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異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました  作者: 折原さゆみ
第一章 異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました
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22覗きは犯罪のはずですが、そんなことは関係ないようです

 風呂場から出たカナデとソフィアは、脱衣所で身体や髪をタオルで拭いて、急いで下着を身につけ、服を着る。


「うらやましいです。私もそのような下着がいいのですが、どこで売っていたのですか。やはり、異世界特有のものでしょうか。」


「これは、もといた世界では普通ですよ。確かに、この世界では珍しいですね。」


 カナデが来ているのは、もといた世界ではごく一般的な下着だった。ブラにパンツ。これといって特徴があるわけでもない、ただの下着だ。しかし、ソフィアから見れば、違うようだ。


 ソフィアはすでに着替えが終わったようで、いつもの聖女服に戻っていた。白いロングスカートだが、足元が寒そうに見えるのは気のせいだろうか。いや、気のせいではない。どう考えても、これは男の趣味としか思えなかった。ロングスカートの太もも部分にチャイナ服のように大胆なスリットが入っている。股のぎりぎりまで入ったそのスリットからはすらりとした太ももが見えている。下手すると下着が見えてしまいそうだ。いや、そこまで入っているのに、見えないということは。



「紐パンですか。」


 異世界の恐ろしいところはそういうところだ。女性の服装のいたるところに大胆なエロが組み込まれている。


「ええと、この下着のことを言っているのですか。」


「そうですが、今はそんなことを話している場合ではなかったですね。」


 話している途中も、時折ドーンという爆発音が聞こえてくる。カナデも急いで服を身につけ、二人は急いで爆発音の正体を探るために走り出した。

 




「お前かよ。くそ男。いや、もしかしたらとは思っていたけど、やることが大胆すぎるだろ。」


 脱衣所を出ると、勇者ユーリが女性陣にコテンパンにやられているところだった。エミリアの長い魅力的な足がユーリの腹をげしげしとふみつけている。イザベラは腰に下げた剣を抜いてユーリに向けているし、ルーも耳をぴんと張り、尻尾を膨らませて威嚇している。シーラもニコニコしているが、怒りのオーラを全身にまとっている。ちょっとした修羅場となっていた。


「聖女様。オレは無実です。決して女湯を覗こうなどしていません。ただ、男湯で女湯を覗こうという不埒な輩を見つけたので、成敗しようとしたら、思いのほか、魔法の威力が強かったので……。」


 カナデとソフィアの姿を見つけたユーリは、カナデを無視して、ソフィアに言い訳のように言葉を連ねていく。その様子をじっと見つめるソフィアに表情はなく、いつもの天使のような笑みはどこにも見当たらなかった。


「いったい、どうしたらあんなでかい爆発音を発生させることができるのやら。」


「仕方ないだろう。女湯を覗くという、オレと同じ目的を持った奴がいたら、倒すに決まっているだろう。この素晴らしいハーレムを邪魔する奴に手加減はいらない。」


「つまり、あんたも女湯を覗きたかったということか。クズ男。」


 カナデが冷たい視線をユーリに送ると、自分がとんでもないことを暴露してしまったことに気付いたのか、顔を蒼白にさせていた。しかし、ユーリの言葉に女性陣の反応はカナデも予想していないものだった。




「覗きたいなんて……。ただ、やみくもに爆発させて、建物を破壊しようとしていたのではないのですね。」


「最初からそう言ってくれれば、お風呂に一緒に入ったのに。」


「わ、私の裸でよければいつでも見せてあげますよ。」


「ユーリ様のエッチ。」


『死ね。』


「いや、一つおかしなつぶやきが混じっているよね。誰だよ。カナデか。カナデしかいないよな。」


 女性陣は先ほどの殺気が嘘のように晴れて、今度はユーリにデレデレとくっつき始めた。両腕にエミリアとイザベラ、背中にルー、前からはシーラに抱き着かれていた。


「ええと、聖女様は加わらなくていいのですか。」


 あまりの光景にカナデはソフィアについ問いかけてしまった。カナデはユーリのハーレムメンバーではないので、ユーリを見ても、ただのくそ男だとしか思わないが、ソフィアは違う。れっきとした勇者討伐メンバーなのだ。とはいえ、カナデは気づいてしまった。カナデがつぶやいた言葉に重ねられたもう一つの声の正体を。



「なぜ、私があの低俗な輩の仲間に加わる必要があるのですか。」


 宿に着いてからのソフィアの行動はどこかおかしい。ところどころで、ユーリに対しての嫌悪が現れている。しかし、それはおかしなことだ。心の中ではどう思っていようが、異世界のハーレム攻撃には勝てるはずがない。そこで考えられるのは一つだ。カナデはそこまで考えたが……。




「そこまでにしてあげましょう。ユーリ様が気を失ってしまったわよ。」


 突然の女性陣からの抱擁にユーリは鼻血を出して、その場で気絶していた。目は白目をむいて、赤い血がだらりと鼻から出ている図は、滑稽以外の何物でもないが、女性陣にはそうは見えていないようだ。慌てて、ユーリから離れてどうしようかとおろおろしていた。


『どう、どうしたら。』


 四人の声が重なり、暗い雰囲気に包まれるが、ソフィアの一言ですぐに吹き飛ばされた。


「まずは、ユーリ様を部屋へ運びましょう。今日はもう、これでお開き。ユーリ様が心配でしょうけど、今はそっと一人にしてあげましょう。」



いつの間にか、いつものソフィアに戻っていた。聖女が発した言葉には、暗い雰囲気を取り除く効果があるらしい。すうとその場の空気が澄んでいく。


「では、私がユーリ様を部屋までお運びしましょう。」


一番体格が良い、イザベラがユーリを抱えて、そのあとを女性陣が歩いていく。カナデとソフィアも後に続いていく。





「お、おれたちのこと、わすれられていないか。」


 脱衣所の前では、ユーリが懲らしめた、女湯をのぞこうとした不届き物が、縄で後ろ手に縛られて床に転がっていた。その数は三人。哀れな男が三人横たわっていた。そして、壁にはいたるところに大きな亀裂が入り、今にも壁が壊れて外が見えそうなひどい状況となっていた。


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