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第46話 武林盟



ゴーン


ゴーン


鐘が、賑やかな町に響く。


少しずつ、日が陰り、茜色に染まる夕暮れ時。


賑やかな屋台が連なり、

まだまだ、元気な子供達が遊ぶ声がする。


私は、一人喧騒の中を歩いていた。


武林盟主のいる盟館に続く道。


重い身体を引きずって、1歩、また一歩。


やがて、喧騒は薄れ、寒舟の長い影だけが

残された。




質素ではあるが、重厚な欅の大門。


懐かしい盟の旗が、夕暮れにはためいている。


弟子達も、修練の終わる時間なのか、

賑やかな声が聞こえる。


何一つ、変わっていない。




門の前に立っている、二人の門番。


二人は、すっかり気が抜けた様子で、話をしていた。


「ふぁ、今日も疲れたな」


「もうすぐ、交代かぁ……あれ?」


ボロボロの服を纏った、五十過ぎの男が、門の前に立っている。


「ここは、武林盟館。何か、ご用か?」


門番の一人が問いかけた。


「私は、柳寒舟。盟主の命を受け帰還した。」


柳寒舟。


このしょぼくれた男とは、似てもにつかない。



「嘘を申すな。柳長老は、私達もお会いした事がある。貴方とは、別人だ。」


男は、腰の玉牌をとりだした。


翡翠で出来た、見事な玉牌だ。


それをみた門番は、血相を変えた。


間違いない。


これは、青蘭谷せいらんこく門主の証。


「し、失礼しました。」


「いい。通してくれ。」


門番は、男を恭しく通す。


「………」


2人は、通り過ぎる男の背を見送った。





私は、客間に通された。


趣味の良さを伺わせる、丸机。


品よく、香る白檀の香り。


白磁の茶器が揃えられた、


盟主の人柄を写したような部屋だ。


私は鏡の前へ立つ。


映っているのは、五十を過ぎた穏やかな男。


深く息を吐き、広袖を静かに払う。


揺らめく霊力。


易容が解ける。


鏡の中には、柳寒舟が立っていた。


長い黒髪。


黒に翠を溶かした瞳。


「……これから私は、柳寒舟として生きていく。」


小さく呟く。


柳寒舟。


私は、彼になりきらなくては、ならない。


『寒舟様。盟主様には、気を付けて下さい。』


夕陽の声が頭を過る。


(盟主は、私の…戦友だ。そして、彼は恩人でもある。だが、夕陽は、嘘をついていない。)


(私の正体を知られてはいけない。)


信じるべきは、誰なのだろう。


私には、分からなくなった。


鏡に写る寒舟の頬を鏡越しに、そっとなぞる。


弟子ではない、

今の柳寒舟が、どんな人物なのか、

私はほとんと知らない。


演じきれるだろうか?


扉が勢いよく開く。


「柳長老」


若い弟子が、慌ててた様子で駆け込んでくる。


「盟主様が、お呼びです。」










今は、章分けはしてませんが、新章になります。

よろしくお願いします。


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