表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/148

セイリオスの逃亡 25


 戻るか? ゆるやかに微笑ったまま、少女に問うた。―――その問いに、少女は首を横に振る。

「行くところが、あるから」

「―――そうか」

 止めることなく、踵を返した。

「じゃあ」

「うん」

 少女が進み。オリヴァーが進む。―――森の中と、外に向かって。

 歩く。歩く。―――歩き続ける。

 朝の森の中。誰かの忘れもののように、白い霧が微かに残る静寂を。

 あの日見た、あの霧の白い朝のように。

 静寂の中、空気に染み出すように聞こえ出した慟哭を―――心のすべてが叫ぶような泣き声の中を、ただひたすら、あの時の少女のように前だけ見据えて歩き続ける。

 静寂の森。

 ここは、静か。

 だからこそ誰の耳にも届かない。……それは、逃亡の先に少女が漸く自身に赦した、ほんの僅かな休息だったのかもしれない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