第66話 沈七を探せ
玄夜と高要は、正派の町にいた。
お昼時、町一番の人気店。
賑わう店内で高要は聞いた。
「君上…」
「おい。」
「あ、失礼しました。玄夜様。本当に、こんな所に現れるのですか?」
「奴は、絶対に現れる。」
「既に、潜入していた教の者にも、探させています。……でも、見つかりません。下汚門にも、依頼しましたが、見つかりませんでした。」
「ああ。」
玄夜は、忙しなく働く給仕の男を眺める。
「慎重な奴です。このような所には、現れないのでは?それに、今どんな姿をしているのか分かりません。」
玄夜は、長い指で湯飲みの縁をなぞりながら、答えた。
「でも、来る」
高要は、はぁとため息。
その日も、沈七は現れなかった。
玄夜は、店を出ると、今度は町中をうろつき始めた。
「玄夜様、もう何日もこうしています。一度帰って、報告を待った方がいいのでは?」
「………」
その時、人混みの中。
道の向こう側から、一人の男が歩いてきた。
癖のある長い黒髪を、無造作に一つに結び、
浅葱色の外套を着ている。
柳寒舟。
玄夜は、高要を急いで引っ張り、店の影に身を隠す。
寒舟は、考え事でもしているのか、周囲を見る事もなく、通りすぎていく。
玄夜は、拳を強く握った。
あいつは、師尊を殺した男。
必ず報いを受けさせる。
「玄夜様、彼は………」
「ああ、柳寒舟。俺の兄弟子だ。奴の側に沈七がいるはずだ。」
「彼の側にですか?」
「ああ、俺と寒舟、師尊しか知らない、琴の曲を沈七は知っていた。奴が、教えたに違いない。」
高要は、ようやく納得がいった。
なるほど、だから寒舟の周りを調べさせているのか。
「今の所は、怪しい人物は見つかっていないようですが…」
「そのうち、必ず接触する。」
「………わかりました。」
高要と玄夜は、寒舟が立ち去ったのを見計らって、店の隙間から抜け出した。
「玄夜様。次はどうしますか?」
「薬店を当たってみよう。沈七は薬師だからな。」
「………承知しました。」




