に分かれた後、それほど間を置かずしての再会と相成った。



「やれやれ……お前さんたち、余程に自殺願望があるらしいな? 寄りにもよって日和の姫にこれだけの傷を付けることを許すとは……」



 大人しく布団に半身を預けつつ、上半身を起こした状態で腕を伸ばしている。

 その伸ばした腕の所々には、細かな傷。洗い清められ、その上から塗り拡げられる謎の軟膏。色彩が非常に毒々しく見えるのは光の加減だろうか。

 皺の多い老婆の手は、しかし思ったよりかは柔らかくてしっとりしている。意外だ。

 そんな、間近に山姥の顔を拝む現在。

 見様によってはまさに詰みの光景である。

 ただしそれも、手にしているのが刃物でない時点で早計であったことが分かるだろう。



「それは認識の誤りです、周防様。元より、自分がふらふらと夕顔の花につられて道を逸れたのが全ての起因でしたから。彼らの責任云々の問題ではないですよ」

「ふむ……情に厚い気質は日和の気質というよりかは、そなた個人のものだな? まあ、よい。他でもない姫君が言うのであればそれで良かろう。しかしだ、これ程の外傷を受けるような脆さであれば、今後はもう少し行動に気を配るべきだろうさ」



 一応、忠告はしたよ。と。

 鬼女にも近しい、何やら意味ありげな笑みに若干冷や汗をかく現在進行形。

 いやはや、これはもしかすると察せられているのだろうか。聞きたいが、とても聞けない。

 明かしたからといって、すぐさま取って喰われるようなことはないと思いたいが……。

 如何せん、ここはオカルト界。忘れてはいけない不問律。

 自ずから、お腹空いていませんかと猫の前に腹を出して寝転がる鼠はいない。



「さてと。姫君の外傷に関しては、あとは治癒能次第だ。とにかく体を休めな。もう、鎮めの谷へ行く必要もないだろうしね」

「…………あの、周防様」

「うん、何だい日和の?」

「今のお言葉は、どういった意味合いでしょう?」



 ――――行く必要が無い? それは『証』を見つけたらの話だろう。


 おそらく、老婆以外の全員がそんな疑問に首を傾げる中。

 それに対し、目を丸くする山姥のいる光景。

 改めて思い返しても、見ようと思って見れるものではない。


 呆れた様な溜息を零しながら振り返った先。

 水差しを布団の脇に置いて、こぽこぽとグラスに水を注いでいる最中の瓢箪君が「何ですか、周防様」とやはりこちらも疑問符を浮かべつつ問うている。



「呆れた……何という子供たちだろうね。自分たちが既に持ち返っていることにすら気付いていなかったのかい?」



 その発言に、場は凍り付く。

 問い掛けるような視線が痛い。

 二色の翼に、いえいえと首を振る最中。

 全員の視線が最終的に行き着いた先――――それはもちろん、絶賛水汲み中の瓢箪君である。

 そもそも、瓢箪君が水を汲んでいるという光景自体にこちらとしては色々と膝を詰めて話し合いところだ。

 瓢箪だよ? いや、まあ確かに顔面が瓢箪仕様という訳ではない。

 瓢箪君の場合は、顔が体に比べて大きいという特徴があるだけで。

 ただし資料では、瓢箪型のお顔だと明記されていた。実は調べているのである。話が違うじゃないかと色々思ったのも、あくまで過去のお話なのである。

 言葉にこそしません。ああでも、誰かと語り合いたい。まさに葛藤である。


 それはさておき。話を戻そう。

 そろそろ場の空気が、雪解けを迎えつつあるのだ。



「瓢箪の、懐に入っている青い石は一体何だい?」

「……そういえば、見覚えのない石が入っていました。どこで入ったのかも分かりませんが」



 徐に懐から取り出して来た、青い石。

 一見すると、透き通った青い硝子(ガラス)のようにも見える。

 日差しに翳してみると、何やら半透明の空洞の中に水が閉じ込められているようだ。



「それは、玻璃(はり)だ。要するに、水晶のことだよ。ただ、その色が問題だ」

「どういうことですか?」

「はぁ……瓢箪の、天然の水晶がそんな色彩を持つものか。紫、黄、緑、黒……他にも多少の彩はあるが。――――ここまで言っても気付かないのかい?」

「まさか……ですよね」

「瓢箪から駒が出る、という言葉もあながち嘘ではないらしい」



 その言葉で、場の全員が理解する。

 つまり、瓢箪君の懐にいつの間にやら入り込んでいたその水晶――もとい、自然にはあり得ない青い色彩の水入り玻璃が『証』そのものであることに。


 一先ず、今回の証探しに関しては出番云々の前に現物が目の前にあるという驚愕の結末を持って幕を下ろした。

 恐るべし、瓢箪君。

 当人がまるで意識していないあたりが、何とも言葉にならない。

 (ことわざ)を、今一度見直していきたいと思う今日この頃である。


ようやくたどり着きました40話目となります。

御読み頂いている方々へ、改めて感謝の気持ちを込めて。


※予想よりか、長文となったために中盤では無く後半に解答のタイミングをずらして話数を調整しております。


次回は、神様に再び会いにゆきます。そこから始まる『もう一つの探し物』に関しても出来れば41話目に加えて往きたいところです。


それではまた、お会いできる幸運を願いつつ……

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