15話 それぞれの独白
バスに揺られることものの3分で灯さんは眠ってしまった。あれだけ早朝に起きて肝試しと海のレジャーを楽しんでいたから無理もないですが。
「ふぅ。どうせいるのでしょう? 出てきたらどうです?」
本当は見たくないもないそれの気配を感じ、自ら出現を促す。
「なんでわかるんだお☆? 正直怖いお☆」
前の座席の上にディスポンが現れる。
「今日のところは感謝しておきます。あなたが突然現れたり、魔獣に慣れていたお陰で肝試しで怖がらずに済みました」
怖がっている灯さんを守ることもできた。
「ハニ...いや、そこの女の子とはずいぶん仲が良さそうだお☆ 魔法少女内ではほとんど誰かと仲良くするなんてしなかったのに、成長したお☆」
「今だってそうですよ。他の魔法少女と馴れ合うつもりはありません」
「ふ〜ん。一応その言葉、覚えておくお☆ 今回は勝利おめでとだお☆」
そう言ってディスポンはシュッと姿を消した。
ここまであっさりと消えるディスポンも珍しい。その程度の用なら出てくるなという話ではあるが、あの餅もどきに期待するだけ無駄だろう。
今回の戦闘では油断も慢心も消して勝利することができた。これで前回で受けた遅れは取り戻せたはずだ。
ふと、ディスポンの言葉を思い出す。
誰かと仲良く...なんて、私にはできないことだと思っていた。灯さんと初めて会ったあの日、正直一人でいたかったのに...と思っていましたが灯さんと友達になれて良かった。と今では思う。
コテンと灯さんの顔が私の肩に寄りかかってくる。
「ふふっ、行きと逆ですね」
ふと桜さんの顔が浮かんだ。たくさんの女の子に囲まれていたからきっと誰にでもいい顔をするのだと思っていた。
でも、昨夜部屋で灯さんと話した後に私に見せた顔は、どちらかと言えば敵対心からくるものに見えた。
『輝夜さん、ご迷惑をおかけしました。・・・私、負けませんから』
あの言葉の意味はよくわからない。でもきっと桜さんにとっては重要なことなんだ。
私は人の気持ちを理解することが苦手だ。最近まではそれを避けて生きてきた。
それを変えてくれたのは、他でもない灯さん。
初めて出会ったのは入学式の日だと灯さんは思っているでしょう。でも本当は7年ほど前に出会っているんです。
灯さんがいるこの世界を守りたくて私は魔法少女になった。魔獣を毎月狩り尽くし、ポイントも稼ぐだけ稼いだ。
いつしか私の願いはーーー
「う、うーん」
灯さんが目を覚ました。
「よく寝れましたか?」
「ありゃ、寝ちゃってたか! ゴメンねぇ」
「いえいえ。お互い様ですよ」
「楽しかった〜! 桜がいたのは予想外だったけど」
「本当に仲良しな姉妹ですね。大浴場で灯さんを待っているなんて」
灯さんが恥ずかしそうに頬を掻く。
「そうかも...まったく、姉離れができない子なんだから!」
どうしてだろう...灯さんが桜さんのことを楽しそうに話していると胸が少しチクンとする。
これが桜さんも感じていたモノなのでしょうか。
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「桜ちゃーん、遊ぼうよぉ〜」
昨日海でナンパした女の子たちが部屋に詰め寄ってくる。
「ゴメンね、私のぼせた影響でちょっと身体が重いかも。ちょっと休んでから合流するね!」
こういう時大事なのは遊びたいという思いはあると伝えること。遊べなかったとしてもそれは私のせいではなく身体の問題であるという体にできる。
部屋には私一人。考えてみれば一人でいるなんて久々だなぁ。大体いつも女の子に囲まれているから無音が怖く感じる。
ギュッと抱きしめてくれたお姉ちゃんを思い出す。
「ズルイなぁ」
なんのために私が周りに女の子を侍らしているのか。
なんのためにお姉ちゃんの部屋に忍び込んでこの旅館に泊まることを調べたのか。
なんのためにこの旅館の娘と急ピッチで友達になったのか。
「はぁ。本当にズルだな。私」
そして、美山輝夜。私は彼女のことは旅行前から知っていた。当然リサーチ済みである。
あの人、きっと何かを隠している。それを突き止めれば、もしかしたら。
「だから、これがズルなんだよね。お姉ちゃん」
嘘が誠になるとはまさにこのことか、本当に頭痛がしてきたので横になった。
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バスが星乃川駅前に着く。
「じゃあねーー! 輝夜ちゃん、また今度!」
輝夜ちゃんに向けて元気よく手を振る。
「はい! 宿題、忘れちゃダメですよー!」
うぐっ!? 忘れたいことを思い出させられた。
「や、やるよ! 心配しないで!」
ニコッと笑って輝夜ちゃんは振り向いて歩いていった。
ちなみに、私はこの後宿題に手をつけず、8月の最終日を迎えることになるのです。
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