24 寡勢VS多勢
「ただならぬ異国とは思うておったが、これほどまでとはな……」
あまりの大軍に魂を抜き取られそうになる、茂別館の将兵。だが、圧倒されてばかりもいられない。
まずは情報を把握しとかないと。
俺の検索能力、『瞬時兵力検索セコンドサーチ』を使って、お互いの兵力差を確認する。
今の茂別館の兵数は、およそ200人足らず。それに対し、茂別館周辺に陣取るミュルクヴィズラント王国軍、14000人。
兵力差、およそ70倍。
マジで大軍じゃねえか。どんだけ、この弱小勢力相手に本気になってんだよ。
リアル『のぼ〇の城』じゃん。ヤバいじゃん、落ちるじゃん。
そもそも『のぼ〇の城』の元になった忍城の戦いだって、500の兵に周辺住民3000人が共闘したから、最後まで持ちこたえたんだ。
今この茂別館周辺には、そんなに沢山人は住んで無いっての!
俺は混乱状態に陥った。というより、館中ほぼ全員陥っている。
だがこの圧倒的不利を、不利と見ない男が1人。
俺の父、不破兵部少輔武治である。
「いや、皆の者、これはむしろ好機ぞ」
「へ?」
「なぜ……でありましょうか?」
「ワシらは今、かの名高き楠木正成に御座る」
楠木正成。
この時代から、およそ200年以上昔の南北朝時代、後醍醐天皇の忠臣として数々の戦を戦ってきた男。
そしてそんな彼の戦は、「寡兵を以て大軍を退ける」特徴がある。
特に1333年(元弘3年)の千早城の戦いでは、100万の鎌倉幕府の軍勢を僅か1000人で退けたほど。
もっとも歴史学者は、鎌倉幕府軍を100万ではなく10万と見ているが、それでも凄いことだ。
「わかりました父上」
「五郎!?」
なるほどな、楠木正成に倣ってそれをやるわけか。
大勢なら、寡勢などすぐにぶち破って当然。しかし苦戦なんてしたら、たとえ勝てたとしても士気は下がる。もちろん、俺たちとて敗北する気はない。
だが、リスクも高い。
そもそも、こんな大軍を寡兵で戦うこと自体、無謀極まりない。確かに、いくら兵士が多いからと言っても、前線に出てこられる人数は限られる。
だがこの状況、前線部隊を相手するだけで、兵士1人1人の労力が馬鹿にならない。
そして戦略。
城のような、ある程度の防御力があるところならともかく、砦ぐらいの機能しかない茂別館。戦略云々の前に、籠城なんてしていたら、館が落ちるほうが確実に先。
せめてここが、真田氏の上田城だったならなぁ……。
だが、もう俺たちの選択肢は、戦うか降伏するか。
だったら、最後まで戦い抜いて、降伏するならその後だ。俺たちの魂、見せつけてやる!
「大丈夫なのか? 五郎」
自分でも無茶していると思える俺の発言に、3番目の兄貴、不破光益も心配をかける。
「兄上、お任せください。手始めに、俺が敵の第一陣を崩してみせます」
ま、100%不可能って訳でもない。
俺は俺でちゃんと修行してるんだからな。
刮目せよ、俺のステータスを!
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名前 不破武親
HP 18420/18420
MP 3677/3677
攻撃 1529
防御 1557
魔攻 954
魔防 963
敏捷性 551
名声 3915
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さすがに、のんびりしてたら天下統一すらままならない。この前、一番悔しかったのは、他の誰でもないこの俺。
雪辱を果たすために、誰よりも鍛錬に励んでいた自信はある。
だから、絶対負けない。
いや、負けられないんだ。
でも今回は壊滅させるまでやれなくてもいい。一旦、敵の足を止めに行くだけさ。
皆の労力を少しでも減らし、戦意を向上させるためにもな。
俺が決意を固めた瞬間、王国軍は上陸。
まるで、蜂が一斉に針を刺しに来たかのように、一気に茂別館に進軍。
俺は東の土塁を越えて、敵の前線に突っ込んでいった。
土塁を超えて、敵の最前線に立ち向かう俺。
啖呵切ったのは良かったが、やっぱり心のどこかで怖じ気づいてしまう自分が……。
ダメだダメだ! そんなんじゃ前と同じ結果しか出ない! 慶広に「違う」と言ったばかりじゃねえか俺!
「不破五郎武親! 参る!」
俺は考えるのを止めて敵陣に突入した。
最初王国軍の最前線にいたのは、背が小さいながらも巨大なハンマーを振りかざす、筋骨隆々な一団。
「ぐわっ! 危ねえ……」
しかも攻撃速度は非常に速く、まるで空気を抉るかのようだった。
あんな一撃、いくら俺でも大ダメージは免れないぞ?
(まさかコイツら、ドワーフ……?)
ミュルクヴィズラント王国って、例の大佐のようなエルフの国じゃないのか……?
ここにいる王国軍は多くの種族で構成されているのか。
と言うことは、先に『ミズガルズ』と融合した異世界、『アールヴヘイム』の戦力に真っ先に目を付けて投入しているわけかよ。
「ちっ、数に物を言わせてやがる……」
しかし無駄口を叩いている暇もない。
今度はドワーフの後ろから、大量の矢が豪雨のように降り注ぐ。
「今だ。ありったけの矢を浴びせるのだ!」
「くっ……」
くっ、今度はエルフの弓矢か。けどアイヌとの戦いでそれは慣れた。
俺は槍をバトンのように回し、次々と矢を弾き飛ばす。
すると王国軍の波状攻撃は、そこで一応停止した。
「……だったら次は俺のターンだ!」
さすがに一方的に防戦していたら俺の名が廃る。攻撃が一旦止んだ今、反撃開始だ!
「覚悟ォォ!」
俺はドワーフの群れに突撃した。
ドワーフたちは再び、俺に向かってハンマーを浴びせるが、
「そんな物で、俺を仕留められるかアァ!」
俺は左右から挟み撃ちにしようとする、2つの巨大なハンマーをそれぞれ片手で強引に押し返した。
「なんだと!?」
「見たか!」
俺の闘志は満タンだ。ちょっとやそっとじゃ倒されないぞ。
俺はすかさず地面に落とした槍を拾い、ドワーフの前線に風穴を開けにいく。
「おおりやああ!」
「むおっ……!」
ところが俺の一撃は、物質的ではない何かによって遮られた。
「な!?」
いきなり光る幾何学模様が現れた?
もしかしてこれは、魔法陣? しかも防御用の……。
俺はすぐに周囲を見回した。ドワーフの部隊の後ろ、エルフで構成された2つ部隊の間に挟まれている場所。
俺から見て正面、その一直線上の箇所に、推定2000人以上の魔女ウィッチが3列で横に並んでいた。
「今です。あの殿方をやっつけちゃって下さーい」
「了解」
そして恐らく魔法陣を展開したと思しき部隊が、攻撃目標を俺に定め、整然と魔法用の杖を構える。
「……って、一斉に集中砲火かよ!?」
俺は持ち前の運動神経によって、スレスレで攻撃魔法を避け続ける。
が、全てを回避する事はできず30発被弾してしまった。
俺は一度退却し、土塁の後ろで呼吸を整える。と同時にステータスも確認する。
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名前 不破武親
HP 17007/18420
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「マジで一般兵には死路だ……。俺だって、このチート能力が無かったら、もう死んでるぞ……」
それに今回の戦、王国軍側もかなりやる気だな。
ここで何か手を打たないと、半日もかからずに決着がついてしまうぞ……。




