84話 西の天使
「それでは行きましょうか」
もうすぐ満月…くらいの綺麗な月をバックにナイトは微笑む。さっきは可愛いな…と思ったけど今は綺麗だ、と思う。本当にずるい子だなぁ。
「どこに向かうの?」
「まずはいつもいる場所がある程度固定されてて、意見を聞いておくべき相手、【テールインペリアル】さんの元へ行きます」
・・・うわぁ。いきなり超強敵じゃん…勝てるかな…私のミス次第で普通に負けそう。
【テールインペリアル】は私が出会った時と同じように南町の住宅街のどこか高いところにいるみたい。なんでそうしているかはわからないけど…とにかく狙って会いに行けば高確率で会えるみたい。わざわざ強敵に会いに行く変わり者はいないと思うけどね。
というわけでやって来ました南町!と言っても家やアパートばっかりで特に面白味はないんだけどね。
「さて…高いところに行く必要がありますがあいにく私はジャンプ向上のスキルは持っていません」
「じゃあ私が…」
「1人だと見落とすかもしれませんし、2人で行くべきでしょう。あー、困りましたねぇ」
なんかワザとらしく言葉を紡いでる…もしかして…
「私がナイトを抱えてジャンプする…とか?」
「仕方ありませんねぇ、それしか方法はありませんもんね」
・・・一回飛んでみたいなら素直にそう言えばいいのに。
「じゃ、じゃあ…ギュってするよ?」
「は、はい!」
うわぁ…いい匂いするぅ……! ナイトは私よりちょっと身長が高いからうなじ付近の匂いが…ダイレクトに…!
「・・・どうしました?」
「い、いや!なんでもないよ!じゃあ飛ぶよ?3・2・1…」
ジャーーーンプ! アパートの屋上までひとっ飛び!便利だよねぇこのスキル。
「・・・いませんね」
「いないね…」
少なくともどの棟のアパートの屋上にも人影はない。実際私も一回アパートの屋上で会ってるし、ベテランのナイトが証言してるんだから絶対いるって思ってたけど…。
「どうする?今日のところは他の魔法少女に変える?」
「そうですね…ん?ランプ!見てください!下!」
「ん?…あー!【テールインペリアル】!」
よく見ると侍の姿だけじゃない!もう1人いる!
「あれは…【ドレスチェリー!】マズイよ!新人ちゃんだ!」
「一刻も早くここを離れましょう」
「う、うん!」
そう、【ドレスチェリー】は新人の魔法少女。つまり側にはディスポンがいるはず。
今私たちが協力してペアを組んでいるのは魔道国と戦うためにディスポンたちの国と協力するか、私たちだけで対処するかみんなの意見を聞いて回るため。当然ディスポンに聞かれたらマズイ!
「これからどこに向かう?」
「そうですね…どこと決めても仕方がないのでとりあえず西に移動しましょう」
「西に?」
西側って何かあったっけ…クリスマスの日に飛ばされた場所が西だった気がするけど田んぼだらけだったような…。
「自分で言うのもあれですが…北の【ベビーラテラル】さん、南の【テールインペリアル】さん、東の私。そして西には私たちに並ぶ魔法少女がいます。今日は彼女に会うことにしましょう」
ほへー…ってことは結局強敵と当たることに変わりはないんだ…。キツい…。
ジャンプして走ってを繰り返して20分くらいで田んぼ地域が見えてきた。こんなところに魔法少女なんているのかな…。
「・・・来ましたよ」
「えっ!?」
あたりを見回してみるけど特に誰もいない…勘違い?
そう思って油断した瞬間、頬に何かが掠めた。これは…羽?
「ランプ!回避!」
「えっ?」
突然羽が白く輝き、爆発した。なんとかギリギリで避けれたけど…直撃してたら危なかった…。
「へぇ。貴女の連れ、なかなかやるじゃないの!」
「お久しぶりです。【イヤーエンジェル】さん」
【イヤーエンジェル】…?と思い声のする方へ視線を向けると…
「と、飛んでる!」
「あら?驚かせちゃったかしら?」
エンジェルの名に恥じない純白の羽、肩で切り揃えた純白の髪に巻かれたオリーブの葉、・・・なんかギリシャっぽい白い服。見惚れるほど美しい…。ただ…
「飛んでる人は他にもいるから…そう驚くことじゃないかも」
【ペインバタフライ】や【吸血姫】で慣れちゃった。
「うぐ…【ペインバタフライ】め…私の株を奪って…」
「今日はお話があって来ました。こちらは【ハニーランプ】。私のパートナーです。私たちはーー」
「おっとそこまでよ。何か勘違いをしているんじゃないかしら。私たちは話し合うためにここにいるんじゃない。戦うため、そうでしょ?」
「あなたならそう言うと思いましたよ。ランプ、構えてください。当然ですが、彼女は強いですよ」
「うん。わかった…来て![メルヘンロッド!]」
「勝利を、[名槍:月姫]」
「解放してあげましょ?[熾天使]」
私は杖、ナイトは槍、【イヤーエンジェル】は何色にも光り輝く天使の輪を頭上に座した。
戦いが、始まる!




