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神様(仮)達の日常  作者: 葛葉 シナチク
4月
17/308

神様(笑)の日常 走馬灯

真照視点です。



「はあ、はあ、はあっ」


走る。ひたすら走る。迷惑を掛けない様に。誰も巻き込まない様に。


今日は鑑定が死ぬと言った日だった。永遠に明日が来ないで欲しいと願っても、そんな事はあり得なかった。相変わらず鑑定は今日が命日だ、お前は死ぬんだと伝えてくる。


本当は学校に行かなくちゃいけないのだけれど、死ぬ時間は分からない。あたしが学校に居る時間に死ぬ時間が来たら、もしかしたら運命の強制力が働いて学校が爆発四散するかもしれない。


…死ぬのはあたしだけで良い。万や九頭龍、家族を巻き込みたく無かった。


…そもそも何であたしが死ななくちゃならないのかしら?答えは簡単、オシラサマのせいよ。


オシラサマは本来は良いやつらしいわ。精霊に近しい存在で、我が家はこれを代々祀り、富を得て来た…と倉庫で見つけた資料に書いてあったわ。でも、今回の場合は既に悪霊化していてお化けに近い存在に成り果てているわね。


確かに家には祠が有って何かしら祀っているわね。あれがオシラサマかしら?


これは憶測でしかないけれど…。祀る方法が間違っているんじゃ無いかしら?願い…富を得る為にはそれ相応の対価が必要だけれど、祀り方が間違っていていまいち願いを叶える様な力が足りない。なら、その一族から1人定期的に命を差し出して貰い、それを対価として願いを叶える…。そういう訳かしら。実質生贄よね。


あたしが倉庫で見つけた資料の中には家系図も有ったわ。見ると、不自然な程に事故死が多いのよね。大体1世代に1人位の割合ね。今回の場合、あたしか穂能のどちらかだったのかしら?それであたしが選ばれた、と。


…死ぬのは怖いけれど、穂能が生贄になるよりはマシね。あの子はあたしよりも可愛くて、元気で、良い子だから。もっともっと、生きるべきだから。もし片方しか生き残れないのなら、あたしは命を差し出すわ…。


それにしてもあの資料かなり纏まっていて見やすかったわね。誰か先祖があたしみたいな状況になって調べたのを纏めたのかしら。


話は変わって、今あたしは山に向かっている。山の方が人が少なく、あたしの死に巻き込む可能性が低くなる。山に近づくにつれ坂が急になって行くが、気にしない。早く、一歩でも人のいないところに行かないとーー


キキーーッ!!! ドン


あたしの目の前で車が事故った。危ない。一歩でも前に出ていたら引かれていたかもしれない。ガードレールにぶつかった様で車体からは煙が出ている。中の人は…気絶しているわね。さっさと逃げる。


さっさずっとあんな調子ね。車に引かれかける事15回。自転車に引かれかける事20回。上から植木鉢が落ちてくる事8回。ケンカに巻き込まれかける事3回。ナイフで人質にされかける事4回。鉄砲が放たれる事2回。ブーメランが飛んで来た時は驚いたわ。計53回死にかけたわ。米○町も真っ青の事件発生率ね。メガネの少年は居るかしら?


そろそろ日が暮れる。日が暮れるという事はまともに鏡が使えなくなる、対抗手段が無くなると言うことでもある。どうしようかしら…あ。


こんなところにジンジャがあるわ。知らなかったわね。


理由は分からないけれど、ジンジャに入ると武器が使いやすくなるのよね。補正がかかるのかしら?お化けも近寄らないし、まるで守られている様だわ。さっきから事故も無いし…もしかしてオシラサマすら近づけないんじゃ?


それに、鑑定が言う命日は今日。即ち12時まで生き残ればあたしの勝ちである。


フハハハハ!これで勝つる!


と思っていた時期があたしにも有りました。


目の前に見た目は子供、頭脳は大人…では無く真っ白な軍服を着た少年が現れた。髪も、目も、肌も余す所無く白一色だった。表情は無く、人形のようで、それが不気味さを引き立てていた。手には真っ赤な鞭。そこだけ色が付いていて鮮やかである。


ただの少年…ではないわね。どちらかと言えばお化けに近い存在なのかしら。…こいつがオシラサマかしら?随分人に近い形をしているのね。珍しいわ。余りにも事故を回避するから痺れを切らして出て来たのかしら?


少年改めオシラサマはこちらを何も映ってないかの様な目で見ると、急激にこちらに近づいてきた。


「っ!?」


速い!ジンジャの中にいるのにお化けであるはずのオシラサマは普通に動いている。これは…外で戦っていたら即座にやられていたわね。


「はぁっ!!」


負けじとこちらも応戦する。ビームは紙一重の所で避けられた。もうすっかり夜になっていたけれど、ビームの威力は晴れの時と変わらない位ね。ジンジャ様々だわ。


『……!』


オシラサマは何か言っているのかしら?良く聞き取れないわね。今度は鞭を振りかぶって来た。


そこまで力強くは見えない。これなら鏡で受け止めても大丈夫かしら。


そう思っていたのが間違いだった。あたしは吹っ飛ばされた。一瞬、何が起こったのか分からなかった。


地面に叩きつけられる体。当たり所が悪かったのか、頭からは血が流れている。視界が真っ赤に染まった。


「まだ、よ…」


まだ負けられないわ。そのまま飛んで来る鞭をタイミング良く掴んだ。手がびりびり震えて血まで出て来るが、そんな事気にしてられない。あと少し…止まった!


