26スカート談義①~スカートを廃止してもいいでしょうか~
少しずつ、投稿を再開していきます。
騎士団の制服が改正されてからも、カナデたちの女性の制服の改革は止まることはなかった。騎士団の次に改正を行ったのは、城で働くメイドや侍女たちの制服だった。
「メイド服を改正とはまた、思い切ったことを言いますね」
「ソフィアさんは、疑問に思わないのですか?メイド服が本当に掃除や洗濯、調理に向いている服なのかを」
「向いていないことは否定しませんが、普段、私たちが着ているこれらのドレスなどよりはよほど動きやすくできているし、汚れても洗える素材でできていますから、あまり考えたことはなかったですね」
カナデとソフィアは、メイド服についての議論をソフィアの自室で行っていた。カナデは常々思っていることをソフィアにぶちまけていた。ちなみに、ソフィアは言葉通り、簡素だが白い上品なワンピースタイプのドレスを着用していたが、カナデは新しく女性騎士団の制服となったブラウスにスラックスを履いていた。
「まず、メイド服がスカートっていうのがダメだと思うんですよね。まあ、言い出したらきりがないのは承知ですが、最初にスカートという概念を作り出した人がいけないとは思いませんか?」
カナデはどうにも、異世界に来る前から、スカートが苦手だった。学生時代に制服指定の学校に通っていたので、仕方なく毎日スカートを着用して登校していたが、苦痛でたまらなかった。どうして、女子だけ、あのようなひらひらした下半身の防御力が低い服を着る必要があったのか。今でも考えることがある。
「それは、もといた世界の事情ですよね。この世界にはこの世界のおきてというか、ルールがあるのですから、慣れていくしかないのではないですか?ほら、『郷に入っては郷に従え』という言葉はご存じですか?」
カナデの言葉に対して、ソフィアは呆れていたが、怒り出すことはなかった。
「でも、この世界って、どうにも、男の理想の世界って感じがして、女性にとって生きにくいと思うのはダメなことでしょうか?」
「はあ」
カナデの言葉に、今後はため息をつくソフィア。カナデという人間は、あまりにも素直に自分のことを話しすぎている。明らかにやばそうな意見もちらほら垣間見える。それなのになぜか、ソフィアはカナデを応援したいと思っていた。なぜなら。
「やっぱり、わたしみたいな考えは異端だと思いますか?『郷に入っては郷に従え』ということわざ通りにつつましく、スカートを履いておとなしく生きていた方が」
「バカみたい」
「え」
「スカートが似合わないのに、よくそんなセリフがはけたものね。今だって、ちゃっかり女性騎士団の制服を着ている奴が、何をほざいているのやら」
「でも」
カナデの弱気な発言に、ソフィアはきっぱりと言ってやる。これ以上、カナデが弱気では困るからだ。これからまだ、やることはたくさんあった。
「別に必ずしも、郷に従えというわけではないでしょう。現に、カナデは女性騎士団の制服を変えることに成功した。だからといって、メイド服をズボンにしてしまうほどのことかなとは思うけれど」
「メイド服といえば、男の妄想の産物、なので、余計に嫌なんですよ。そもそも、手っ取り早い話、スカートを完全廃止すれば」
「できないでしょ」
カナデとソフィアが悩んでいるのは、女性服の定番のスカートについてだった。
異世界では大抵、中世ヨーロッパ風の世界観で、城の外観もそうだが、そこで働く人や町で暮らす人々の服が、それらを意識したものになっていることが多い。城で働く女性と言えば、もはや定番のメイド服。貴族制度があるところでは、大抵、身分が高い女性はドレスを普段着として着用している。
それが、カナデにとって引っかかりを感じているところだった。
「カナデは意見が極端なんですよ。いきなり廃止になんて、できるわけないでしょう?それに、もし廃止にでもなったら、この世界の男性たちと戦争を起こすことになりかねません。特にこの世界は、やばい思考の持ち主が多いみたいですから」
「戦争って、そんな大げさな……。いや、確かに大げさではないのかもしれないですね。あのくそ勇者や、くそ宰相の言動や行動を見ていたら、それもあり得ると思えます」
「わかればよろしい。ですが、彼らの顔色ばかりうかがってばかりではいけません。女性の騎士服を変えることに成功したのですから、メイド服改正も頑張っていきましょう!」
カナデは、ソフィアが言っていることは冗談かと笑いかけたが、よくよく考えてみると、ありそうな未来だと考え直した。
『結局、私 (たち)がこの世界の女性のために頑張っていく必要がある』
そして、二人は改めて、自分たちの決意を口にする。二人の声は見事にハモりを見せた。
「ええと、私が頑張るのは当たり前なのですが、ソフィアさんがこれからも、私に協力してくれるのですか?」
「協力するに決まっています。それとも、私が今のこの世界の女性の生活に満足しているとでも?」
「いえ、今の生活は、女性にとって、大変理不尽で不便な生活です」
「トントン」
二人の話は、扉をノックする音で中断された。
「ああ、忘れていましたが、メイド服を改正するにあたって、今回の助っ人を呼んでおきました」
「失礼します。エミリアです。ソフィアさんが呼んでいると聞きましたので。何か御用でしょうか?」
ソフィアの部屋に入ってきたのは、エミリアだった。以前、一度メイド服姿で再会したきり会っていなかったが、今日もまた、破廉恥極まりないメイド服を着用していた。
「よく来てくださいました。今回、私たちはメイド服の改正を行いたいと話し合っていたのです。それで、実際に着用している女性に話を伺いたくて。やはり、当時者の意見を聞くのが一番だと思いまして」
「はあ。わかりました」
エミリアは、ソフィアの言葉に驚きはしたものの、女性騎士服の改定の件があったので、すぐにソフィアが呼びだした理由を理解したようだ。騎士服の次は、自分たちの仕事着の改定を目指してくれると気づいたエミリアは、ソフィアたちに現状の不満をぶちまけた。
「ソフィア様がおっしゃる通り、私たちメイドたちは、自分たちの制服に対して、様々な点が気になって、集中して城の掃除などを行えない時もございます。まずは、このふんわりとしたスカートですが……」
カナデとソフィアは黙って、エミリアの言うことを聞いていた。ソフィアはどこからか取り出したメモ帳を開いて、必要事項をメモしていく。カナデもソフィアに習ってメモを取ろうとしたが、ソフィアに止められてしまい、仕方なく相槌を打ちながら話を聞くことにした。




