図鑑 No.17:小谷山(コタニヤマ)
「水の谷は深く、巨山のように迫る。旦那、目を逸らすのはもう遅ぇですよ」
ページをめくった瞬間、俺の脳裏にあふれる水音と低い笑い声。
青き巨躯は滴をまとい、まるで水そのものが怪物へと変じたかのように迫ってきた。
(*ジュリのヌーブランが妄想の源となった魔獣)
■ 種族分類
水妖幻獣(妄想由来)
• 出現地:泉や小谷間の水源地
• ランク:B〜A級妄想魔獣
• 発動契機:視線が“谷”に引き寄せられた瞬間、心拍数が限界を超えた場合に顕現。
■ 外見特徴
• 巨大な水風船のように膨れあがった青き魔獣。
• 滴り落ちる水は尽きることなく、足元に常に小さな泉を生む。
• 背筋を丸めてかがみ込み、両腕で水をすくう仕草が印象的。
• 表情は笑みに近いが、牙の鋭さと黄金の爪が威圧感を与える。
• 全体像が「谷」のイメージを極端に拡大化したデザインとなっている。
■ 内面/キャラ性
• 陽気で豪快、しかし「見せすぎ」に対しては妙に恥じらいを見せる。
• 一声発すれば水流が奔り、聞く者の視線を強制的に引き込む。
• ジュリの“無意識の自己防衛”が形になった存在とも考えられる。
• 戦うというより「惹き込む」ことが本能であり、抗うことはほぼ不可能。
■ スキル一覧
• 【水脈吸引】:流れを操り、対象の視線と意識を強制的に“谷”へ吸い込む。
• 【豊潤の滴】:雫が触れた対象を一時的に痺れさせ、行動不能にする。
• 【揺動の波紋】:全身を震わせることで、周囲の精神に動揺を走らせる。
• 【 青谷の抱擁】:全身で包み込み、対象を水圧で拘束。精神と肉体を同時に圧迫する必殺技。
■ 神代魔法との関連性
• 術式断片:【水衣】:衣のごとく流れを纏い、現実と妄想の境を溶かしていく古代水術。
• 江戸っ子鼓動による記録では「初伝・包容」に関連する鍵を握るとされる。
■ 備考
• 妄想の元はジュリの「ヌーブラン」。
• その形状と印象が、妄想世界で水妖幻獣へと極端に誇張変換されたと考えられる。
• ゴクトー自身も「まさか“最新魔導具”が怪物になるとは……」と絶句した記録が残る。
■ 図鑑メモ
「青谷のうねりに飲まれた瞬間、俺は悟った……。
これは魔獣じゃねぇ、“禁断の水源”だ」
⸻ ゴクトー(妄想被害・重度羞恥レベル)
このグリモアはただの図鑑ではなく、妄想と魔力の結晶だ。
ページを閉じても、滴る水音は脳裏に響き続け、俺の意識を谷底へと誘っていた──。




