↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/92

第91 話 落雪

寒舟は、山道を歩いていた。


その後ろには、玄夜が数歩遅れてついていく。


冬の森には、昨夜の雪が積もり、木々の枝は、寒そうに揺れている。


厚手の外套を纏った、寒舟はついに玄夜に聞いた。


「玄夜、なぜついてくる……」


「監視だ……」


寒舟は、白い息を吐き出した。


「まだ、そんな事を言っているのか。」


いつの間にか、玄夜は寒舟の隣にいた。

二人で肩を並べて森の中を歩く。


ザクザクと雪を踏む音が響く。


「沈七、お前は怪しい。ちゃんと見ておかないと何をするか、分からない。」


「私は、何もしない。」


寒舟は、少し鼻を啜ると、赤くなった鼻をなでた。


寒い。


「大丈夫か?」


「少し、寒いだけだ。」


ザザザッ


ボスンッ


針葉樹に積もっていた雪が落ちた。


玄夜は、反射的にそちらを見る。


何だ…雪が落ちたのか……


「下にいたら、危なかった。」


…………。


返事が無い。


隣を見ると、先ほどまで話をしていた沈七がいない。


玄夜は、辺りを見回した。


何処にもいない。


静かな、冬の森だけがそこにあった。








………寒舟は、走っていた。


あっという間に木々が過ぎ去っていく。


軽功は、昔から得意だ。


やっと、玄夜を撒いた。


ここ最近は、ずっと側にいて隙がなかった。


こんな所にまで、付いてくるとは思わなかった。


あの弟子は、いつから寒舟……いや、沈七に対して、あのようになったのか。


少し前まで、間者として魔教に潜入していた沈七を本気で殺そうとしていた。


当たり前だ。


玄夜の師尊、沈清月を名乗ったのだから。


しかし、それは嘘ではなかった。


その事を玄夜は、知る由もないけれど。


だから、師の敵である寒舟の身体を使っている清月が、玄夜に付きまとわれるとは思ってもみなかった。


玄夜が、現れた時には殺される、そう思ったのに……


なぜか、関係は改善しているように思う。


監視とは言っているが、不思議な事に殺気はすっかり薄れている。


……天望書院に向かって、道を急ぐ。


命じられた、『祁門陣典』を探さねばならない。


逆らう事は、できない。


腹の中の金蠱が、ズリッと動いた。


寒舟は、思わず腹を手で押さえた。


このまま、玄夜と……弟子と過ごせたら、

平穏な毎日を送れたら、どれほど良かっただろう。


殺し合いなど、したくはない。


もう間もなく……玄夜とは、再びの別れが訪れる。





雪の森を走り続け、


やがて、そびえ立つ崖についた。


そこからは、天望書院の陣法が仕掛けられている。


右に3歩目

後ろに2歩

左に5歩


そこから、目をつぶり3歩で崖から飛び降りる。



そっと目をあけると、広大な天望書院の

門前に立っていた。


「どなた、でしょうか?」


「約束していた、柳寒舟だ。」


門番は、寒舟の名を聞くと、門を開けて中に通した。


以前来たときと同じ、静謐な空気。


あの時は、長老が病ということもあり、慌ただしさがあった。


でも今は、静かだ。


行き交う人々は、穏やかで優雅な雰囲気が漂う。


何処からか、書を読む声や、琴の音色も聞こえている。


寒舟は、案内の者と共に、奥の間に向かって歩く。


香の香りが漂い、格式高い書院は厳かで、

緊張する。


自然と、足音が響かないように静かに歩いた。


長老、楚安慈(そ・あんじ)は、元気そうだった。


楚安慈の自室に通された寒舟は、彼女に勧められるまま、席に座った。


出された茶をすする。


豊かな香りのする茶を飲むとほっとした心地になった。


「寒舟殿、頼みがあると伺いました。どのような事でしょうか?」


「安慈様。実は書物を見せて頂きたいのです。『祁門陣典』という本なのですが……」


寒舟は、さっそく本題に入った。


『祁門陣典』。


寒舟には、馴染みのない名前だ。


「その本は、50年程前に滅びた、ある家門の秘伝書ですね。……確かに、書院にて所蔵しております。」


「では…見せて頂けるのですか?」


「……危険な陣法も多く、禁書扱いになっています。しかし、元々が一子相伝の家門。伝えられた、口伝と合わせて解読する必要がある記述がほとんどです。今では、血筋も途絶え、見た所で解読は難しいかもしれません。」


「かまいません。それでも、見たいのです。」


楚安慈は、息を長く吐いた。


「わかりました。しかし、禁書は禁書です。

30分だけ閲覧を許可しましょう。」


































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。