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日本艦隊  作者: サイコパス
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観艦式

西暦2040年10月20日、東京湾


台風が過ぎ去り雲一つない秋空の元、海上自衛隊の観艦式予行が行われていた。

朝晩の冷え込みがウソのような日中の炎天下、ヘリ空母型護衛艦いずもの飛行甲板に、たっぷりと塩を含んだ向かい風が吹き抜ける。

抽選に当たった善良な市民が強い風に煽られながら飛行甲板に整列してオスプレイの体験飛行を楽しみに待っていた。

ブリッジでは気象情報と波の様子を艦長と副長が慎重に見極め体験飛行を許可する協議中だった。

「よし、乗せてやれ」


いずもの飛行甲板から2機のオスプレイが飛び立った。

そのうち1機は記者団の専用機で、乗機前から各社カメラでテレビ局に中継していた。

日本では観艦式の生中継はインターネットで25年前から行われていたが、この年は戦後初の民放が地上波で初の一斉放映となる予定であり、生中継の前日に行われた予行にも各社取材クルーが乗艦していた。


2機のオスプレイが単縦陣の護衛艦隊列を追い抜き、先頭付近の大型艦を目指していた。

この大型艦は4月1日に就役したばかりの自衛隊初の正規空母であった。

排水量は4万トン超と空母としては中型だが、戦後初の空母ということも有って日本内外の注目を集めていた。


F-35Cを搭載する事となった自衛隊空母ほうしょうは、旧海軍初の空母であった鳳翔の名を頂いた。

海上自衛隊が空母を保有することとなった原因は、2030年に起きた中華人民共和国による尖閣諸島への侵略事件である。

最初は中国の漁民が上陸し、保護名目で海警が上陸したが天候悪化につき漁船は沈没、海警の公船も尖閣諸島から離れた。


海保の巡視船も漁船と海警の公船を阻止しようとしたが、数隻の漁船が尖閣諸島の複数の島に乗り上げ、漁民とみられる集団が島へ上陸してしまったのだ。

波浪のため巡視船や搭載艇は安全に接近出来ず、海警は決死の上陸作戦を成功させた。


日本政府は中国政府に対して遺憾の意を表明、中国大使を官邸に呼んで厳重抗議したが、大使は自国の領土で救難作戦中と日本側の関与を逆に非難してきた。


悪天候の原因であった大型台風が沖縄本島を離れた頃、尖閣諸島には千人以上の上陸者が確認された。

大型台風に乗じて揚陸艦が揚陸させた兵士たちで、全ての島に中国の国旗が掲げられた。


日本政府は自衛隊と米軍で尖閣諸島奪還作戦を実施しようとしたが、米国議会が米軍の参戦を認めず、自衛隊だけでは作戦不可能と判断され、尖閣諸島は北方領土や竹島同様に実効支配されるに至った。


この事件後、日米の関係は悪化し在日米軍基地は2033年に完全撤退した。

日本政府は2031年より防衛予算を10倍に、2033年には20倍に引き上げ防衛力の増強に務めた。

その後、日本の防衛予算増加に目をつけた各国が兵器の売り込み合戦を開始し、米国もF-35AおよびF-35Cとオスプレイを日本に買わせることに成功していた。


日本国内でも三菱重工中心だった防衛産業が、防衛予算20倍ともなると積極的に参入する重工各社が増えた。

それでも輸出に支障が出るとしてトヨタとホンダは防衛産業には手を出さなかった。


陸自兵器だけでなく艦艇や軍用機の純国産化も開発予算が大幅に増えたため弾みがついた。

ただ、消費税25%への増税案も出ており、親米派議員や米国の工作も有って安保復活論が防衛予算削減セットで出始めたのが2040年であった。

また、左翼議員や親中派による中国との安保案も出ていたが、自民党政権は中国と米国を天秤にかける策に出た。


2037年、国民投票により憲法の改正が決まり、大日本帝国憲法を元にして時代に合ったものにする方針が固まり、草案がいくつか出された。

2038年、憲法の改正がなり、それに即して皇紀の復活と西暦の併用を法制化した。

ただし、国名の変更はしなかった。

2040年は皇紀2700年に当たる年であり、政府主催の記念行事が執り行われ、観艦式もその一つであった。

憲法の改正は僅差でなったが、徴兵制度は左翼団体や政党の反対が強く実現しなかったため、自衛隊は志願者募集の広報に務めた。

ヘリ空母いずもから、正規空母ほうしょうへのオスプレイによる体験飛行と移乗も広報の一環であり、未成年者と保護者が対象であった。


オスプレイのキャビンは長さが8メートル程度、幅は1.8メートルで座席は壁面を背にした対面式出会ったが、乗客は艦艇を見ようと身体をよじり窓から界面を覗きこむように観ていた。


空母型の艦艇は大型のためさほど波浪の影響を受けていないが、小型の艦艇は艦首付近に大きな水しぶきを立ててダイナミックに航行している様子が上空から観られた。


和やかだったオスプレイの様子が一変する

自衛隊員たちが慌ただしく動き始め、艦艇や基地との交信も格段に頻度が上がった。

隊員が双眼鏡で観ている方向を乗客たちも窓に張り付くように確認した。


横須賀沖に整然と整列した大艦隊が突如出現したのだ。


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