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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
5月
22/308

真照のストーカー撃退講座(物理)



桜もすっかり散り、若葉が青々としてきたころ。


「あの…」

「うん?如何したのかしら?」

「また依頼…頼めますか?」


そう声をかけてきたのはミケの飼い主の少女だった。


「なんだか最近…人につけられている様な気がするんです。振り返って見ても誰もいないし…私、怖くて…」


俺と真照は顔を見合わせた。


☆☆☆


今、俺達はミケの飼い主と一緒に下校している。もしつけられているならば真照の鑑定が発動するはずだ。


「なぁ、これお化けか…?」


俺はこそこそと真照に話しかける。


「うーん、違うと思うわ。お化けだったら何故こんな面倒な事をするのか理解出来ないわね。ただ単にストーカーじゃないかしら」

「確かに」


春は変態がわくと聞いた事がある。大方その類だろう。


「つけられていると感じる様になってから変わった事はあるかしら?」

「そうですね…。ポストから物が無くなっていたり、差出人不明の手紙が来たり、家が片付けられていたり…ですかね」

「わー。一部良心的ー」


ってよく考えたら不法進入までしているじゃないか。何者だ?


「なぁ、ストーカーの心当たりはあるか?」


そう俺が声をかけた途端。


ゾワッッ!!!


寒気がした。命が狙われている感覚とでも言うのか?俺は思わず辺りを見回す。


「いえ、ありませんね…。如何しましたか?」

「い、いや、何だか寒気が…」


ゾワワッッ!!!


また寒気がした!!!何これ怖い!!!


「まあ、そうよね…どうしたのよ、万?」

「ま、また寒気が…」


今度は寒気はしなかった。飼い主と会話すると寒気を感じるな…。


「もしかして、ストーカーかしら?でも、見えないわね…」


真照はキョロキョロと周りを見る。不思議そうな顔をしていた。


「ううう…怖いです」

「警察に通報したかしら?」

「まだしてません…正直、お家の片付けとかありがたいんです…。ご飯も美味しいです…」

「それ本当にストーカーかしら?」


俺には家政婦にしか聞こえない。ストーカーとは一体。


「なぁ、真照。寒気とかしたか?」

「いいえ。しないわね。ストーカーは男なのかしら?」

「そうか…」


嫉妬か?嫉妬なのか?俺と飼い主が話していると嫉妬しちゃうのか?はた迷惑だ!殺気とか向けんな!


何だかムカついて来たな…!あ、そうだ。いい事思いついた。


俺はぱっと見何も無い虚空に向かって、


「ねえ、今どんな気持ち?俺が飼い主と会話している時さあ?ねえねえ、今どんな気持ち?NDK?NDK?プギャーーー!!!」


虚空に向かって指指して煽ってみた。まあ、まさかこんな方法で出てくる訳n


「お前ぇええええええええ!!!」

「ぎゃあああああああああ!!!」


何か、いや誰か出て来たぁあああ!!!全く何も無い所から急にぬっと出て来たぁあああ!!!


そのストーカーは俺達くらいの少年だった。黒髪に黒目だが、ややたれ目の目の中心は金色で、髪も一房金髪だった。まるで三日月みたいだ。顔は中性的でイケメンの方なんだろうが、今は怒りに顔を歪ませている。肌は病的なまでに白い。手には短剣。…ん?短剣?あれ?その短剣を構えたまま俺の方に突進して来ている?やめて?怖いです。


