27 獣人部隊
エルフ、ドワーフ、魔女ときて、ここで獣人族のお出ましか。いよいよ、何でもありの組織になったな王国軍は。
しかし、部隊長か。並の能力だったらそんな地位にはつけないよな。服装も動きやすい格好の割に安っぽさもない。
どれ、ここでいっちょステータス確認でもしてみるか。
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名前 ブレンダ・ラーゲルクヴィスト
HP 14880/14880
MP 2049/2049
攻撃 1140
防御 880
魔攻 947
魔防 815
敏捷性 672
名声 9239
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さすが部隊長。かなりの高数値をたたき出してる。特に敏捷性の値は俺より高い。
だが自分より速い相手に対する戦闘は、コタンシヤムの時にもう経験済みだ。
慶広見てろ。俺はもう、二度と遅れはとらない!
「この俺が相手だ! いざ勝負!」
「……1人でいいのか?」
「ん?」
1人でいいのか、だと? まさかこの娘、1部隊まとめて相手にする気かよ?
「それはこっちのセリフだ。手加減はしな……うおっ!?」
俺が戦闘態勢に入ろうとすると、突如ブレンダの後ろから数十人もの獣人兵が俺に襲い掛かってきた。
「げ!」
間一髪襲撃を避け、何人かを撃退する俺。一対一で戦わねえのかよ?
「戦争は1人じゃできない。それがわからない者に、私は負けない」
一騎打ちはしないってことか。向こうがその気なら、こちらも兵を集めさせてもらおう。
「全軍、俺のもとに集合!! 目標はあの化け猫だ!」
俺自身はあの黒い服装の少女を、化け猫などとは思っていない。
が、兵に対する号令はこっちのほうが分かりやすい。
「……化け猫じゃないといってるだろうに。皆、容赦するな。完膚なきまでに叩け」
しかし、それが彼女の堪忍袋の緒を切れさせてしまったようで、静かながら怒りの矛先をこちらに向けてきた。なんか、えげつない殺気も感じるし。
「く、こ、怖え……」
「ひ、怯むんでねえ! こっちには五郎様がついておられる!」
集まってきた蠣崎軍兵士たちも一瞬後ずさりするが、俺の能力を信じて必死に踏ん張ろうとしている。
そんな中で、肝心の俺が折れちゃいかんよな。
「全軍、目標はあの黒服の少女だ! 戦力を一点集中させて、首を討ち取るのだあ!」
「御意!」
大量に敵兵を倒したとは言え、圧倒的な数的劣勢は覆せていない。
せめて1000人、いや500人でもいたら策の施しようもあったけど、今はそれを求めることは出来ない。
だからといって、降伏したら『世界征服』とかマジ無理だ。
仕方ない、一世一代の大勝負よ!
「おおおお!」
先に前進した兵士達に続いて、俺も愚直に、猪突猛進にブレンダの首を狙う。
まわりの味方兵が、王国軍を押しのけている時にすかさず目をつけて。
「……!」
俺は槍を振りかざした。ブレンダは瞬間気づいて防御をとるが、俺の槍はそれを突き破る。
「しゃああああ!」
ブレンダは負傷こそしなかったが、体勢を崩している。
今が好機! 畳みかけるぞ。
そう思い、とどめの一手をかざそうとした時、
「灼熱嵐」
「ぶお!?」
俺は突然、ブレンダの詠唱とともに高温の熱風に突き飛ばされた。
その熱風に巻き添えになった兵士たちが、一緒に後ろの森の木に激突。俺以外、頭から血を流して即死した。
「ぐっ、な、何だ……?」
そして俺も死にこそしなかったものの、脳と背中に衝撃とダメージが残った。
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名前 不破武親
HP 15571/18420
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「げ、ここでも魔法かよ……」
反則じゃねえか。こっちには魔法なんて無いんだぞ? ま、そりゃあ俺の能力だって反則級だけどさ。
だが今の俺には、愚痴っている猶予すら無かった。
「鋼の爪」
「どあああああ!!」
ブレンダが強力な攻撃魔法を行使して、次々と蠣崎軍兵士を一方的に撃破していく。まるで、自衛隊が異世界で現代兵器を使って蹂躙するように。
「やべえ、圧倒的すぎる……。じゃねえ、早くここは兵を一人でもかき集めて、撤退しないと!」
しかし、それは手遅れな対応だった。
今、残り僅かの手勢は、王国軍獣人部隊の獅子のような攻撃の餌食となっていた。
コタンシヤムの乱ではあんなに活躍した精兵たちが、あっけなくやられていく。気づいた時には全滅していた。
「……仕方ない。敵兵を1人でも削って、撤退はそれからだ」
すまない……皆。でも、もう殲滅されてしまったしまった以上、俺にはどうしようもない。
かくなる上は責任を取って、俺が文字通り死ぬ覚悟で仇をとってやるしかない。
本当に死のうというわけではない。だが、万が一の時はそうなるかもしれない。それでもいい。兵は全滅したが、俺は最後まで諦めない。
「まだだ……まだ俺はやれる!」
「これは驚いた。私の灼熱嵐を受けて、立っていられる将がいたなんて」
あいにく俺はチートなもんで。無駄に頑丈なんだよ。
もっとも相手もまた無傷ではあったが、そんなことは関係ない。
「負けねぇ……負けねぇぞ!」
しかし、俺が直接前線に出るときってのは、最後は結局俺だけになってしまう。これじゃやっぱり、戦略もクソもないじゃないか。
だが、四の五の言ってられない。今、自分にやれることをやるしかない。
「が、中身は猪武者のままか。全軍、手負いの少年にトドメを」
「了解!」
好きに言えばいいさ。それに俺はまだ、ここで死ぬわけにもいかないしさ。
あんたにダメージを負わせられたら、大人しく退いてやるよ。
俺はボロボロの槍を捨て、刀に持ち替えた。体力はまだ大丈夫だ。
「……行くぜ!」
俺は一瞬の精神統一をして、三度目の突撃を敢行した。




