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38話 緊急事態で集められて

僕が学園に着いた時には既に学生服を着た先輩達が指揮を執っていた。僕も自分のクラスメートを見つけ駆け寄る。


「来たかリバル!一体どこにいたのだ!」

「ごめんエリク。ちょっと野暮用でね」

「まあいい。状況は把握しているか?」

「魔物が帝都に押し寄せてきてるって聞いたよ」

一級クラスを纏めているのは当然エリクだ。僕以外の面子はみんな揃っていて僕だけ私服なのはちょっと恥ずかしい。


「アンタ何よその格好。緊急事態の時は制服って学生手帳に記載があったでしょう」

「知ってるよ。ただちょっと街の方に出てたからさ」

「こんな夜中に?何やってるのよ……」

ミーシャからは冷たい視線を向けられる。決してやましい事をしていた訳では無いんだけど。ただ正直に言ってしまうと面倒だからここは濁しておく。



「全員注目!!」

学園の門前にはかなりの人数が集まっていた。サリアさんが門の上に立つと僕らを見下ろす形で声を張り上げる。


「現在帝都は未曾有の危機に陥っている。既に一部の隣村は魔物の手に落ちたと報告があった。本来であれば帝国騎士団が出張る所だが、今は人手が足りない。故に、我々スティーニア学園の生徒も駆り出される事となった!」

ざわめきが広がる。学園の生徒は来たるべきの時に備えて日頃から剣を振ってきた。その来たるべき時が突然やってこれば気持ちの余裕はないだろう。


「騎士団の代わりが務まるほどの力はなくとも今まで磨いてきた剣術を披露する時だ!五人一組で小隊を組み各々配置についてもらう」


五人組か。どうしよ、誰と組もうかな。と思っているといつの間にか僕の隣にはミーシャ、シンク、リナがいた。


「後一人どうしようかしら」

「少なくともリバル君に対して負の感情を持っていない方を探さねばなりませんね」

「誰がいいかなぁ」

あ、僕はもう確定なんだね。わざわざ組む人を探す手間が省けて助かる。


そんな時だ。人混みをかき分け、いや、彼の歩く道ができていくというのが正しいのか。こちらへと悠然と歩いてくる一人の男が目に入った。エリクである。


「リバル、班はもう組んだのか?」

「ああ、組んだよエリク」

「ふむ……そこの者達か?」

エリクはミーシャ達を一瞥すると何か考えるような素振りを見せた。


「どうした?」

「四人しかいないようだが?」

「そうなんだよ。ちょうど後一人探してる所」

「ふむ……なら俺が入っても構わないか?」

僕としては歓迎、だけどミーシャ達が何ていうかな。そう思って振り返るとミーシャは固まり、シンクはどこか空を見上げ、リナはニコニコしていた。


「だそうだけど、エリクを班に入れてもいい?」

「も、もちろんよ!断る理由なんてないじゃないの!」

ミーシャが大声を張り上げたせいで若干注目を浴びる。もっと周りを見てほしい。


「なら決まりだな。では会長に伝えてくる」

そう言うとエリクは門の前にいるサリアさんの下へと走って行った。


「殿下と一緒の班って緊張するなぁ」

「そう?エリクは割と喋りやすいけどな」

「それは多分リバル君だけだと思うよ?」

リナ曰く、貴族家に生まれた者ならば幼少期から皇族への忠誠心を植え付けられている事もあって、気軽に話しかける事などできないそうだ。



各々五人組ができたようで、門前には整列する生徒の姿があった。騎士団への入隊を目指す者ばかりだからか、規律正しい動きは染みついているらしい。



「全員組分けは終わったようだな。では我々の任務を伝える。帝都に入り込んだ魔物の殲滅及び非戦闘員の避難誘導だ。五人一組で一班、基本的に四班で一つの小隊として行動を共にしてもらう」

