19話 乙女の祈願
「ネ、【ネイベルナイト!!!】」
叫ばずにはいられない。2ヶ月前に運良く勝利した相手が今、私を庇うように現れる。
「【ネイベルナイト】さんですかぁ。非常に厄介で最悪な相手が出て来ちゃいましたね〜」
【ティクルグラント】は額に薄い汗を浮かべる。ディスポンが言ってた通り【ネイベルナイト】は実力派として名が通っているのかな?
「【ハニーランプ】さん。あなたとの決着はまた着けるとしましょう。今日のところはこの二人を倒す。よろしいですか?」
背を向けたまま私に問いかける。
「うん。よろしくね【ネイベルナイト】」
どうして私の味方をしてくれるのかは分からない。でも彼女は味方のフリをして私を倒すような卑怯者でないことは何となく分かる。
「ううーん。ティクルちゃん、【ネイベルナイト】と戦って大丈夫かな?」
いつのまにか【リックキャンディ】が合流してる。
「大丈夫でしょう。タッグマッチは私たちの主戦場ですし、いかに【ネイベルナイト】さんと言えど初心者がパートナーなら穴が生まれるはずです〜」
...もしかして私って戦力にカウントされてない?
「ねぇ、【ネイベルナイト】」
「長いのでナイトで結構です」
略していいんだ。
「じゃあ私もランプでいいよ。ねぇナイト、私たちはどう戦う?」
あっ、ランプじゃなくてハニーって呼ばせれば恋人みたいだったかな? そっちのが萌えたかも。
「どうであってもかまいません。ご自由に」
作戦とかなしで行くのかな...強気...
「さぁ話し合いもここまでにして、やりましょ〜か」
サッと全員構える。住宅街の薄暗い一本道。ここなら案外狭いから戦いやすいけど、そしたら槍使いのナイトは少し戦いづらいかも。
「先手必勝!」
通常攻撃を二人に向け撃つ。
「うわわわっ!」「せいやっ!」
【リックキャンディ】の方には通常攻撃が通った。初めて通常攻撃でダメージを与えたからわかったけどMP回復の手段がこれしかないのはキツイ...!
「プンプン! 怒ったぞー! ティクル、いつも通りいくよ! おいで![レッドガン!]」
「はい〜」
【リックキャンディ】が【ティクルグラント】の前に立つ。一人で相手をしてやると言いたげだ。
「させません。[名槍:月姫]ハッ!」
ナイトが突っ走って攻撃を仕掛ける。
たった10mの距離を詰めるために全力で動き出したナイトは【リックキャンディ】の拳銃から放たれる弾幕に阻まれ民家の屋根へ退避する。
「『シスタープリアー』」
シスターらしく手を合わせて祈るポーズをとる。【リックキャンディ】はシスターを守るように拳銃を撃つ。あの魔法はすごく強力ってことかな。
「ランプさん。同時に行きますよ」
「え? あっ、うん!」
3・2・1とカウントされ、私たちは同時に走りだす。
ナイトは屋根伝いに上から、私は下から【リックキャンディ】を標的に定める。
「えへへ〜。両手に花だねぇ。でも、甘いよ!サブウエポン![ブルーガン]」
チャキッともう一丁の拳銃を取り出した。
「バイバーイ『アイスバレット!!!』」
うっ! 思いっきり被弾した。頭に直撃したからかHPが80近く減っている。
「甘いのはそちらでは?」
魔法を槍で搔き消したナイトが槍を振るう。【リックキャンディ】に突き刺さった槍を抜いたナイトは
「伏せて!」
私に大声で指示。なになになに!?
突然【リックキャンディ】が大爆発!
モロに食らってたらゲームオーバーだったかも...
「あちゃー、ダメだったかぁ。『ウッドパペット』に『キャンディボム』の合わせ技。頭いいでしょー?」
ナイトの安否を確認...するまでもなくシールド魔法で防いでたみたい。私がその魔法を持ってても一人ならやられてただろうなぁ。
まだ【ティクルグラント】は祈りのポーズで魔法を発動し続けている。あんなに時間のかかる魔法って...絶対ヤバいやつだ!
「いつまで伏せてるつもりですか? そろそろ立ち上がってください」
あっ、ついうっかり...頼りがいのある仲間(?)がいると任せっきりになっちゃうな。
「行きますよ」
「うん」
再び構えて攻撃の準備をする。急かすということはそろそろシスターの魔法が発動するころってことかな。
3・2・1
「『フレイムボール』」
ナイトの炎の魔法に隠れながら直進!
【ティクルグラント】はシールド魔法で防ぎ、【リックキャンディ】は避けたけど二人を離すことはできた。
「「やぁっ!」」
ナイトと一緒にシスターに向かって攻撃!
しかし・・・
「『シスタープリアー』成就!!!」
【ティクルグラント】の身体が白く輝いた。
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