表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

第14話 終盤 

春の軍の遠征訓練は、今年は北東部地区になった。


ドエル帝国の皇弟殿下からの要請に伴い、昨年新しく整備した北部の街道の視察も兼ねている。そこから、東に広がる山脈での山岳訓練が組まれた。2か月。大遠征だ。もちろん、全て出かけてしまうと国防に係わるので、半分ずつ。


軍を率いるのは例年だとローラと俺だが、今はそうもいかないので、昨年から軍の副官が率いることになっている。今から兵士たちは縮み上がっている。そう、、、、半端なく厳しい方だから。


「これはこれは、、、宰相殿、何用で?差し入れか?」


「・・・・・姉上、、、、、」


副官の執務室を訪ねると、第一声が、、、それか?


俺の姉、フローレンスは、、、、名前だけは儚げでかわいいんだが、、、、この人に俺はありとあらゆることで、、、、剣術なんて論外、、、、勝てたことがない。


早くから騎士になり、軍に入り、、、、上り詰めた。

今の長官はもう60過ぎだから、この人が長官まで上がるのは時間の問題か、、、本人は自由にしたくて、副、が付くほうが良いらしいが、、、、、、


「なんだ?」


姉は、一本に無造作に縛った金髪を揺らし、足を組みなおすと、緑の瞳でじっと観察するように俺を見る。


「北東部での演習ですが、、、、、、」






*****


「この夏に、領主会議が開かれます。次期国王を決めるために。そこで、、、」


ロジー伯がにやにやと笑う。好きになれないな。こいつは。まあ、いいが。


「現国王の、自分の立場をわからせてやりますよ。根回しはばっちりしましたし、、、へへへ、、、、」


「そうか。頼もしいな。お前は国王の器だな。」


かけらも思っていないが、、、にっこり笑ってやる。


「そこで、皇帝陛下の書簡を頂きたいのですが、、、この私を、ヴォーレ国の王にすると。みんなひれ伏すでしょう。目に浮かぶようです。ぐふふっ」


「ああ、そんなことか。たやすいな。すぐに用意しよう。」


こいつの筋書き通りに行こうが行くまいが、どうでもいい。


王が、、、トップがぐらついている国を手に入れることなど容易い。いざとなれば、軍を動かして押さえてしまえばいい。


こいつが王になったとしても、、、やることはさほど変わらない。そうやってこの帝国を大きく、強くしてきた。別に、今すぐ、どう、ってことではないから、こいつの話に乗ったふりをしている。小物の考えは浅いなあ、、、それに踊らされるような国なら、逆に容易い。






*****


「なあ、マーサ、、、、」


今日はブルーベリーの苗木を、希望する村民の家に植え付けに回っている。

ここのところ、あちこち忙しく飛び回っているヘンリー様も、今日は珍しく作業を手伝っていた。

俺はリヤカーを引きながら、並んで歩くマーサに聞いてみた。


「・・・あの二人、どう思うよ?」

「は?二人って、、、ハナと?ヘンリー様?」

「ん。」

「ないないない、、、大体相手はこの国の皇帝の弟さんだよ?身近すぎてつい忘れそうになるけど、身分が違い過ぎるでしょ?それに、ハナの従兄弟、ジュリ、だっけ?あの子と恋仲なんじゃないの?」

「ハトコ、な。うちの国、いとこ同士では結婚できないから。でもさ、でもさ、、、どうなの?2年も一緒にいたら?なんか、話も合うし。」


マーサは呆れたように俺を見た。


「エール?いい?茶色の髪は、、、、この国の貴族は、人間扱いしないのよ?知ってた?茶髪の段階で、、、まあ、絶対に正妃はないし、表舞台には出れない。ハナの本来の髪色を知らないあの方が、ハナに惚れることはあり得ないわ。まあ、あの方は、、、いい人だし、農民にも親切だけどね。また、別の話よ。」



ハナとヨナスとヘンリー様、三人で楽しそうに話しながら前を歩いていく。


俺は、、、、ヨナスを呼んで同じことを聞いてみた。


「なあなあ、、、、どう思う?お前はいつも3人で一緒にいるだろ?」


「ああ、、、ハナさんは、あの黒髪の人、ジュリさん、一択だと思いますよ。僕は、、、ジュリ、って、ヴォーレ語の定冠詞かと思ってましたもん。」

「は?」

「ハナさんに何か話しかけるでしょ?そうすると、、、、、そうね、ジュリ、それはね、ジュリ、ああそうね、ジュリ、やっぱりね、ジュリ、、、、、、、、もう、、、、」

「・・・・・ああ、、、、、」

「僕だってハナさんが好きだったけど、ジュリって、人の名前だと解ったときに、諦めましたから。」

「え?ヨナス?ヨナスも?」

「も、、、、って、、、、ヘンリー様は、どうですかねえ、、、、」

「え?」

「え?」

マーサまで振り返る。


「あの方は、、、、どうですかね?以前は、、、色々と女性と遊んだみたいですよ、この国では有名でしたから。でも、ここ5年くらいは真面目に働いているみたいですし。そんな方が、、、見つめて、頬を染める???ありえない。初恋でもあるまいし。でも、、、そうですね、、、、いざとなったら、髪色なんてどうとでもなりますから。」

「・・・・・」




ヘンリー様に近所の子供が走ってきて、その辺で摘んだ花を差し出している。

しゃがんで子供と同じ目線でそれを貰う彼は、とてもうれしそうだ。


ああ、いいなあ、


一枚の絵の様だ、とエミルは心配事を忘れて微笑む。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