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「うーみーは広いーなー大きーいなーっと」
俺達以外誰もいない砂浜に真照の歌声が響く。結構上手いな。
今俺達は海に来ている。海水浴をするには早すぎるこの季節に一体何をしに?と聞きたい所だろうが、ただのゴミ拾いだ。ボランティアとかいうやつだな。
周りを見れば、沢山ゴミが落ちている。ゴミ、ゴミ、ゴミだらけ。ペットボトルとか、空きカンとか、雑誌とか。
ザザーン ザザーン
波は絶え間無く寄せては返して行く。 お?何か流れて来たな。これはーー
ピチピチピチピチ ぜいぜいはあはあ
魚?いいえ。何これ?
下半身は魚…なんだが上半身は人だ。美しい女性に見えるが息も絶え絶えで今にも死にそうである。
「た…食べないでくださ〜い…」
「食わねえよ」
どこかで聞いたことのあるセリフだな。
「あら、人魚?珍しいわね」
「知ってるのか?」
「ええ。おとぎ話に出て来るお化けよ。一説には、食べると不老不死になれるとか…」
「そりゃあ…凄いな」
というかお化けって食えるのか。
「ふぇえええええ…私を食べても美味しくないですよう」
泣きそうになっている人魚。
「別に食べたりしないから帰れ」
お化けとはいえ人間にそっくりなのは食べたくない。不味そうだし。
「あ、ありがとうございますう…。このご恩は必ず返します」
ぱぁああっと顔を輝かせて海へ帰ろうとする人魚。だが。
「ふぇえええええ…!?か、帰れませんんんん!?」
陸の上でジタバタともがく人魚。哀れ。
そこでじっと人魚を眺めていた夜神が急に
「幸神くん、君の太刀貸して」
と言って来た。
「あ、ああ、良いが…。何に使うんだ?」
「こうするのさっ!」
そう言いつつ夜神は太刀を振り上げる。生太刀に太陽の光が反射する。涙目になる人魚。お、おい、まさか切ーー
ドカッ!!!
「きゃぅうううううん!?」
…切られる事は無かった。だが…。
バシャァアアンッ!!!
ゴルフの要領で打ち上げられた人魚は凄い悲鳴を上げて吹っ飛び、海に落ちた。立ち上る水しぶき。俺達の顔にも海水がかかった。しょっぱい。空には虹がかかっていた。ワーヘイワダナー。
「良し、オッケー!」
「いや、良くねえよ」
ダメージ入ってません?輝かしい夜神の顔に苛立ちを覚える。
「いやー、凄い水しぶきだったわねー。あら?これは…?」
真照は何かを見つけた様だ。瓶の中に手紙が入っている。ボトルメールか?
「ええと、何々…?あら?この字読めないのに意味が伝わるわね。死せるクトゥ○ー…?」
みるみる内に真照の顔が真っ白になっていく。それもなんか聞いた事あるぞ。その文言だけならいいが、変な魔術書とか読むとSAN値削れるやつだ。
「あ、ああ、ああ」
真照が空を見上げる。その目の焦点は合っていない。
「窓に!窓に!」
「落ち着け!ここ屋外だから!窓ねーから!」
精神分析ぃいいいい!!!真照の肩をゆさゆさと揺らす。幾らかたった後に正気に戻る。
「はっ!ここは誰!?あたしは何処!?」
「ここは海、お前は真照」
本当に正気に戻ったのか?とりあえずボトルは遠くの海へ投げ捨てる。あれは見てはいけないと真照が体を張って証明してくれたからな。元いた場所に帰れ。
出来るだけ遠くに投げ捨てるべく思いっきり投げる。ボトルはぽちゃんと言って沈む。そのはずなのにーー
すこんっ
という軽い音がして弾かれた。まるで何かに当たったかの様に…。次の瞬間、ざばあと言う音がして海が盛り上がった。
俺達の目の前に大きな真っ黒な何かが出て来た。大きな双眸がこちらを見ている。も、もしかして…。
「○トゥルフ様ですか?」
『否、我は海坊主である…』
「「「キィイヤァアアシャベッタァアアアアアアア!!??」」」
これは予想外!喋るだなんて!
「ええと…何をされに来たのですか?ク○ゥルフ様」
『娘を見逃してくれた礼をしに来たのだ…。あと我クト○ルフじゃ無い…』
娘…?あ、良く見たらさっきの人魚がクトゥ○フ様の上に乗っかっている。ぐったりしているのは陸にいるからだろううんきっとそうに違いない断じてさっきのやつのせいではない。
『そこの…黒いの』
「僕?」
『そうだ。お前だ…。ちょっとこっちに来なさい…』
そう言われた夜神は海水の届くギリギリのところまで行く。そこに伸びるタコの様な手。やっぱりクトゥル○様では?
夜神が受け取ったのは珠だった。光がキラキラ反射している。
『それを持っていればいつか来る時に役に立つであろう…。それではさらばだ…』
○トゥルフ様は去って行った。あれもお化けなのだろうか?お化けの謎は深まるばかりだ。
人魚「解せぬ」




