8 紫音の両親
俺と紫音はしばらく抱き合っていたが、身体も冷えてきた。
「…………そろそろ帰るか。源二。」
「今日もお前の家に行っていいのか?」
「うん。帰ろうぜ。」
紫音の家に着く。
「…………大丈夫だったか?源二。」
「はい。紫音もついていてくれたんで。」
「そうか。メシも出来てる。二人とも来なさい。」
リビングには俺からしてみれば凄い御馳走が並んでいた。
「父さん、母さん、これは?」
「いや、しばらく紫音も家でメシ食わなかったろ?母さんが頑張ったんだ。」
「そうよ!私も寂しかったのよ?今日は源二君もいるしね!」
「ありがとうございます。」
「いいのよ!さ!座って座って!」
四人で食卓を囲む。
こんなの何時ぶりだろうか。
「で、源二のお父さんには了承を得たのか?」
「…………いえ、言うだけ言って出てきました。」
「…………そうか。ならここからは大人の出番だ。悪いようにはしないから俺に任せてくれ。」
「おじさん?」
「お父さんはね?以前から源二君の事を気にしてたのよ?言い方は悪いけど、源二君のお父さんはもっと”親”をやるべきだって。」
「親を?」
「そう、親っていうのは、子供の為なら何でも出来る存在だ。それが、源二のお父さんは出来ていなかった。」
「何かあったら、俺が話を付けるって言ってたの。」
「俺なんかの為に…。でも、俺のせいで紫音まで不良に…………。」
「ははっ!不良か!お前たちがやってることなんて可愛いモンだ。」
「そうね、私達なんて結構本格的に『ゾク』やってたしね!」
「えっ?嘘だろ?母さん。」
「本当よ?私は30人いたレディースの元総長。お父さんは100人位いた暴走族の元総長。」
「「えぇっ?!!」」
「ま、そういう事だ。お前らがやってることなんてママゴトみたいなもんだ。」
知らなかった。そんな過去があって、今では土木関係の会社を経営してるなんて。
「お前らがただ暴れまわって人に迷惑かけまくっていたらシメようと思ってたしな。」
「そうね。でも聞いたところ、ただ夜に集まって、ちょっとケンカして。それだけだったもの。」
ちょっと、か…………。
「まあ、何にしても独り立ちするってのは大変なことだ。源二、気合い入れろよ!」
「はい。ありがとうございます。」
「あ!あとさ…。あの…。アタシたち付き合う事になった…。」
「あら!よかったわね!紫音!」
「う、うん。そういうことだから。」
「わかってるとは思うが、節度は保てよ?別に何もするなっていうワケじゃないが、高校はちゃんと出ろよ?」
「はい、約束します。」
「ならいい。じゃあ今日はお祝いだな!ケーキも買ってきたからみんなで食おう。」
これが…家族って奴か…………。なんかくすぐったい感じもするけど、いいモンだな。