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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
5月
41/308

トイレの花子さん



ケサランパサランはふよふよと図書室の看板の辺りを飛ぶ。ここか。


ドアを開く。そこには沢山の本があった。


「真照ちゃん?どこ?」


見渡してもあるのは本棚とテーブル、それからカウンターだけだ。本当に真照がいるのか?


「ねえ、君…間違ってたりしたら怒るよ?」


ケサランパサランは間違って無いとばかりに壁際の一つの本棚に近づいた。


「ここ?」


調べてみると、かなり小さいスイッチがあった。普通だったら気づかないだろう。


スイッチを押す。すると本棚はゴゴゴと言う音を出して動いた。そして…隠し扉が現れた。


「ホラゲーかよ」


本棚を調べると扉が出て来る…。どこのゲームだったか。


ドアノブを回して扉を開ける。その途端。


「万、月宵!見ちゃダメよ!バルス!」


真照が飛び出して来て、その拍子に目潰しされた。


「「目が、目ガァああああ!」」


り、理不尽!目が痛い!前が見えない!あまりの痛さに床を転げ回る。


「おやおや、友達想いなのでしゅね、真照」

「アンタの部屋がこんなのじゃなかったら目潰しなんてしないわよ!男同士とはいえ、ら、裸体を見るなんて…」

「こんなのとは酷いでしゅ〜。人の趣味を貶すのは良くないでしゅよ〜」


その声は…花子さんか?ここは花子さんの部屋なのか?


うう…。次第に目が見えて来る。花子さんの部屋の中に広がっていたものは。


「腐へへでしゅ…この趣味を理解出来ないとは…やれやれなのでしゅ〜」


そこには。沢山のBL本が広がっていた。最早本棚に収まりきらない量だ。


「腐へへ…萌えの文化は最高なのでしゅよ」


お前…腐女子だったのか…。


「この文化を広めて早幾年。今では沢山の腐女子がいるのでしゅよ!」


『花子さんに遊びに誘われて帰って来ると腐ってる』って肉体が腐って帰って来るんじゃなくて、趣味、思考が腐って帰って来るのかよ!!腐教じゃねーか!


はっ、まさか真照を拉致したのもこの為…!?


「真照!花子さんに何かされたか!?」

「縄で縛られて椅子に座らされて薄い本を見せられたわね」


ああああ!手遅れか!?


「大丈夫よ。寝てたから」

「そうなのでしゅ。真照は全く興味を示さなかったのでしゅ。…教え甲斐があるのでしゅ」


やめろやめろ。目を光らすな。


「真照を拉致したのには他にも目的があるのでしゅ」

「目的?」

「真照を拉致すれば自動的に万と月宵が探しに来るでしゅ!」


まぁ、心配だからな。…って思い出した。あの携帯で俺をバカにして来た声って花子さんの声じゃないか。


「そこには七不思議という苦難が待ち受けているでしゅ。共に助け合い、苦難を攻略して行く…その内2人には愛が芽生え、○○(ピー)(ry」


芽生えません。恍惚とした顔で言うな!しかも鼻血まで出してやがる。


俺は夜神から離れる。俺にそんな趣味は無い。夜神も同じ様で、真照に抱きついた。


「僕は真照ちゃん一筋だから。安心して、真照ちゃん?」

「別の意味で安心出来ないわ」


真照は困った様な顔をする。…あれ?真照と夜神の顔、なんか似ている様な気が…気のせいか。


「ぬぅううっ!真照とじゃなくて万とくっつくのでしゅ!」

「「だが断る!」」

「2人揃ってセリフが被るとか、最高でしゅっ!」


もうダメだこいつ。早くなんとかしないと…。


「ええい!こうなったら無理やりにでもくっつけるのでしゅーっ!」


そう言って花子さんは手をかざす。すると、そこから朝顔が生えて来た。


水や肥料がある訳でもないのに異常な程すくすくと育つ朝顔。それは、次第に普通の大きさよりもかなり大きい朝顔へと成長した。つるが木の幹程もある。


「いくのでしゅ!」


そう花子さんが言った途端、朝顔は俺に向かって伸びて来る。くらってしまったらひとたまりもないだろう。


だがしかし!俺には対抗出来る武器がある!


