9 幼馴染だった三人
それからは紫音の親父さんが俺の親父と話をして、紫音の親父さんがやっているアパートで独り暮らしを始めた。
親父と桜は桜のおばさんに報告したらしいが、猛反対され、揉めたらしい。
俺と紫音は真面目に高校へ通い、無事卒業出来た。
桜は卒業とともに、親父と駆け落ちのように姿を消した。
俺と紫音は卒業後、紫音の親父さんの会社に入社。
現場仕事は楽しかった。やりがいもあり、充実していた。
紫音は頭は良かったので、経営の方を親父さんから学んでいた。
二十歳の時に俺と紫音は結婚した。
子供も息子と娘が一人ずつ。この頃に親父と桜が結婚したことを桜のおばさんから聞いた。
そして現在。
俺と紫音も55歳。色々あった。
今では、紫音の両親の会社を俺と紫音が受け継いでいる。
孫も三人いる。
紫音の両親にひ孫の顔を見せてやれた。
紫音の両親は、ひ孫を可愛がり過ぎて息子・娘夫婦に怒られたりしている。
俺達夫婦はと言えば、息子夫婦、娘夫婦も同じ会社にいる為、仕事は手を抜けない。
少しでも会社を大きくして、子供たちに残してやらねば。
そんな日々を過ごしていると、紫音の両親から連絡があった。
「桜ちゃんから手紙が来ているから取りに来なさい。」
桜が住所を知っているのは紫音の実家しかない。
仕事を終え、紫音と紫音の実家に向かう。
早速二人で手紙を開け読んでみる。
親父が亡くなったらしい。
葬式は終わっているから、墓参りだけでも来てほしいとの事だった。
「あなたはどうする?」
「………墓参りなら行こうと思う。」
「じゃあ、アタシも行くわね?」
「来てくれるか?」
「当たり前でしょ?」
日時を桜に手紙で伝えた。
墓参り当日。
手紙に書かれた県営墓地に向かう。
「お久しぶりです。源二君、紫音ちゃん。」
桜が待っていた。
「久し振りだな。」
「桜、久しぶり。」
「はい。あの人のお墓はこっちです。」
桜の案内に従い、墓地を歩く。
「お二人は幸せですか?」
「あぁ。」
「そうね。」
「良かったです。」
「桜は?おじさんと一緒になって幸せだった?」
「はい。幸せでした。後悔もしてません。」
あの時の桜の気持ちは本物だったのか…。
「そうか。家族は?」
「私が子供を産めない身体だったみたいで、あの人が亡くなってからは母と暮らしてます。」
「………そう。」
「源二君と紫音ちゃんは?結婚したんだよね?」
「あぁ、今じゃ孫も三人いる。」
「それは羨ましいな。幸せそうで良かった。」
「あぁ…………。」
「今日は来てくれてありがとう。………そして…源二君!あなたとお父さんの仲を壊したのは私です!本当にごめんなさい!」
「………別に桜だけのせいじゃない。俺と親父は元々ダメだった。」
「仲は良くはなかったかもしれないけど、完全に壊したのは私だから!」
「………もういいよ。俺は俺で幸せだから。」
「…あの人は確かにいい父親ではなかったけど、源二君の事は想ってた。ずっと後悔してた!」
「……………。」
「もう長くないってわかってから、私が源二君に連絡を取ろうとしたのを絶対許さなかった。自分は会う資格がないって。」
「…………。」
「でも、源二は元気かなって。源二は幸せになってるかなって。最期は源二君のことばっかり。」
「…………。」
「今迄みたいに私とは連絡なんか取らなくていいから、偶にはあの人のお墓参りには来てあげて欲しい。」
「…………。」
「源二君の姿を偶にでいいからあの人に見せてあげて。」
「…あぁ、わかったよ。」
「うん、本当に来てくれてありがとう。」
「桜!最後に話し合った時色々酷いこと言った!ごめんなさい!」
「いいよ、紫音ちゃん。私も紫音ちゃんに酷いこと言ったしね。紫音ちゃんも元気そうで、それに、幸せそうで良かった。」
「うん。」
「それじゃ、私行くね?さよなら、源二君、紫音ちゃん。」
「あぁ、さよなら。」
「さよなら、桜。」
そう言って俺たちは別れた。
「アタシたち間違ってたのかな?」
「わかんねぇよ。あれからの事に後悔はない。何が正しかったのかなんて誰にもわかんねぇだろ。」
「そっか…。そうだよね。」
墓地の駐車場まで歩いていると俺のスマホが鳴る。
「あ、親父か?今電話大丈夫か?」
息子からだ。
「あぁ、どうした?」
「いや、息子がどうしてもじぃじに電話かけるって言っててな。代わってもいいか?」
「ああ、大丈夫だ。」
スピーカーモードにしておく。
「…………じぃじ!こんどの日曜日来るよね?」
「ああ、誕生日だろ?ちゃんとプレゼント買って行くから。」
「ばぁばも行くから、いい子にしてるんだよ!」
「ばぁば!うん!いい子にしてるからぜったい来てね!」
「絶対に行くよ!」
「うん!待ってるからね!」
さぁ、孫の誕生日プレゼントでも買いに行くか。
最後までお読み頂きありがとうございました。




