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第15話 ツークスワンク 白

準備は出来た。自分の駒は揃った。


後は、思ったように《《その駒》》が動くかどうかだ。




*****


7月中旬に、王都で子供祭りが開かれる。着飾った子供たちが国内から集まる、にぎやかなお祭りだ。


急に、、、、ヘンリー様の出席が求められた、、、、、、あまりいい予感はないな。


「そうね、、、、私はマーサと残るから、エールとこの方、最近修道院から逃げてきた方なんだけどもね、フーちゃん。二人で、ヘンリー様の護衛をして?」


フーちゃんと呼ばれた女性は、ぺこりと頭を下げる。淡い茶色の短い髪。前髪で表情は良く見えない。


マーサがドエル帝国の近衛騎士の制服を差し出す。段取り良すぎない?まあ、、、いいけど。


「あとは、、、フーちゃんのいう事を聞いてね?エールさん、頼んだわね?」

「・・・・・はい、、、、」


こういう場合、いや、って言う選択肢は俺にあるんだろうか?そう思いながら、フーちゃん、を見ると、、、、楽しそうに笑っていた。



馬車で王都に向かう。


ヘンリー様が乗った馬車だと解ると、農作業中の人たちが声を上げ、手を振ってくれる。王都に向かう間、それは続いた。いい光景だった。

どこまでも続く緑の平原、収穫期の金色の麦、、、、

「ヘンリー様、万歳!!」

上がる歓声、、、、



*****


「今年は集まった民衆が多いな?」


「・・・そうでございますね、、、みな、皇帝陛下の栄光を一目見ようと集まってきたのでしょう。」


金色の上着に、朱色のマント、、、皇帝陛下は、側近の言葉にうなずくと、民衆の集まった王城の広場のバルコニーに出た。一歩後ろに、ヘンリー様が控える。

この方は目立たないように、黒の上着だ。


「皇帝陛下、万歳!!」


埋め尽くされた広場中から声が上がる。

綺麗に着飾った金髪の子供が何人か、豪奢な花束を持って御前に進む。

にこやかに、それを受け取る陛下、、、、


その時、、一人の身なりの粗末な子供が、一本のマーガレットを掲げて、バルコニーに近づいた。髪色は栗毛色だった。


「・・・この花を、、ヘンリー様へ」


ヘンリー様は跪いて、その子のマーガレットを受け取った。


「私に?ありがとう。」


水を打ったように静まり返った民衆が、、、、、、どっと沸き立つ。


「ヘンリー様、万歳!!!」

「ヘンリー様、ありがとう!!!」



抱えていた花束を叩きつけて、皇帝陛下が剣を抜いたのは、あっという間だった。

剣先は、おびえる子供の目の前にある。

俺が飛び出すよりも早く、ヘンリー様が、その間に入って、子供を抱きしめていた。

背中が、切りつけられている。


「どきなさい。ヘンリー。」


子どもを諭すような、猫なで声だ、、、


「・・・・いえ、、、できません、、、兄上、、子供は、これからのドエル帝国の宝なんです。」

「はん?興ざめだなあ、、、おい、こいつを始末しろ。この目障りな子供ごとだ。」


皇帝はヘンリー様の側近に命じた。


側近は、、剣を抜いて、皇帝陛下とヘンリー様の間に立つ。


「くっ」


走り出した俺を、フーが止めた。


「なっ」



「私たちの主は、ヘンリー様です。」


そう言って、彼らは、ヘンリー様を背にした。剣先は、、、皇帝陛下に向いている、、、


「私たちは、あなたに命じられて、5年、この方といました。この方は、、、、ドエル帝国の、、この国の、希望なんです。なくすわけにはいかないんです。」



わあああ、と、民衆から歓声が上がる。


俺はヘンリー様を背負い、フーが子供を親に戻す。


「ははっ、馬鹿げたことを!こいつは農民の子供だぞ?今までお情けで生かしてやっていたんだ。何の価値もない!!おい、衛兵、こいつらみんな捕らえろ。さらし首にしろ!!」


皇帝の声で、空気が冷める。


槍を構えた衛兵がわらわらとバルコニーに出る。




・・・・正直、、、、俺は目を疑った、、、、今、目の前で起きたことを理解するのに、少し時間がかかった、、、、




衛兵は、持った槍を突き立てた。一人二人ではない、、、大勢の兵が、、、、



・・・皇帝陛下に、、、、





「ヘンリー様、万歳!!」


「新皇帝、万歳!!!!」




俺はヘンリー様を背負ったまま、倒れそう、、足を踏ん張った。












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