新入部員求まず
椅子に座る俺達。目の前には良い笑顔でニコニコしている夜神。机の上には入部届け。
「えー、と…?」
何これどう言う状況?
昨日のストーカー騒動から一夜。俺達は夜神に渡したい物があるから少し待っていて欲しいと言われていた。そして出てきたのがこれ、入部届け。
「僕、真照ちゃんのいる部活に入りたいんだ!」
そう頭にたんこぶが出来ていたり、絆創膏が貼ってあったりする顔で元気良く言った。…うん。これは聞いちゃいけないやつだ。
「えっと…志望動機は?」
「真照ちゃんがそこにいるから」
即答された。たった1日でこの変わりよう…昨日買い主にフラれて死にそうになっていた奴だとは思え無い。切り替え早すぎでは?
「…まず、そもそもの話だけれど、あたしアンタに自己紹介したかしら?」
「してないよ?でも好きな人の事は知りたいモノでしょう?調べたんだよ!勿論真照ちゃんの周りの人の事や好きなモノ、嫌いなモノ、家族構成エトセトラ…。僕、頑張ったよ!」
「その頑張りを別の所に向けて欲しかったわ…」
一晩でそこまで調べたのか?流石ストーカー。心なしか目の下にクマが出来ている様な気がする。
「勿論君の事もね?幸神くん?」
うおっ、びっくりした!急に振るな!
「ところで夜神、この部活が何の部活か分かっているかしら?」
「知ってるよ。真照ちゃんを崇める部活でしょう?あと幸神くんみたいに月宵って呼んで!」
真照と俺は椅子からずっこけた。どんな部活だよ、それ。
「そんな宗教じみた事なんかして無いわよ…」
「えぇ〜!?して無いの!?真照ちゃんは綺麗で美しくて花(ry
〜数分後〜
なんだよ!!崇め無いとかおかしいよ!あと今途中で僕の話がカットされた様な気がするんだけど…」
「キノセイヨ」
「キノセイダナ」
夜神の話をそのまま文字にすると1話分埋まっちまうんだよ!しかも途中からループし出すし!
「あたしの部活は人助けをする事が目的よ」
「分かった!真照ちゃん助けをするね!」
「話聞いてたのかしら?」
思いっきり事実を自分の都合の良い様に捻じ曲げているな。
「それに、僕が部員になる事で利点もあるよ!」
「あら、何かしら?」
「僕の神力は『姿形を隠す者』。実際は透明化だね。物体も通過するよ。人にも物にも使えるよ。自分自身が透明化出来るのは5分。クールタイムが30秒。自分以外のやつだと1分が限界かな」
「あら、凄いわね!あたしは鑑定で、万は等価交換よ」
「知ってるよ!調べたもの!」
夜神がドヤ顔をしているが、それは笑えない。真照みたいに情報系の神力でも無いのに俺達の神力が分かっているとか…。個人情報って意外とガバガバなのか?それともこいつが凄いだけか?
…それにしてもこのホラーなドヤ顔なんだか見覚えがあるなぁ。うーん…、何だったかな…?
「ちなみに、どんな事を願ったのかしら?」
「えーっとね、好きな人を調べる時に『自分の姿が見え無かったらもっとその人について調べられるのに』って考えていたら、できる様になったよ!」
「かなり雑ね…」
それで良いのか神力。
「その能力が生えてくるまで警護も調査も大変だったんだよ?何度か警察のお世話になっているし…。でも、その能力が出てから1回も捕まって無いよ!」
通報されてんじゃねぇか。その歳でストーカーとして警察のお世話になるなよ…。
「それと、神器はこれだよ」
そう言ってとり出したのは昨日の短剣だった。モチーフは勾玉なのか?変わった形だ。穴のとこはハート型になっていて、勾玉は真黒だ。
「これは八尺瓊勾玉。最初は勾玉だったんだけれど、気がついたら短剣になってたんだ!驚きだよね!」
勾玉がモチーフの短剣じゃ無くて短剣になった勾玉!?もはやそれは勾玉では無い様な気が…。
いやいや、それよりも。
「神器の形が変わる事ってあるのか?」
俺はこっそり真照に聞いてみる。
「いえ、分からないわ…。でも月宵本人が言っているんだから本当なんじゃないかしら。それに、あくまでもモチーフとしては勾玉が残っているわ。やっぱり、完全に形を変える事は出来ないんじゃないかしらね」
その答えに俺は確かにと思う。しかし、何が原因で神器の形が変わるんだろうか?夜神に聞こうにも『気がついたら短剣になってた』と言っていた位だから分からないだろう。
「はぁ、分かったわよ。熱意は立派ね」
「じゃあ!?」
「(本当は嫌だけれど、人数足りないし、)入部を許可します」
「やったー!!」
嬉しそうにしている夜神。気のせいかクラッカーが弾ける様な、お祝いムードな気がした。
真照は頭が痛そうに夜神を見ている。
俺は真照の心の声に同情し、「ドンマイ」と言う事しか出来なかった。
ストーカーくんは万のライバルポジだと思ってください。




