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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
1章 戦国時代の東洋と異世界「ミズガルズ」
4/206

4 戦国時代の日本と異世界『ミズガルズ』

 世界観に関しての説明回です。

「とりあえず聞きだいのは、今俺がどこにいるのかってことなんだけど………」



 世界観の説明と言っても、一方的に話されたんじゃとても脳味噌が追いつかない。

 1つ1つ時間をかけてでも、じっくりゆっくりホロリンコと言った具合に、俺が理解できるスピードで質問をぶつけるべきだ。


『ではお答えしますね』


 フレイアは暖かな微笑みをもって、俺の質問に答えた。


『まず、この世界の名前は「ミズガルズ」。北欧神話を少しでもわかっていらっしゃる方なら、どういう世界かはに認識できますよね』 

 

 そして質問に返答する時になり、フレイアの顔が急に引き締まってマジメな表情に変わる。本題に入ったようだ。ここからは俺も、しっかり受け答えしなくちゃな。


 ――――『ミズガルズ』。北欧神話における、要は“人間界”だ。古ノルド語で「中央の囲い」を意味するらしい。

 でも人間の俺に対して、この世界をわざわざ“ここは人間界ですよ”なんて紹介しているのだろうか? 

 この疑問は、ミネルヴァが答えた。


『実は、この世界は「ミズガルズ」にあって「ミズガルズ」じゃないの』


 ……ワケわからんな、こりゃ。“人間界”って説明しているのに、“人間界”じゃないって意味わからん。

 そもそもミネルヴァさん、アンタローマ神話の神だろ? なんでそんなに北欧神話のことを詳しく答えられるんだ?

 

『わかりやすく言えば戦国時代の日本、いいえ、中国や朝鮮などを含めた東アジア全域が、異世界『ミズガルズ』にまるごと転送された。そう言えば良いかしら。つまり今のアンタは戦国時代の日本にいるワケ』

 

 最初からそう言えよ。意味不明な説明を最初にぶつけてやがって。戦国時代に来ました、それで充分じゃんか。

 俺の態度が体に出てきたのか、自然とふんぞり返った姿勢をとっていた。だが2人はそれを指摘することなく、そのまま異世界についての講義を続けた。


『最初の説明は別に無駄じゃないわよ。ここからが本題なの』


 「ミズガルズ」の説明が無駄じゃない? どういうことだそれは?


『おかしいと思いませんか? 何故戦国時代の東アジアと、全く別の次元にあるはずの異世界が繋がっているのかを』


 確かに、考えてみれば普通じゃまず有り得ない現象だな。

 前世でも、日本列島が異世界に転送されたなんてオンライン小説はそこそこ読んだけど、過去の時代の日本が異世界に移されたなんて話、ほとんど見かけたことなんかない。異常事態と言われば、まさにそうだ。


『詳しい原因はまだわかっていません。ただ、世界と世界を繋ぐ世界樹「ユグドラシル」に、通常では起こり得ないレベルの変調があったことだけは確かなのです』


 またまた新しい単語が出てきたぞ。

 世界樹(ユグドラシル)。北欧神話には9つの世界があるとされている。世界樹はそれら9つの世界を繋ぐ大きな樹のことだ。それが変調をきたしたってことは……。

 その時俺の脳裏に、この世界の異常性に関するある仮説が打ち立てられた。


「あのさ、その世界樹(ユグドラシル)に変調があって「ミズガルズ」と戦国時代の日本とかが繋がったってことはさ、同じように考えて他の8つの世界も繋がっちゃったって現象もあったのか……?」


 この仮説、決して成立しない話ではない。

 俺が言った仮説の世界をざっくり説明するならば、いわゆるファンタジー世界が海の向こうに広がっている世界。

 つまりエルフやドワーフ、獣人といった「亜人」や、魔法や精霊にドラゴン、そして今俺の目の前にいるような神々といった「神秘」、それにモンスターや魔族、そして妖怪といった「邪悪」も存在する、文字通り“何でもアリ”のファンタジーの世界になっているワケだ。


 頭痛くなってきたな。ある意味、一度の転生で二度美味しいともとれる夢の世界だが。

 通常はどっちかの世界って感じだし。


『ご名答。アンタの言った通りよ』


 ミネルヴァに褒められた時、俺は世界が途方もなく広大に見えた。そもそも時代は戦国、世界どころか日本すら踏破することままならない状況だ。

 これにファンタジー世界? 果たして用意された所で、俺が行ける機会なんてあるのか……?