とりあえず生太刀を取り出して迎撃の構えをとる。…あれ?今は刃がちゃんとある…。切れ味鋭そうだ。


もう少しで攻撃圏内に入るという所で、俺の目の前に真照が現れた。たじろぐストーカー。


「そこを退いて!その桜ちゃんに付いているゴミを殺せないじゃ無いか!!」

「何物騒な事しようとしてんのよ!!」


俺絶対殺すマンと化したストーカーと真照は向き合う。と言うか飼い主の名前って桜って言うんだな。


「僕が桜ちゃんを守るんだ!!そんなゴミなんかに任せられ無い!!そうさ、僕が僕が僕が…」


そのままブツブツと独り言を続けるストーカー。目に光は無い。かなりホラーな図である。見ろ、飼い主がめっちゃ怯えているじゃないか。


しばらくブツブツタイムが続いていたが、不意に真照の方に向き直る。


「君も、僕の邪魔をするのかい…?」

「邪魔?するわよ。万が殺されるのは見過ごせないわ!」

「そう…なら、死ねぇええええ!!!」


ストーカーが短剣を振りかぶる!それを真照は鏡で弾く事もせず、ただ、


「ふぬあ!!!」


腕を掴んで阻止した。


「甘いわね。そんなんじゃあたしを殺せないわよ」

「な、え、あ…?何で?何で腕が動かない?動け、動け、動けよぉおおお!!!」


これにはストーカーも涙目である。流石ゴリラ。


「はあっ!」


そのまま投げられるストーカー。ビタンッ!といういい音がしてストーカーは地に倒れ伏した。カラカラカラ…と短剣がストーカーの手から離れる音がする。


「あ、この人…」

「どうしたんだ?」


飼い主がストーカーの顔をまじまじと見て、一言。


「彼、同じ学校の夜神(やがみ) 月宵(つくよ)君ですね。日神さんや幸神さんと同じクラスの人ですよ」

「知らんな」

「知らないわね」


居たかな?こんな人?ストーカー改め夜神は目を回している。


「面識はあるのかしら?」

「ありませんね…」


無いのかよ。一体いつストーカーは飼い主の事を知ったのだろうか?


「うぅ…。どうして。どうして。僕は桜ちゃんのことが心配なだけなのに…」


うわ。ガチ泣きし出した。


「アンタねぇ…。アンタは桜が好きなのかもしれないけれど、桜がアンタの事が好きとは限らないのよ?」

「う…」

「それに、アンタはどうしてストーカーなんかしているのよ?」

「ストーカーじゃない!警護だ!」


そう言うのはストーカーの常套句じゃないか?


「はぁ…。まあそれはそれとして、桜の事が好きなら何で告白しないのよ?」

「それは…恥ずかしいから」


モジモジし出した。乙女か。


「恥ずかしいから?そんなんだからストーカーだと思われるのよ。ちゃんと想いは伝えないと届かないのよ?それとも…アンタの想いはその程度なの?遠くから眺めているだけで満足なの?」

「違う!!!」


夜神が否定する。


「僕は、僕は、僕は…桜ちゃんが好きだぁああ!!!」


青い空に響くような大声で夜神は想いを打ち明ける。顔は恥ずかしさで真っ赤だが、どこかやりきったという感情も持ち合わせているようだった。


して、その答えは…


「ごめんなさい」


恋の花は無惨に散った。


「そ、う…」


顔が真っ青だ。体もふらふらしているし、あのままだったら自殺しに行きそうな感じだ。やばい。


「あー、もう!元気出しなさいよ!」


見かねて真照が声をかける。夜神はどんよりとした目で真照を見かえす。


「元気出しても何も…僕は元気だよ。どうやって死のうか考えるくらいにはね。あはは…。首吊りが良いかな?練炭が良いかな?それとも…飛び降りが良いかな?あはははは…」


またもやブツブツタイムに突入。ストーカーな上にヤンデレ一歩手前とか…めんどくさい事この上ない。が、放っておいたら死んでしまいそうだ。


「アンタとは大して関わった事は無いけど…アンタが死ぬのは嫌よ。クラスメイトの葬儀とか…。そんなのお断りよ。あたしはアンタに生きて欲しいわ。今ある命を無駄にしようとするんじゃ無いわよ!!!」


ビシッと頰を叩く音が響く。その言葉は、オシラサマによる命の危機に瀕していた真照だからこその重みがあった。


頰を抑えてうずくまる夜神。だが、その口元は笑っていた。…ドMか?


「ねぇ。本当に僕に生きて欲しいの?」

「ええ。生きて欲しいわ」

「本当?本当の本当の本当?」

「ええ、本当よ」


次の瞬間、夜神は嬉しそうに笑う。ただ、目が笑っていないように感じる笑い方だ。…デジャブ。どっかで見た事のある笑い方だな…。どこで見たんだったか。


夜神の頰は叩かれたほうは勿論赤いが、叩かれていない方の頰まで赤くなっている。上気しているのか?


「僕…嬉しい!こんなにも僕を心配してくれるなんて…!!」

「あのままじゃあ死にそうだもの。誰だって心配するわよ」


真照が正論を言うが夜神はスルー。


「…僕、君の事…好きになっちゃったみたいだ」

「ふーん…ん?んん?んんんんん???」


「「「えええええええええ!!!???」」」


ヤンデレ一歩手前でストーカーで惚れっぽいって…めんどくさいなと思った。

5話「何か作っている人」、14話「名前は分からないけれど同じクラスの人」です。新世界の神とは関係ありません。

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