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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
6月
63/308

ヒトリカクレンボ 中編

 


  「造神先輩が拉致られたわ!」

  「はあ?」


  拉致られた?ぬいぐるみに?


  「いや〜、ぬいぐるみがわっせいわっせいって…ぷくく…」


  夜神、震えているかと思ったら笑ってんのかよ。

  笑いのツボがおかしい。


  「あたし達の目の前で簀巻きにされて…学校の方に連れさらわれたのよ」

  「簀巻き…」


  まあ確かにシュールな図だな。


  「助けに行くわよ!」

  「あ痛!?」


  俺は真照に腕をむんずと捕まれ、引っ張られた。

  後で確認したら、捕まれた所が赤くなっていた。

  つおい。


  ☆☆☆


  学校へ着くと、そこには目を疑いたくなる様な光景が広がっていた。


  ぬいぐるみというぬいぐるみが束になって、大きなぬいぐるみを形作っていた。

  なにかしらのアート作品と言えば納得出来てしまいそうなサイズだ。

  …動いているがな。


  校庭の中をズシンズシンと歩き回っている。

  まるで怪獣映画だな。


  …何だ?

  その横にあるよく分からないオブジェに茶色い光が射し込んでいる。


  まあ、それは良い。

  今は造神先輩だ。


  その造神先輩が何処に居るのかというと、その巨大ぬいぐるみの頭の上にいる。

  布団に包まれていてそのまま縛られている。

  確かに簀巻きだな。


  気絶しているのかぐったりしていて反応が無い。

  あれでよく落ちないなと思ったら、巨大ぬいぐるみを構成している普通サイズのぬいぐるみが必死になって掴んでいた。


  「…あれ、神器の攻撃効くのかしら?」

  「…どうなんだろうな?」


  ぬいぐるみが動いている時点でお化けと言えばお化けなのかもしれないが、見た目はただのぬいぐるみだ。

  切っても綿しか出てこなさそうではある。


  「試してみようか」


  夜神がそう言って短剣を振り抜く。

  切られたぬいぐるみは奇声をあげてまるで初めから存在していなかったかの様にすっと消えてしまった。

  辺りには、何故か米が散らばっている。


  「はあ…米?」


  ぬいぐるみから米…。予想外だ。


  「ん…?ヒトリカクレンボ?」


  真照が何かを鑑定したらしい。


  「どうしたんだ?」

  「米を鑑定したら『ヒトリカクレンボに使われた米』って出たのよ。ヒトリカクレンボは、態々自分からお化けを呼び出す儀式みたいね」

  「…それに何の意味が有るんだ?」

  「さあ?」


  態々自分から危険を冒しに行くのか?

  馬鹿なのか?


  「こころは何か知らないか?」


  困った時のこころ先生だ。

  だが、そのこころ先生も困り顔である。

  知らないみたいだ。


  「…で、そこら辺にあるぬいぐるみ全部に『ヒトリカクレンボ』って言葉がみえるわね」

  「それが原因って事か」


  ヒトリカクレンボって一人で隠れんぼをするって事だよな。

  この儀式をした人はぬいぐるみにお化けを呼び出さないと隠れんぼが出来ない程の寂しんぼっちだったのか?


  「まさか全部一人でこれだけの数儀式した訳じゃ無いでしょうし…何かしら核となるぬいぐるみがいるんじゃ無いかしら?それを倒せば終わるかしらね」

  「そうだろうな。全く…大迷惑だな」

  「……。」


  こころが なにかいいたそうに こちらをみている!


  「でもこれだけいると核すら分からないわね…。ある程度減らせないかしら?」

  「方法が無い訳じゃ無いが…。造神先輩を巻き込みかねんぞ」


  こないだの火を起こす奴とかな。

  どちらにせよ造神先輩救出が最優先だ。


  どうしようかと思っていたら、ピカリ、と何かが光った。

  よく見てみると、造神先輩の腕の辺りが光っている様だ。

  布団越しでも分かる位強い光だ。


  眩しくて目を腕で覆った、その瞬間ーー。


  『ケーン!』


  紫色のオーラで作られた鳥が現れた。

  鳥は造神先輩を乗せて俺達の方向へ飛んで来た。

  そして、地面に造神先輩を下ろした後、腕に戻る様にして消えてしまった。


  「万、今の内!造神先輩はあたしが見ておくから!」

  「おう!」


  俺は生太刀を取り出してあの時のメモを思い出す。

  幸か不幸か夜神が切ったせいでこちらに敵意が向いている。

  生太刀の刃が生成されていた。

  これ読むの結構恥ずかしいな。


  「力強き其の者は 実の母をも死へ誘う

  怒れる父に殺された 哀れな赤子を何という

  火を司る 彼の名はーー忌子 ヒノカグツチ」

  「えっ!?」


  こころが珍しく驚いた顔をした。


  そんなこころに関係無く、燃える刀身を巨大ぬいぐるみに振り下ろす。

  「うらあっ!!」


  ゴォオオオオッ


  巨大ぬいぐるみは青い炎の山と化した。

  上がる奇声、お米の焦げる良い香り。


  「お兄ちゃんっ!その天祝詞(あまつのりと)、何処でっ…!?」


  こころが血相を変えて俺に詰め寄る。

  一体どうしたって言うんだ。

  天祝詞はメモの呪文の事か?


  「学校の七不思議巡りをした時にな、いつの間にか俺のポケットにメモが入ってたんだよ。そこに書いてあったんだ」

  「そう…。そのメモは今持ってる?」

  「今は無いな」


  あの後いつの間にか消えていたんだよな。

  大事にとっておくつもりだったのに。


  こころが複雑そうな顔をしている。

  しかし、次の瞬間恐怖に彩られた。


  その視線の先にはーー


   み         け

「       つ     」

     い       た


  ボロボロになった、兎のぬいぐるみがいた。

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