『あたしとしてはこんな世界も悪くないと思ったけど、世界樹(ユグドラシル)の変調で出来た世界だってなら、そう言うわけにもいかないしね』


「……ここまで延々説明を聞かされてきたが、結局あんたらはこの俺に何を伝えたいんだ?」


『実はですね、折り入って頼みごとがありまして』


「頼みごと?」


『はい』


 次の瞬間、フレイアの口から予想だにしない依頼が言い渡された。



『あなたに、世界樹(ユグドラシル)の異常によって融合した全世界を、征服してもらいたいのです――』



 ――はい? 全世界を……征服? 今、そう言わなかったかフレイアさん?

 大言壮語にしても、さすがに限度がありますよね。

 

「すんまへん、今の話本気……ですか?」


 俺は自分の耳に世界樹以上の変調が来ているのかと思い、フレイアに聞き返す。


『はい、本気です』


 しかしフレイアは、優しい笑顔でしっかりと返答した。


 待て待て、俺が世界征服? あの世界で最大の帝国を築いたモンゴル帝国の初代皇帝、チンギス・ハンですら成し遂げられなかった偉業を、つい二週間前(?)まで一介の高校生にすぎなかったこの俺に成し遂げろって?

 

 無理無理、そんなの無理じゃん。なんの能力も持ち合わせていない俺に出来るわけないじゃん


 そもそもモンゴル帝国にしたって、最初に領土を広げた土地が良かったから、全世界の4分の1を占める大帝国に成長したんじゃないか。

 モンゴル帝国の主力は騎馬。そして彼らが領土を広げたのは草原。つまりは馬の機動力を最大限に活かせるところを占領したからだ。

 それが原因でモンゴル帝国は、短期間であそこまで大きくなったんだ。

 だから、馬が使えない海上で戦わざるを得なかった日本やインドネシアとの戦いでは敗北しているじゃないか。



 それにここは日本。山がちで移動するにも時間がかかる土地柄。

 それに1つの城を攻略するのに、結構長い時間はかかるし、後に大阪城が建てられることになった石山本願寺という、あの戦国一のスーパースター・織田信長ですら、10年かけても落とせなかった場所だってあるんだぜ?


「1つ訊きたい。なんで世界を征服する必要があるんだ?」


世界樹(ユグドラシル)を正常な状態と戻すには、何より世界の「秩序」が一定以上に保っていることが不可欠です』


『でもこの世界を見てるカンジ、「秩序」なんてどこにもないじゃない。だからアンタ主導でこの世界に「秩序」を取り戻す、なんならアンタに、もっと世界のためになる「秩序」についての考えがあるのなら、世界征服によってそれを広げて欲しいの』


 とどのつまりこの依頼は、“秩序回復”、もしくは“新秩序の樹立”が目的ってワケか。聖戦(ジハード)だな、こりゃあ。

 

 確かに国盗りとかは、戦略シミュレーションゲームをやってて興味あるけど、『世界征服』……気が遠くなるな。日本統一するだけで、だいたい一生を終えそうだし……。


『……別に、素のままでアンタにやらせるわけがないじゃん。スキルぐらい、あたしたちがやるわよアンタに』


 ほうほう、それは良いことを聞きました。

 そうだよな、それもそうだよな。何の力無しにやらせるわきゃねえよな。

 俺は拍子が抜けたように高笑いした。


「で、俺に何の能力をくれるんだ?」


『……そんな目で見るなら、やっぱやんなーい』


「す、すすす、すみませんでしたミネルヴァ様!」


『ウソウソ、ちゃんとやるわよ』


 くそう、純粋な漢心(おとこごころ)を弄びやがって。

 ミネルヴァさんも意地悪だな、くそう。

 妙に俗っぽいし。


『では、お渡ししますね』




 2人から幾つかの能力を授けられた俺は、その後能力の説明を受け、彼女たちは夢の中から消えた。

 そして俺も、彼女たち別々の神話の神々が共に行動しているのか尋ねる機会は無く、そのまま眠りに落ちたのだった。

 

 俺が授けられた能力? それも追々、必要に迫られた時に俺のほうから説明することになるだろう。

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