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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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41 兵糧庫捜索

 勝山館は、約100年前に起こったコシャマインの戦いにおいて、陥落を免れた館の1つだ。 

 だから普通に考えれば、他の館よりも守りは固いはずである。

 しかしながらここも、この前のアイヌの武装蜂起でとうとう陥落してしまった。


 茂別館も同様の館でありながら、王国軍の勢いの前には無力だった。

 

 つまり俺としては、常に館を占領され、そこから自分の背後を襲撃される恐怖に怯えながら戦い続けていることになる。

 まあ今回に関しては、そうなったらさっさと降伏でもするしかないだろう。

 だが意地でも、降伏せねばならない状況下には置かれたくない。

 そのためにも、起死回生の一発をお見舞いする必要がある。


「一発逆転だ……見せつけてやる……!」


 連日の敗戦、兵の士気もガタ落ちで逃走も相次いでいる。だから戦意上昇のためにも、この作戦だけは絶対成功させる!


「――せいぜい、守継様の足は引っ張らないで欲しいものですね。豆坊主」


 う、この背後から聞こえる殺気を含んだ声は……。


「た、鷹姫……」


「無礼者!」


「ひいっ!」


 ああ、やっぱりだ。あの(・・)鷹姫である。

 ていうか、名前言った瞬間に刀向けないで……。


「鷹姫()ですよ。あたしを誰だと思っているんですか。お館様の長女にして、守継様の最愛の妻なのですよ。それを呼び捨てとは、礼儀がなってないですね」


「いや……それは……」


「そもそもあたしに黙って守継様と話すなんて、それこそ究極の無礼者です。なんなら、あたし自らの手で、あなたを教育しなおしてもいいんですよ? このお邪魔虫」


「ひ、ひええ……」

 

 やばい、早くこの場を離れないと……鷹姫にやられる!


「じゃ、じゃあ、俺は策を実行するので、また今度ー!」


「あ、待ちなさいっ!」

 

 俺は半ば鷹姫から逃げるように、勝山館を出発した。



 ◆◆◆◆◆



 数十分後、王国軍の兵糧庫は、意外にもあっさりと見つかった。


(あれ……? こんな近くに……?)


 それは勝山館の近く、かつてコシャマインの戦いが起こった頃(正確にはその数年後)まで花沢館があった跡地であった。

 花沢館は戦国大名としての蠣崎氏の初代・蠣崎(武田)信広の養父、蠣崎季繁の拠点だった場所。

 後に季繁死去のあと、コシャマインを討った信広が勝山館を築城したため、花沢館は捨てられたとされている。


 その跡地というのもなかなか険しいもので、崖が海のすぐそこまでせり出していて、敵の兵糧庫もそこに昨日今日で急造されたもの。

 しかも設置の途中段階なのか、造りかけのものも数多い。王国軍の軍艦も、見えてはいるがここからは遠い。

 

 とここで、俺はふと気づいた。

 周囲を見回すと、何故か守衛兵の姿は全く見えない。相手の城のすぐお膝元で、まだ建築中なのに、である。

 まずこの点に不信感を抱かずにはいられない。


「無防備すぎる……」


 それに今ここを襲撃したところで、兵糧庫に相手の食糧が詰め込んであるとも考えられず、作戦の効果はほとんどない。

 むしろ、相手にこちらの策をわざわざ公表しているようなものだ。

 

「仕方ない……。やっぱり後で、集団で燃やしに行くとしよう」


 茂別館の空城の計の意趣返しなのか?

 とにかく、これ以上留まっていても伏兵にやられる危険性もある。

 食糧がちょうど備蓄されるタイミングを待つためにも、さっさと退いてしまおう。 

 

「――一体、何をしている?」


「!?」


 俺がこっそり勝山館に戻ろうとしたその瞬間、後方から男の声が突然聞こえた。しかもこの声、どこかで聞いたことがあるような……。

 俺は再び海のほうを振り向いた。


「ふ、フルホルメン大佐……?」


「ほう、なぜわたしの名前を知っている?」


 声の主は、この戦のきっかけである要求文書を叩きつけた長髪のエルフの男、モルテン・フルホルメンだった。

 

「……あんたの要求文書を翻訳したのは、誰だと思っているんだ?」


「そんな瑣末なこと、このわたしが覚えているわけがないだろう。それより、何をしているんだと聞いているんだが」


 ちっ、見つかったか。 

 相変わらずの傲慢な態度、ムカつくぜ。……って、そんなこと気にしている場合じゃない。

 早くしないと、あいつの配下の兵がここに来てしまう!


「答える気はない、か。ならば仕方ない」


「……!?」


 大佐の指鳴らし(スナップ)によって、俺の周りを王国軍の兵士が囲う。

 遅かったか。伏兵がいるとは思ってたがまさにその通りだった。

 だが数はそう多くはない。血路を開いて今すぐ退散だ。


「ここで捕縛して吐かせるのみよ。かかれいっ!」


「覚悟っ!」


 大佐の合図で一斉に刃向ってくる兵士たち。だが……


「うおおおおっ!!」


 俺の渾身の一撃によって、相手は次々と付近の崖に衝突する。その威力を前に敵兵は思わず立ちすくむ。 


「ほうほう、これは興味深い……。あの2人の報告にあったのは、あれのことだったのか……」 


「大佐! いかがなされるおつもりですか!?」


「心配はない。第二陣、恐れず進めいっ!」


 今度は大佐の後ろから大軍か……。体力満タンなら相手してやれるが、あいにく連日の疲れでそれは無理だ。

 もっとも移動で疲れてるのは相手も同じだが……ここは退くしかない。

 俺は残り少ない体力を消耗させて、猛ダッシュで兵糧庫から逃亡した。 


「待てっ! わたしの質問に答えろ!」


「それは無理! じゃ!」


 それから少しの間、絶壁の細道で潮風にあたりながら、俺と王国軍との命懸けのレースが行われた。

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