28メイド服も無事改定されました
騎士団の制服改定と同じように、ソフィアとカナデは各所に働きかけを行っていた。今回は、女性が働く場所に出向くことが多かった。彼女たちが働いている場所に男性は少なく、制服改定に不満を持つ者への対応は少なかった。
「メイド服の改定ねえ。私は、別に変える必要はないと思うけど」
「男の視線ですか?そんなもの、気にしたことないです」
「ズボンですか?下着が見えなくなるなら大歓迎です」
「男たちからの視線を逃れられるのなら、なんだっていいです」
城の中では、メイド服、侍女服で制服が二種類存在しているようだった。つまり、メイド服という、破廉恥な服装を身につけている女性とそうでない女性がいるらしい。どのようにして、制服が区別されているかは、カナデにはすぐにわかった。
「身分の高い奴が、よほどおんな好きのくそ野郎と判断した。全員、不能にしてやろうか」
「カナデさん、そんな暴言を吐くものではありません」
エミリアのような、明らかに美少女と思われる女性は、もれなく破廉恥メイド服が支給されていた。しかし、男性からしたら、容姿が普通で男の目の保養になりえない一般女性には、それこそ、もといた世界の中世時代の海外でのメイド服が適用されている。そんな男による女性の選別が行われている現状をカナデは理解した。そして、その現状を生み出している、貴族たちに腹が立った。
そのため、カナデたちが制服改定に働きかけていることに、意味を感じる女性と、意味のないことだと話す女性が存在することをカナデは知った。
「カナデだけが怒りを覚えているわけではないので、少しは落ち着きなさい」
腹が立っているのは、カナデだけではない。ソフィアも内心、怒り狂っていた。カナデに指摘されるまで、目をつむっていた案件だが、いざ、口にされると、気分が良いものではなかった。
「今回は、そんな彼女たち全員にズボンを薦めたいと考えています。もちろん、今まで通り、一般女性が着ているメイド服はそのまま残します。案外、それがいい気がしました」
カナデは、実際に働いている女性たちの意見を聞いて、自分の意見を少し変えることにした。実際に働いている様子を見る限り、一般女性たちが着ている制服は、多少の改良を加えるだけでも、問題ない気がしたのだ。ただし、破廉恥メイド服には、徹底的に改良を加えさせてもらおうと思っていた。
「カナデにしては、珍しい決断ね。妥当な案ではあるけれど」
今回も、制服改定にもひと騒動あったが、騎士団の制服改定の件で、貴族のお偉いさん、城で働く男性たちは、ソフィアやカナデたちの恐ろしさを身に染みて実感していたので、騎士団の制服ほど時間がかかることはなかった。
「これが新しい制服。足が隠れて、しっかりと掃除できそうだわ」
「それは良かったです。ちなみに、私も今後、これを通常服に固定しようと思います。騎士団の制服も捨てがたいですけど、私の身分的には、こっちですので」
エミリアに新しい制服を着せてみる。白い丸襟のブラウスにリボンタイ、下は長袖のスラックス。これだけでは味気ないので、メイドということもあったので、エプロンもつけてもらった。
せっかくズボンにして男性の目線から逃れられても、可愛くなければつまらない。そんなことを配慮した結果だ。エプロンは何種類用意して、好きな柄を着用してもらうことにした。
最初はズボンに懐疑的だった女性たちも、破廉恥メイド服着用指定が出ていた女性たちの喜びの声を聞いて、続々とズボンの制服を着用するようになった。しかし、別に今回は、破廉恥メイド服以外の制服を廃止したわけではないので、ちらほらとスカート姿で仕事をする女性も存在していた。
「太っている人にとっては、スカートで足が隠れるから、いいんですって」
「太っている人かあ。それは考えたことがなかった。ていうか、この世界でもいるんですね」
「カナデさんは細身ですからね。どの世界でも一定数いるに決まっています」
カナデとソフィア、エミリアの三人は、ソフィアの部屋で話していた。カナデは、異世界の常識にとらわれていて、女性の悩みの一つである、太っているというコンプレックスについて考えることを忘れていた。
「太っている人がいることをすっかりと忘れていました。どうしても、異世界物では、太っている人とか、足だけ太い人とか言っている人も、実は大して太くないことも多いですから」
「異世界物?」
「カナデの妄言は気にしなくて構いません。まあ、カナデさんの言いたいことはわかります。ですが、私たちは創作物ではありません。そこのところをしっかりと胸に刻んでおいた方がいいのかもしれませんね」
「では、私は仕事があるので、失礼します」
エミリアが部屋を出ていくと、二匹の猫がソフィアのひざに乗り、甘えるように頭をこすりつけてきた。
『カナデ、今回の制服改定もうまくいったようだな』
『もう、神と呼べるレベルにきているかもしれんな。われたちも、カナデを見習う必要がある』
「いやいや、女神や悪魔に褒められるようなことはしていませんよ」
「本当に、あなた方に褒められることはないです。カナデに対してですが」
「やっぱり、ソフィアさんって、私に対して、言葉がひどいです!」
「カナデ!飛んでもない依頼が来たぞ。おまえ、教師の免許は持っているか?」
メイド服の改定が終わり、猫と戯れていたカナデソフィアに、一つの依頼が舞い込んできた。