止まった瞬間、鞭をこちら側にぐいっと引っ張る。急に引っ張られたオシラサマはバランスを崩し、すっ転ぶ。


次の瞬間、腹パンを決める。どうだ!この護衛すら倒してしまったゴリラパンチは!!…自分で言っていて少し悲しくなるわね。


「…あれ?」


オシラサマは倒れただけで特に苦悶の表情を浮かべる訳でも、言葉にしてはいけないものを吐く訳でも無かった。ダメージを受けている様にも見えない。…もしかして本当にダメージを受けて無い?


少し動揺しただけの、ほんの短い時間だった。


「キャァアアア!!!」


でもその一瞬が、命取りになる事もある。


あたしは鞭で叩かれて…宙を舞った。そのまま頭から落ちて、気絶した。何か暖かいモノに当たった様な気がした。


☆☆☆


真っ暗な世界で。思い出すのは最近の、万との事ばかり。


あの日は、楽しかったな。


あの日は、嬉しかったな。


やだよ、死にたく無い。


もっと、ずっと、おばあちゃんになるまで生きたい。


まだ、まだ、死にたく無い。


死にたく無い。助けて。助けてよ、万ーー。


☆☆☆


目が覚めたのは暫くした後の様だった。あたしが目覚めると言う事は、まだ死んで無いと言うこと。もしかして、勝ったーー?


そんな事は無かった。目の前で万が戦ってーー正確にはリンチされていた。


「よ、ろず…。逃げ、て…」


あたしは渾身の力を込めてビームを放つ。避けられてしまったが、なんとか万は救えた様だ。


万はあたしみたいにお化けに対して対抗手段を持って無いのにどうやって戦っていたのかしら? 気にはなるが、今はそれ所じゃ無い。


「逃げて…。これはあたしの問題。万は関係無い…!」


あたしが死ぬのならともかく、万まで巻き込まれて死ぬのは嫌だった。万は今にも倒れそうな程ボロボロで、口から血まで出ていた。


「関係無いワケ無いだろう!なんで真照が死ななくちゃならないんだ!!」


ありがとう。ありがとう、万。こんなに迷惑掛けてたのに、こんなに心配してくれて。涙が溢れそうになる。


だからこそ。だからこそ、死なないで。万、貴方は生きていて。自分の身を投げ打ってまで人の幸せを願う貴方なら。貴方ならきっと、生きていれば良い未来がやってくる。だから。


「生きて…!あたしの分まで、生きて…!!」


あたしの分まで人生を、生きて欲しいのよ。幸せも、何もかも。先に逝く人のワガママだとは思うけど。あたしの最後のワガママ、聞いてくれるかしら?


だけど、ワガママを聞いてくれる事は無さそうだ。万の顔が、その怒りを表していた。こんな万見たこと無いわ。


「おい…真照。お前は何で諦めているんだ?」

「え…?だって鑑定に死ぬって…そう書いてあって…」


急な質問に困惑する。一体何を諦めていると言うのか。


「鑑定にそう書いてあったから、何だ?死ぬのか?それは絶対なのか?なぁ、何で抗わないんだ?…もしかして、死にたいのか?」


その言葉に、あたしはキレた。


「何よ…さっきから…あたしだって死にたく無い!!!」


もっと生きたい!もっと食べたい!もっと話したい!もっと、もっと、もっと…!!!


「なら何で諦める!?なら何で抗わない!?…お前は、まだ!!生きてんだろうがよ!!!そう簡単に命を投げ出すな!!そう簡単に諦めるな!!」

「っ…!」


そっか、あたしは。


心の何処かですでに「生きる」と言うことを諦めてしまっていたのか。


「死にたく無い、生きたい」と口にはしつつも心の何処かで諦めていた。


死ぬ運命だと諦めてしまっていた。


だからこそ。「貴方に()生きて欲しい」と言ったり、「あたしの分まで生きて欲しい」と言ったりしていたのか。


あたしは気づいた。


だからこそ。もう諦めない。


「俺が!!俺が、叶えてやる!!!」


ただの人にそんな事が出来るはずも無いのに。


あたしの夢なんて、叶えられるはずも無いのに。


何故かしら。この人なら叶えられる様な気がするわ。


あたしの目から涙が溢れる。そして大きな声で叫ぶ。


「生きたいっっ!!!あたしは!!!あたしは、生きたいっっ!!!」


それは心からの、魂からの叫びだった。


その時。眩い青い光が辺りを満たした。

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