サリアさんから僕らに割り振られたのは遊撃、であった。


「遊撃、ですか。この班には殿下もおられるのに一番大変なとこを割り振られましたね」

シンクは嫌そうな顔を見せる。遊撃部隊というのは一箇所に留まる事なく押されているところに駆けつけて手助けする部隊だ。つまるところ、動き続ける必要がある。危険な場所へと自ら飛び込んでいくが故に精鋭が割り振られる事が多い。


「ワタシ体力には自信があるよ!」

リナは元気いっぱいに両手を上に掲げていた。


「リナさん、体力があっても戦闘能力が低いでしょう」

「うっ……で、でも!持久力なら誰にも負けないから!」

どうやらリナはあまり強くないらしい。まあ実技の授業をサボってる事が多いし当然といえば当然だ。それでも一級クラスに入れられているんだからそこそこ腕は立つんだと思うけど。



「ふむ、我々の班は遊撃か。なかなかに骨が折れるな」

「動き回らないといけないからね」

エリクも腕を組んで難しい表情だ。遊撃なんてかっこいい言い方しているけど、要は使いっ走りみたいなもんだからね。


「これが最後だ!聞け!」

自分達に与えられた配置でざわついていたのをサリアさんが一喝する。途端に静まり返った。サリアさんのカリスマ性は凄いな。



「私から言えるのはただ一つ。全員生きて戻れ、以上だ。行動開始!」

「「「了解!!」」」


全員門前に集まって行動開始までおよそ十分。みんな凄いな。夜中だというのに眠そうにしている人もいないし。帝都に危機が迫っていると分かっていても本能には抗えないのが人間だ。

なのに誰もが機敏な動きで指示に従っている。これが騎士を目指す人達か。流石だよ。



「よし、行くぞ。この小隊のリーダーは……そうだな、リバル、指揮を頼む」

「え?待った待った。なんで僕なんだよ」

「この中で一番腕の立つ剣士はお前だろう?リーダーというのは実力者でなければならないのだからな。そうでなければ民はついてこんぞ」

いやいや、それは君だけだろエリク。僕はただの平民なんだけど。民とか言われても……。


「まあそうね。リバルがリーダーで異論ないわよ」

「ミーシャまで……。僕がみんなを率いるってこと?」

「私も異論ありませんよ。既に貴方の実力は同学年では飛び抜けていますから」

シンクとリナも同意、ときたか。いやでも他の班の人が良いとは言わないんじゃないか。そう思って周りを見ると全員頷いていた。


「ほら、全員お前がリーダーで良いと言っている」

それってエリクが言ったからじゃないかな……?皇子の言葉に異論を唱えるやつなんて普通いないよ。


とはいえここで長々と言い合っていてもキリがないか。仕方ない、僕もできる限りの事はしよう。


「分かった。でもリーダーってそもそも何をすればいいかわからないよ」

「我々は遊撃隊だ。今助けを必要としている場所に向かう必要がある。リバルはその場所へ誘導してくれればいい」

「じゃああそこしかないね。全員着いてきてくれ。目標、帝都の入口、帝都大門!」


名前は適当だ。というか名前があるか知らないし。ただ帝都で一番印象に残っているのは巨大な門だ。あそこ以外はそれほど大きな入口はないし、防壁に囲まれた帝都で一番攻め込まれる可能性があるのは巨大な門だけ。あそこを抑えられれば魔物が帝都を蹂躙することはないだろう。


「よく知っていたわね。あの門の名前」

「まあ一番大きな門だしそういう名前なのかなと思って。まさか合ってた?」

「ええ。帝都大門は帝国の玄関口とも言われている場所よ。そこを抜けられれば帝都は滅茶苦茶になるわ」

僕が帝都大門の名を知っていた事にミーシャに少し驚かれた。いや、当てずっぽうだったんだけどね。


「今頃門を抜けられていなければいいけど。恐らく他の騎士達も帝都大門に集結しているはずよ」


魔物の群れがどれほどいるか分からないけど急いだほうが良さそうだ。一箇所に魔物が集中するなら恐らく駐在している兵士達では抑えきれない。


僕らは学園の敷地を出ると全速力で帝都大門へと駆け出した。

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