「てりゃあっ!」


生太刀を取り出して振り回す。気持ち良い程にスパっと朝顔は切れた。


…だが、切る事は出来ても朝顔本体が無くなる訳ではない。次の瞬間にはまた朝顔が襲って来る。異常な再生スピードで回復しているのだ。


「くっ…」


切っても切ってもキリがない!その内小さなかすり傷が出来て来た。


真照や夜神も対抗しているが、俺と同じ様に決定打は無い様だった。


「ぬう、しぶといでしゅ…」


そうだ!花子さんを攻撃すれば治るか!?


そう思い、等価交換で足の筋力を上げ、宙に浮いている花子さんに切りかかる。


「おっと。危ないのでしゅ」


しかし、避けられてしまった。だが、その拍子にお面が外れる。短い前髪がふわりと揺れる。丸い目は金色で、中心は白いダイヤ型。こいつの特徴、どこかで聞いた事がある様な…。そこに慌てた様に真照の声が入る。


「万!その子は切らないで!」

「花子さんを切るなって事か!?」


それだとどうしようもないんだが…。


「違うわ!花子さんは切っても構わないわよ!でも、花子さんが取り憑いている肉体…穂能(ほの)はあたしの妹なのよ!」

「なっ!?」


花子さんは取り憑いているのか!?話と見た目が違うとは思っていたが、取り憑いて別の人の肉体を奪っていたからか!


「あたしだけならさっさと脱出出来たわよ!けれど穂能が取り憑かれているから、逃げようにも逃げられないのよ…!」

「鏡じゃ花子さんを撃退出来ないのか?」

「無理だったわ。花子さんだけを撃退するには花子さんに対して精神的な攻撃をすれば良いみたいなのは鑑定が教えてくれたのだけれど…」

「精神的な攻撃、ねえ…?」


嫌がる事とかか?


「お前の親、田舎で泣いているぞ…」

「お化けに親も何もないのでしゅ」


ちっ、ダメか。


「もう無いな」

「万の精神的に来る言葉のレパートリー少なすぎね」


そうは言ってもな。無いものは無い。


そう話している間にも朝顔はどんどん大きくなっている。この部屋からはみ出そうだ。


そんな巨木程もあるつるがマシンガンの様に打ち込んで来る。防戦一方だ。


「がっ!?」


鮮血が迸る。まずい!横っ腹が切り裂かれた!服に赤いシミが広がる。その拍子に胸ポケットから何かこぼれ落ちる。等価交換で傷を癒しつつこぼれ落ちたものーーメモを読む。


「力強き其の者は 実の母をも死へ誘う

 怒れる父に殺された 哀れな赤子を何という

 火を司る 彼の名はーー忌子 ヒノカグツチ」


読み終えたその瞬間。生太刀から青い火が上がった。


「「「「えっ!?」」」」


ここにいる全員が驚いた。そりゃそうだ。誰がここで火が出て来ると思うのか。


その姿は、ドッペルゲンガーが使っていた青く燃える生太刀とそっくりだった。


なんか精神的に疲れたが、問題無い。これで反撃が出来る!


炎を纏った生太刀で朝顔を切る。すると、キャンプファイヤーの様に勢い良く燃え出した。ファアアアイヤァアアアアアッ!


そのまま朝顔本体に引火して辺りは青い炎で埋め尽くされていく。普通は火事になったら息苦しいものだが、そんな息苦しさは感じられない。唯一苦しんでいるのは花子さん位だ。


「ぐぅううっなのでしゅ…っ」


燃えた朝顔はついにその重さに負けて倒れる。その倒れた先にあったのはーー


「「「「あ」」」」


…薄い本の山だった。一瞬にして燃え上がる。そしてそこから床にも、他の薄い本にも引火した。何このピタゴラスイッチ。


「ああ…ああ」


本は次々と灰になっていく。それを絶望した様な顔で呆然としてみている花子さん。


「げ、限定版もあったのに…。も…もう良いでしゅ。お前ら全員帰るのでしゅーーっ!!!」


涙声になった花子さんの声が響いた。


☆☆☆


「お…戻って来たみたいだな」


辺りを見渡すと、そこは暗い事を除けばいつもの1ーBの教室だった。


「うーん…なのです…」


こいつが穂能か。目を回している。そして何故俺に張り付いている?


「はっ!…あれ?おにいちゃんだれなのです?」

「俺は万だ」

「わかったのです!よろずおにいちゃんなのです!ほのはほのっていうのです!よろしくなのです!」


やや舌ったらずな口調の穂能。


「むぅ…」


それを見ていた真照が少し悔しそうにこちらを見ていた。

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