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異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました  作者: 折原さゆみ
第一章 異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました
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21旅の道中は問題だらけです②~温泉~

「わーい。温泉なんて久しぶりです。」


「私は、温泉に入るのは初めてです。」


 脱衣所でさっそく服を脱ぎだす女性陣。カナデはその様子をじっと見ていた。じっと見られていることに気付かない女性陣はそのまま風呂場に入っていく。



「やはり、か。」


 見つめていたのは、彼女たち一人一人の身体だった。カナデが男性だったら、痴漢者として逮捕されるレベルの視線だった。そして、カナデは身体だけで飽き足らず、彼女たちが脱いだ服にも視線を移した。


「ここも予想通り。」


 はあとため息をついて、カナデも服を脱いで風呂場に急いだ。


「問題は山積み。どこから解決していったらいいものか。」





「み、みえん……。これは不便だ。」


 風呂場に入り、シャワーを浴びて身体を先に洗ってしまおうと、シャワーが取り付けられているシャワー台の前に立つ。そこには丁寧に木の桶が置かれていた。この世界はカナデの世界と同じ仕様のようで、コックをひねるとシャワーが出る仕組みだ。シャワーが出るということは、水道の設備があるということだが、そのような設備があるようには見えなかった。異世界物によくある、都合の良い設備というものだ。あとは、魔法が解決してくれる。この世界も同じだろう。異世界あるあるだと思い、深く考えないことにした。


 シャンプーやリンス、石鹸らしきものも親切に置いてあったので、ありがたく使わせてもらうことにした。ガシガシと頭を洗っていると、そばから声がした。


「イザベラさんって、胸が大きいですね。いいなあ。」


「シーラさんも大きいですよねえ。」


 うらやましそうな声を出しているのは、ルーとエミリアの二人だ。確かにと、頭を洗いながらも、カナデは二人の大きな胸について考える。二人とも、戦闘能力は高いが、戦っている最中、胸が不自然に大きく揺れていた。あれは、女性目線からすれば、相当痛いのではないのかと思っていたのだ。男性からしたら、申し分ない目の保養ということになるのだろうが。


「むにゅ。」


「ぎゃああああああああ。」


 二人のことに頭がいっぱいで、なおかつ頭を洗っている最中だったカナデは、突然、カナデに向かって伸びてきた手を振り払うことができなかった。なんと、何者かが、カナデの胸をもんできたのだ。不意のことで、大きな悲鳴を上げてしまった。


「でも、大きさでいえば、カナデさんも負けていませんよ。」


カナデの胸をもんできたのは、何とソフィアだった。後ろを振り向くと、無表情で胸をもんでいる聖女の姿があった。


「ああ、いいなあ。私も、カナデの胸をもむ。」


「もんでいいということなら、私はシーラとイザベラの方を。」


「ひゃああ。や、やめろ。」


「キャッ。や、めてください。」


「ふむ、こんなところでも異世界、二次元仕様が出てくるのか。」


 すでに二度、無遠慮に胸をもまれているカナデは、いまだにムニムニと胸を無心にもんでいるソフィアを気にしないことにした。二人の巨乳の娘の悲鳴について考察する。自分は色気の皆無な悲鳴、かたや、男が喜びそうなかわいい悲鳴。そして、この後の展開は……。


「聖女様、タオルをここに人数分、持ってこられますか。それか、目つぶしの術はできますか。」


 いきなりの質問にソフィアは首をかしげる。仕方ないと、カナデは戦闘態勢をとった。ここからは読者のサービスシーン、主人公の乱入イベントが待っている。なんとしても回避する必要がある。



「ああ、何をそんなに気にしているのかと思えば。大丈夫ですよ。勇者様はここに入ってこられません、私が排除の魔法を施しておきました。」


 聖女とは、人の心を読むことができるのだろうか。にっこりと物騒なことを言い放つソフィア。それでもカナデの胸をもみ続けているソフィアは、果たして本当に聖女なのか疑問に思ったカナデだが、なんとなく聞いてはいけない気がして、黙って胸をもまれ続けるのだった。


 ようやく、ソフィアから解放されて、カナデは泡を洗い流し、湯船につかることができた。すでにイザベラ、エミリア、シーラにルーが湯船につかってのんびりとリラックスしていた。カナデの後に、ソフィアも湯船に入ってきた。しばらく、誰もしゃべらず、ゆったりとそれぞれが温泉を満喫していた。




「ドンドン、ドン。」


「何か変な音がしませんか。」


 ルーが最初にあたりの異変に気が付く。ソフィアは笑ったままの顔を崩さない。その余裕の表情にカナデはあることが頭に浮かぶ。


「聖女様はもしかして……。」



「やばい音だな。急いで風呂からあがりましょう。誰かが侵入してきたのかもしれません。」


 イザベラがざぶんと湯船から上がり、皆に警戒するように促す。途端に他の女性陣も顔つきが変わり、急いで風呂場を後にした。その中で湯船に残ったのは、カナデとソフィアのみとなった。



「ええと、私たちも上がりましょうか。何かあったみたいですし。」


「いいえ、大丈夫ですよ、だって、せっかくの温泉、カナデさんはまだ満足していないでしょう。」


「いや、いいです。もう、十分に温まりましたから。」


 ソフィアの考えがわからなかった。いったい何を考えているのだろうか。難しい顔で考え込むカナデとは対照的に、ソフィアの顔を楽しそうだった。


「そうそう、私はカナデさんに聞きたいことがあったのです。だからこそ、この場を借りてお話ししたいと思ったのですが……。」




「ドーン。」


 先ほどの音よりもさらに大きな音がこの場に鳴り響く。さすがにこの音に入浴を中断せざるを得ないだろう。ソフィアもそう思ったのか。湯船から上がり、カナデにも上がるように促す。


「ちっ。」


 手を差し伸べる前に、聖女としての品格を疑うような舌打ちをしているのをカナデは見逃さなかった。しかし、そのしぐさは一瞬で、元の聖女の顔に戻っていた。


「仕方ないですね。上がりましょうか。」



「は、はあ。」


 そして、カナデはソフィアの後に従って、風呂場を後にした。その背中を見て、カナデはぞっとした。メガネがないとほとんど何も見えない度近眼の目にもはっきりと見えるほどの傷が、ソフィアの背中にあったのだ。おそらく、ソフィアのその傷と、カナデに話があるのは、関係があるのだろう。


気持ちがよかった湯船を一度振り返り、名残惜しそうに見つめたが、カナデはすぐに表情を引き締めて。風呂場を後にした。


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