嘘と詐欺のあとに 3
「―――ほら」
サムが、涙を零すミユキの背中を押す。
「ほら。―――行け」
背中を押されて、力を得て―――一歩、二歩。
肩越しに振り返って、微笑んだ。
「―――うん」
―――その時
「―――ユキッ!」
誰かの叫び声がして―――それよりも、早く。
振り向く―――眼を、見開く。
東洋人の小さな女の子。小さな、小さな―――あまりにも華奢な。
名前を呼ばれた少女の黒い髪がふわりと舞う。―――顔を上げて。
その大きな眼が捕える。―――迫り来る黒い鉄の塊を。
劈くクラクション。誰が息を吞む音。止まらない。止められない。何もかもが。
全てを振り払って駆け出した。
一瞬一瞬が鈍く動く。一歩一歩が終わりに近付く。
驚いたように硬直する少女。届け。届け。届け―――
―――届いた。
全力で突き飛ばす。少女が手にしていたぬいぐるみが舞い、少女は尻餅を着いた。―――それを視界の隅に捉えながらバランスを崩す。倒れ込みかけた瞬間、身体から鈍い音がして宙に放り出された。
視界いっぱいに飛び込んで来たのは―――空だった。
青くもない。黒くもない。ただ白い、明るい白と明るい灰色が織り成すグラデーション。
薄黒色のレンズも小さなファインダーもなにも通さず視たその白さ。
世界の持つ色の中のたった一色。
「―――ぁ、」
なにかを掴めた気がして―――微笑んで。
すとん、と、心が納得した。
「―――。」
嫌な音を立てて身体が地面に落下する。
そして、