そもそもこの作品のアマテラス様は見た目が……
「ローマンさん的にはヴィルヘルミナさんのお相手に加賀さんというのはどう思いますか?」
「急に現れたと思ったら、まさか君から私に恋愛絡みの話をされるとは」
フィッツガルド帝国の帝都のとある喫茶店にて。
休日なので趣味の喫茶店巡りをしていたら、何かミィナさんが同席してきて警戒心全開なローマンさん。
読者の多くは忘れているかもしれませんが、ローマンさんにとってアフロの呪いでミィナさんに惚れて婚約破棄やらかしたのは消し去りたい黒歴史なのです。
だから忘れずに時々弄ってやろうぜ!
「それにしてもヴィルヘルミナにカガトね。いいんじゃないかな」
「おや。意外な反応。元婚約者にどこの馬の骨とも知れない男が婿入りするのに複雑な心境とかは?」
「ないと言えば嘘になるけれど、実際カガトはヴィルヘルミナにぴったりだと思うよ。性格的にも政治的にも」
「政治的?」
むしろ政治的には馬の骨なカガトくんはダメなのではと思ってたので、はてと首を傾げるミィナさん。
ちなみに素性の分からない人を「馬の骨」と呼ぶのは、中国において役に立たないものの代名詞の一つが馬の骨であり、そこから「役に立たない者」さらに「素性のしれない者」と意味が変化していったそうです。
嘘だろカガトくんめっちゃ役に立つやん(なお本人のストレス
「インハルト家はグライオス陛下に真っ先に従ったこともあって、重臣中の重臣だからね。このままヴィルヘルミナが家督を継ぐのなら、下手に政治的能力や野心がある男を迎え入れるのは火種にしかならないよ」
「あー乗っ取られるってことですか」
「それもあるけれど、本人にその気がなくとも周囲がという可能性もあるしね。そういう意味でカガトは安全だろうし」
何せカガトくんは野心ゼロな小市民なので、偉くなりたいとかそういう成り上がり精神とは無縁です。
しかもこの国では厄介者の代名詞な魔術師なので、周囲も「恐、近寄らんとこ」となり利用される可能性も低いという何気に優良物件なのです。
「一応陛下から爵位も貰ってるしね。インハルト侯が健在な内に話を進めてしまえば、反対できる人間なんていないんじゃないかな」
「肝心のインハルトさんは認めるんですかそれ?」
「認めない方が傍から見て面白いことになりそうだなあ」
そう言うローマンさんですが、インハルト侯は顔は怖いけど実は柔軟な人なので、多分カガトくんのことも時間をかければ認めます。
というか自分の娘が側近に勝手に男付けてるのを問題視してない時点で、ある程度はもう認めています。
つまり「おまえにお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」ムーブはしてくれません。
それはそれでカガトくんは「油断させて始末する気なのでは?」とめっちゃ警戒しそうですが。
「しかし、そもそもあの二人自分の気持ちに気付いてるのかい?」
「カガトさんの方が面白いことになってるので今後動くかと」
「へえ。それは興味深い」
そしてカガトくんの暴走を「面白い」で済ませちゃうミィナさん。
実際はたから見てる分には面白いからね。仕方ないね。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「うちのお父さんお婿さん連れていっても会ってくれなさそう」
「流石に会うでしょう。というか普通に行けば普通に会うと何度も」
襲撃するたびに逃げられるのを根に持っているらしいアマテラス様と、襲撃するから逃げられるのだと呆れながら言うツクヨミ様。
ちなみにスサノオ様は娘が惚れた男を認めないどころか殺しにかかりました。
よく生きてたねオオクニヌシ様(別件で何度か死んでる
「まあ私も姉上が下手な男を連れてきたら殺しますが」
「真顔で何言ってんの」
普段から真顔でジョークを言うので、はたしてこれは本気なのかジョークなのかと悩むアマテラス様。
認めないのではなく殺すなあたり多分本気です。
「じゃあ私もツクヨミが下手な女を連れてきたら認めない!」
「ではトヨウケヒメと駆け落ちさせてもらいますね」
「トヨちゃんは渡さない!」
「そっちですか」
自分よりトヨウケヒメを優先され内心で凹むツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。