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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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25 武親、弓を引く

 俺は一回、周囲にいる最前線の戦力について、茂別館の将兵に伝えた。

 実はさっきの無茶な申し出は、斥候を務める意味もあった。だが俺の説明に、皆は半信半疑の顔色を示している。


「俄には信じられんな……」


「兄上……信じてくれないんですか?」

  

 俺の4番目の兄、不破家政(ふわいえまさ)が訝しげな目で俺を見る。


「五郎。この緊急の時に嘘はいけませんよ」


「母上まで……」


 母のお凛までまるで信用していなかった。

 だが俺は嘘偽りの類は全く言ってない。

 やはり起こったことがあまりに現実的じゃないのか。特に魔法とか。

 大方、大軍を前に気がおかしくなって、幻でも見えたのだろうと。

 

 だが、父だけは俺の報告を信用してくれた。


「何を申すか2人とも。折角、五郎が身を挺して前線から送った報告に御座ろう。ワシは信じる」


「父上……」


「ありがとうございます!」


 やっぱり父は頼りになる。まだ耄碌してない慧眼、賞賛に値するぜ。

 

「じゃがそうなると、館を出て迎撃することは適わぬか」


「多分、一歩出ただけで即死です」


 だからといって戦況が良くなるわけでもない。

 むしろ突破口が次々に閉じていく様を、実感するのみである。


「仕方ない。五郎、四郎とともに弓兵を率いよ。お前は副将として疑り深い四郎を補佐してくれい」


 お、ついに俺も兵を率いる立場になったか。さらに戦国武将らしくなってきたな。


「了解です」


 もちろんOKだ。その任、引き受けさせてもらうぜ。

 俺は四郎こと、兄の家政とともに弓の準備を整え、兵士たちと土塁の上に駆け上がった。

 


 ◆◆◆◆◆



「……五郎。疑念を持ってすまなかった」


 家政は謝った。眼前の奇っ怪な軍を見て、彼は直ちに意見を翻した。


「でも、誰だって一目でこの(・・)状況を信じられる人なんていませんよ」


 俺は異世界人(彼ら)に関する知識を、予め前世で獲得出来ていたから、なんとか状況を飲み込める。

 けど一族の他のメンバーは、そんな情報源は一切ない。だから半信半疑だったのも頷ける。

 

 けど、圧倒されている時間が既に勿体ない。


「もう時間はありません。早く御命令を」


「ああ」


 そして家政は刀を上げて、号令した。


「皆の者! こちらも矢の雨を降らせるのだ!」


「御意!」


 一斉に矢嵐を発動させる家政隊の各員。

 俺も矢を一気に5本ずつ引いて、素早く敵の前衛を崩しにかかる。


「ぐわああ!」


「くっ、なんと苛烈な攻撃よ……」


 常に全滅の恐怖を背に、気息奄々の茂別館の将兵。自らの全力を振り絞って反撃に当たる。

 

「怯むな! 敵は少数! 数で押していけば勝てる!」


 しかし王国軍側も退かない。数的優勢を武器に、力ずくで茂別館の土塁を破壊しにいく。

 そして後ろからは、エルフと魔女たちが攻撃魔法を繰り出そうと、呪文を唱えているように見える。


「ヤバい……兄上!」


「分かっている! 皆の者、敵は妖しげな術を使おうとしているぞ!」


「え……な……なんだ、あれはぁ!」


 気づくのが遅くなったのか、何人もの兵が、王国軍の魔法に飲み込まれ死んでいく。


「くそ、負けて……たまるかよ!」


 俺は倒れていく味方の分も含め、ひたすら弓を引いた。



 ◆◆◆◆◆



「……し、死ぬかと思った……」


 1時間は経ったのだろうか。 

 家政隊は王国軍の兵を500人ほど撃破して、辛くも最初のピンチを乗り切った。

 王国軍もこれ以上の犠牲は危険と判断したらしく、一度撤退したようだ。


「でもこの調子では、最後まで持たぬぞ……」


 けど、俺たちとて無傷では済まなかった。


 茂別館の東の土塁はおよそ6割も削れていた。

 理由はドワーフの巨大なハンマーに寄る強力な打撃。そして土塁の崩壊によって、味方の兵が15人ほど転落。

 いずれも落ちた衝撃か、もしくは王国軍の攻撃の餌食となって死んだ。


 それにエルフと魔女による遠方からの攻撃も、家政隊の兵を消耗させた。

 結果100人いた家政隊は、およそ40人余りまで減少してしまった。

 残った者も皆体力を著しく減耗させている。


「なんで俺が絡む戦って、こうも味方が不利になりやすいんだ…………?」


 俺は、自分にこんな苦境を与えた世界を恨んだ。

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