神様(病)の日常 僕の過去の話
「お前は何故そんななのです!!?」
母は僕を愛してくれなかった。
「……」
父は僕に無関心だった。
ねぇ、どうして?僕、悪い子なのかな?僕がいい子だったら、お母さんは僕を褒めてくれるかな?分からない。分からない。分からないや…。
☆☆☆
「ッ…!」
ガバッと布団を押しのけて目を覚ます。外は真っ暗。時間は夜中の3時位。
「夢、かぁ…」
ほぅ、と息をつく。服が汗でビショビショだ。今日は…ええと。真照ちゃんが寝たのを確認してから帰って寝たのか。
「……寝よっか」
僕はまた夢を見る。それは、今でも思い出す過去の記憶ーー
☆☆☆
「どうして貴方はそんなに女々しいのです!?」
母は「日本男子たる者、心身共に強くあれ」が口癖だった。今思えば酷い差別的な考えだ。かなり古い考え方をする人物だった。
母は僕を『心身共に強くする』為に様々な事をした。
寒い冬の日に滝に打たれに行かせられた。習いたくも無い剣道を習わさせられた。フルマラソン並の距離を重りをつけて走らされた。サバイバルをさせられた事あった。
その時の僕は『心身共に弱い僕が悪いんだ、僕は悪い子なんだ』と思っていたけれど、そんな事は無い。立派な虐待だ。
父は仕事以外に興味が無いらしく、彼の目には僕も母も映っていなかった。だから、母の教育方針に何も言わなかった。
母はますます『教育』に力を入れた。僕に徹底的に教育と言う名の虐待をした。
あの時、父がストップをかけていたら、母は変わっていたのかもしれないけれど…過去の事は変えられないんだ。たらればを考えていても仕方ない。
…もしかしたら、母は父に見て欲しかったのかもしれない。僕が『いい子』になって父の目が向けられれば、そういう風に教えている母にも目が行く。そう考えていたのかも。そう考えると悲しい人だね。
しかし、母がどれだけ頑張っても僕は決して『いい子』にはなれなかった。母はヒステリーを発症した。父はどれだけ母が狂おうとも、僕が痛めつけられようとも、救うどころか見る事さえしなかった。
それからしばらくした時、母は施設に入れられた。精神の病気だった。その時は、『僕のせいだ』と泣きに泣いた。僕がいい子だったら、僕がいい子だったら、と。
今思えば馬鹿な事だと思う。母は現実が受け入れられ無かっただけなのに、何でもかんでも自分を責めるだなんて。…それだけ追い詰められていただけなのかもしれないけれども。
父はもちろん面倒を見なかった。僕は叔母さんに預けられた。叔母さんはいい人だった。僕は初めてそこで『愛』を知った。温かいご飯は美味しかった。人肌が温かいなんて初めて知った。褒められる、認められると言う事が嬉しいと初めて知った。
そんなある日、母の訃報が届いた。病死だった。いつの間にか病気にかかっていたらしいけれど、知らなかった。
葬式には沢山の人が来た。その中には父もいたけれど、会話すらしなかった。愛してはくれない母だったけれど、死んだら死んだで悲しかった。
いっぱい泣いた。泣いて泣いて泣いて、泣きじゃくった。そうしたら、知らないおばさんに声をかけられた。
「男の子なんだから、そんなに泣かないの!」
それは、何気ない一言だったのかもしれない。僕を慰めるための一言だったのかもしれない。だけど僕にはーー
「え、う、あ…」
逆効果だった。母の言葉がフラッシュバックした。怖かった。恐ろしかった。
「や、やめ、やめて…」
母の虐待を思い出した。
「う、うわぁああああああああ!!」
僕は駆け出した。とにかくその場にいたくなかった。僕は母の面影から逃れるように、がむしゃらに走り出した。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
辿り着いたのは、原っぱだった。川があって、水面に太陽の光が反射していてキラキラしていた。
僕は疲れ果て、原っぱに寝転んだ。頭の中で、母の言葉がぐるぐる回る。
『どうして貴方は女々しいのです!?』
『貴方がいい子じゃ無いからお父さんは貴方を見てくれないのですよ!』
「うぐ…ひっく…」
やっぱり僕が悪い子だからかな。悪い子だから、お母さんは死んじゃって、お父さんは僕を見てくれなくてーー
「なにしているの?」
「うわっ!?」
急に話しかけられた。その女の子は真っ白な髪を持ち、ちょっと鋭い目をしていた。目は空色で、中央が金色。僕の目とちょっと似ていた。
「なにも…してないよ」
僕は女の子を心配させない様に嘘をついた。でも女の子はーー
「うそだよ。だってあなた、ないているもの。かなしくないならなかないもん。なにかかなしいことがあったの?」
「……」
嘘は見破られた。僕は女の子に悩みを打ち明けた。
「ぼく…めめしいんだって。よわいんだって。だから、ぼく…おかあさんにきらわれちゃった」
「…なんで?あたしわかんない。きみはきみだよ。めめしくても、よわくても、きみだよ。それをきらうなんて、あたしわかんないよ」
僕は驚いた。そんな考えなんてしたこと無かったから。
それから僕は自信がついた。好きな子が出来た。好きな子の事が知りたくてついて回った。怒られた。それでも、嬉しかった。
そんなある日、僕に神力が宿った。それから父の態度が急変した。急に僕を連れ戻したいと言った。僕は嫌だった。けれども、叔母さんは勝てなかった。僕は父に引き取られた。
初めのうちは訳が分からなかった。急にちやほやして、僕のご機嫌をとってーー。でもその理由は父は政府の裏の機関、特務課に勤めているからだということが分かった。特務課は僕みたいな神力持ちを対象とした研究、調査、監視機関で、父が母と結婚したのも、神力持ちを産ませる為だった様だ。父曰く、母の家系は神力持ちが多く産まれる家系だそうだ。
僕は初めのうちは怒りが湧いた。けれど、それはその内諦めに変わった。僕だけじゃ父には敵わないから。
僕はそれよりも好きな子を優先した。何度も何度も恋をして、何度も何度も振られた。その度に死にそうになったけれど、死ねなかった。
それからだいぶたって、僕は運命の人と出会った。真照ちゃんだ。真照ちゃんは僕に死んでほしく無いと言った。嬉しかった。僕に注意する姿はいつの日か僕に話しかけて来た女の子と重なって見えた。
僕は真照ちゃんの為に、嫌な事があってもこれからも生き続ける。それの邪魔をするならば、僕はーー
死すらも、厭わない。




