梅酒は元々は薬
「ふはははは! すっかり降られてしまったな!」
「いや待て、上がるな。そこを動くな」
夕方の安達家にて。
ちょっと暇つぶしとばかりにランニングしていたら、思いっきり雨に降られてびしょ濡れで帰宅したグライオスさんと、これ以上の被害の拡大を防ぐために急いでタオルを取りに行くリィンベルさん。
でもグライオスさんが犬みたいに体をふるわせたせいで、水滴が廊下にまで飛び散っています。
「俺は犬ではなく狼だ」
まだ言ってません。
「まったく子供でもあるまいに、濡れたまま家の中に上がろうとするでない」
「風呂場はすぐそこではないか」
「百歩譲っても着替えもないのに風呂に入った後どうするつもりじゃ」
「ふむ。さてはわしが全裸で動き回るのではないかと心配しているな。侮るなよ。腰にタオルを巻くに決まっているだろう!」
「そうか。侮っておったわ。おぬしの阿呆さ加減を」
何か胸張って言ってるグライオスさんに何かを諦めたリィンベルさん。
この家には思春期なエルテさんもいるので、もし仮に実行していたら普段ダメ人魚なフェリータさんからすらも制裁が入ります。
「ほれ。着替えなら持ってきておいてやるから、さっさと風呂に入ってくるのじゃな」
「おおすまぬな」
「靴下を脱げ!?」
せっかく体を拭いたのに、濡れた靴下で歩き回ろうとして止められるグライオスさん。
濡れた靴を乾かすために新聞紙を詰め込むときは、あらかじめドライヤーをあてて水分を飛ばしておくといいよ!
「全く男は幾つになっても子供じゃのう」
「あー油断した」
「おぬしもか」
ようやくグライオスさんへの対処が終わったと思ったら、追加で学校帰りのカガトくんが!
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「あめあめふれふれかあさんがー。じゃのめでおむかえうれしいな。……じゃのめって田んぼとかにある鳥よけの丸い奴だっけ?」
「ある意味合っていますが間違ってます」
しとしとと雨の降る庭を眺めながら歌ってたと思ったら、なんか妙なことを言い出したアマテラス様につっこむツクヨミ様。
鳥よけもってお母さんがお迎えに来るとはどんな状況でしょうか。
「蛇の目は丸い輪の形の模様の事ですが、童謡のあめふりで出てくる『じゃのめ』は蛇の目模様の傘のことですね」
「ああそっち。でもそんな高級傘持ってくるお母さん何者?」
「作曲されたのが大正時代ですからね。当時としては一般的な傘だったのでしょう。今は安価なビニール傘が普及して高級品扱いになっていますが」
つまり著作権は切れているので、アマテラス様が歌ってるのを垂れ流しても大丈夫です。
やったね。
「他にもおちょこの底の模様として描かれていることもありますね」
「おちょこ……そうだ今年も梅酒つける季節だし、つけてから一年じゃん」
「チッ思いだしましたか」
「舌打ち!?」
おちょこ→お酒→梅酒→梅雨は梅酒つける季節、と連想ゲームで思いだしたアマテラス様と、何故か舌打ちするツクヨミ様。
ちなみに一昨年につけた梅酒は、昨年も思いだしたアマテラス様により一ヶ月ほどでほぼ飲み干されました。
「私としてはもっと長く醸成してみたいのですよ。姉上一度思いだしたら全部飲むでしょう」
「えー一年でも十分美味しいじゃん。何年つけるつもりなの」
「手始めに十年ほど」
「手始めってなんだっけ?」
神様だからね。気が長いね。
アマテラス様やスサノオ様の性格を鑑みると、気が長いのはツクヨミ様だけな気もしますが。
「え? それ最終的に何年目指すつもりなの?」
「やはり五十年でしょうか」
「半世紀!?」
ちなみにいくら梅酒がお酒であり長持ちするとは言っても、作る時に瓶の消毒や梅の新鮮さなど清潔さに気を使わないと割とすぐ痛むので、長期間保存する前提で作るなら丁寧に作業することを心がけましょう。
今日も高天原は平和です。