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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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50 懐かしさと意外性

「久しぶりだな――武親」


「慶……広?」


 目が覚めると、そこは蠣崎氏の本拠地・徳山館の中であった。

 そして懐かしい顔ぶれも。俺と同い年の転生者、蠣崎慶広である。


「かれこれ5日も目覚めなかったから、どうしたものかと心配していたぞ」


「い……5日も?」


 いや、懐かしいと表現するのは本来おかしい。

 茂別館と徳山館、お互いの仕事場は別の場所。

 すなわち仕事と立場の関係上、何か月も会わないことなど珍しいことではない。

 

 それに比べて、今回の戦で顔を合わせられなかったのもたかだか数日。

 だが体感の時間は、数日どころか数年と言ってよろしい。

 まるで、故郷に残してきた旧友と再会したかのような感覚である。


「なんで俺、こんなところに?」


「それについては、余の口から直々に伝えておこう」


「慶広が?」


「ああ。大体の話は勝山館の者より聞いた」


 俺の記憶は、ヴィクトリア王女との一騎打ちに敗れたところで途切れている。

 あの後一体どうなったんだ? どういう経緯で降伏に至ったんだ?


「お前が一騎打ちに敗れた後、勝山館の将兵はあっさりと降伏したそうだ」


「……そうか」


「そして余達が守備についていたこの徳山館も、時を同じくして膝を屈することになった」


「徳山館は結構もった(・・・)のか?」


「余としてはもったとは思えないが、今回のお前の感覚としてはもったほうである、と言ってもいいだろう」


 へっ、さすが慶広だな。 俺と違って、戦いには結構慣れているようだし。

 けど、兵力差を覆すまでにはいかなかったようだな。


「そして意識を失ったお前が、徳山館に運ばれてきた。しかも運んできたのは、相手の国の王女だったそうだな」


「お、王女?」


「ああ」


 王女って……まさか、ヴィクトリアが?

 互いに矛まで交えた相手が、そんなことって……。

 しかし俺の脳裏に、彼女のあの言葉がふと甦る。 


 ――「貴方はこんな所で、命を散らすべき人間ではありませんわ」


「……」


 彼女の言葉を再び考え直す俺。一方、慶広は説明を続けた。


「今回和睦を迎えるにあたって、蠣崎方の全武将が出席することになった。だが、お前がなかなか目覚めないものでな。余も含め皆が心配していたぞ」


「それは……悪かったな」


「体の具合は大丈夫か?」


「多分、平気」


 俺は自分の体に手を当てた。

 さすがに、一騎打ちの傷跡は残っているが、立って歩けないほどでもない。

 こういうところは、チートボディーのおかげと言って良い。


「眠気が取れたらすぐ皆のもとに向かえ。いいな?」


「お、おう……」


 布団の上で上半身を起こしている俺をあとに、慶広は退室した。



 ◆◆◆◆◆



 しばらく眠っていたため、足取りがおぼつかない俺。徐に皆のもとへと歩を進める。

 そして大館に到着すると、そこには既に蠣崎氏傘下の武将が集まっていた。 


「五郎! ようやく回復したか」


「父上」


「良かった……。もし目覚めなかったら、私、私……」


「母上。大丈夫です。もう心配はありませんよ」


 父・武治は俺の回復を素直に喜び、母・お凛は涙を流して俺に抱きつく。

 

「うむ。誠に頑強なる武士(もののふ)にござるな」


「何を申すか、越中守殿! 頑強なるはこの某じゃあ! あの小童に非ず!」


「ふん! まだくたばってなかったのですね、豆坊主」


「おーい五郎殿。一緒に酒を飲もうではないかー……」


「戦に負けたからと言って、自棄酒はほどほどにしろ、備中守」


 他の武将も、いつもとさほど変わりない様子であった。

 戦に敗れ髷を解いているにも拘わらず。

 

「そろそろ和睦の時間よ。早く座れば?」


「む~。勝てなかったな~」


 和睦の場には、和人の武将のみならず、首長をはじめアイヌの人たちも出席していたようだった。

 

「私の友、チコモタインとの再会があるのでな。出席するしかあるまい」


「でもこれで、お父さんと会えるんだね~。よかった、よかった~……」


 リシヌンテの父にして、知内(チリオチ)の首長・チコモタインと再会? ハシタインとリシヌンテの言動から察するに、この場にはいないのか? 

 そういえば、蠣崎方の武将も何人か見当たらない。もしかしてこの場で捕虜の返還でもあるのか?


「武親、お前の席はここだぞ」


「あ、慶広。悪い」


 近くにいた慶広に指定されたのは、父・武治の横。まあ、順当な席の配置だな。

 次に俺は、ほかの武将の配置に一度注目する。

 季広さんは、俺たちの代表だからやはり先頭か。で、その横に長男の舜広(としひろ)、三男の慶広の順に着席。

 次男の元広は、配下の明石家に養子に出ているため、そちらのグループに。


 そして後ろには、守継や広益のオッサンをはじめ家臣が座している。

 そんな中で俺たち不破一族は、家臣の中では結構前のほうに位置取っている、と。 




「――待たせたな、皆の者」


 そうして数十分経った頃、ついにミュルクヴィズラント王国側の司令官が徳山館に到着した。

 今回の戦勝国は王国。当然、上座には王国側の司令官が、下座には俺たち蠣崎方の武将が座ることになる。


 上座には、俺と先日まで戦っていたヴィクトリア王女をはじめ、獣人部隊のブレンダや、聖職者部隊のアストリッドの姿も見られる。

 

「……?」 

  

 だが、総司令官というべき人物が座るところにいたのは、見たことのない1人の銀髪翠眼の女性。 

 徳山館に入ってきたときも、先頭を歩いていたのは彼女であった。

 気になった俺は、声を小さくして秘かに慶広に質問する。

 

「な、なあ慶広」


「なんだ?」


「あの総司令官っぽい女性、誰なんだ?」


 すると慶広は、想定外な回答を返した。


「ああ。彼女はこの徳山館の攻略にあたっていた、第1師団の師団長にして第1王女の方らしい」


「……なんですと!?」


 おい慶広。俺が第2王女であるヴィクトリアと戦闘しているときに、あんたも第1王女と戦っていたとでも言うのか?

 なんという偶然。というか、こんなド田舎の攻略に王女2人を派遣とか、もう訳わからん。

 

 そしてもう1つ、意外な点を俺は発見した。


「あともう1つ気になったことがある」


「なんだ?」


「俺たちに戦を仕掛けたあの大佐。姿が見当たらないんだが?」


 そう、あの喧嘩を売ったとしか思えない要求を叩きつけたあの(・・)フルホルメン大佐が、何故か徳山館の中にいなかったのだ。

 経緯から考えて、総司令官の席かその近くにいてもよさそうな人物なのに、である。


「さあな、そこまでは余も知らん」


「……そうか」


 だが理由は慶広に訊いてもわからなかった。

 すると俺は、ふと勝山館でのヴィクトリア王女の発言を再び思い返す。


 ――「わたくしはあのエルフの大佐を、“監視”しております」


 まさか今回の欠席は、あの発言と何か関係が……?

 けどこの場じゃ聞けないしな。今は黙って、和睦の内容を聞き入れるしかない。



 和睦を結ぶにあたって静まり返る徳山館。そしてようやく、その式が始まることになる。


「これから和睦の調印式を執り行おうぞ。わらわはミュルクヴィズラント王国側の代表、王国軍第1師団長のイングリッド・ティルダ・ミュルクヴィズラントじゃ」

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