ウナギは食えないけどタレは好き
「ふっふっふ。上手いことウナギの蒲焼が流行ったおかげで一儲けできました」
「逞しいわねー」
メルディア王国の王宮の食堂にて。
最早王宮内フリーパスどころか食堂すら自由に使っちゃってるミィナさんと、呆れながらも話題のウナギの蒲焼を食べているオネエ。
ちなみに一時期ウナギの廃棄量が多いという報道がありましたが、ウナギの取扱量に対する廃棄量を見た廃棄率では0.2~0.3%とむしろ企業の努力がうかがえる数値だそうです。
というか廃棄率が高すぎたら普通に売る側が損します。
「でもそんなにウナギを売るだけで儲かるものなの? 相場が高くなったなんて話はあまり聞かないけど」
「そこはあまり。でも蒲焼のタレが売れるんですよねえ。真似して再現しようと思っても、結局日本から輸入した調味料がいるわけですし」
「えげつないわね」
新メニューを流行らせておきながらその要を押さえている独占商売。
でもそれはそれで再現しようとした異世界人と異世界の調味料で新たな魔改造蒲焼が誕生しそうです。
「それにウナギが売れるせいで密漁が増えて警備に人手がさかれてるのよね」
「えー。それは私は悪くないですよ。それに儲けるのにあからさまに違法な手段を使うのは三流です」
「あからさまて」
隠れてはやってるのかとつっこみそうになったけどやめておくオネエ。
ウェッターハーン商会は清く正しい真面目な会社です。
「船の上だと私や他の連中も慣れてなくて上手く動けないし。団長も酔っちゃうたちなのよねえ」
「それならカオルさんが適任なんじゃないですか?」
「その手があったわね」
ミィナさんがいらんこと言ったせいで、またしてもオネエの元でのバイトが決定した海神の加護を受けた海の戦士。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「戻り梅雨に梅雨明け宣言がなくてもやっとする」
「梅雨明け宣言自体はやってしまいましたからね」
最近晴れてたと思ったら雨降ってるけどこれは戻り梅雨なの? と悩むアマテラス様と、梅雨かどうかは別にどうでもいいツクヨミ様。
ちなみに梅雨明け日は九月ごろになってからしれっと変更されることがあります。
「ミズハッチなら分かるのでは?」
「アンタ太陽が今どれくらい自転してるか分かる?」
「……太陽って自転してたの?」
「そこからか」
ミズハノメ様に質問を質問で返されたけれど、意味が分からなくて再び聞き返すアマテラス様。
そりゃ太陽だって星なんだから自転くらいします。
「太陽の自転周期は約25日とされていますが、太陽は流体なため極点付近の回転は遅く約30日だったりと、緯度によって自転周期に差がありますね」
「何それ知らそん」
「それは私も知らなかったというか、何でこいつが知らなくてツクヨミが知ってるのよ」
「月は太陽の鏡ですから」
「凄い。何の理由にもなってない」
胸に手を当て自信満々に言うツクヨミ様と、ちょっとひいてるミズハノメ様。
やはりこの作品の月は太陽のストーカー……。
今日も高天原は平和です。