母の日当日の宅配は混雑するのでGW中に贈った方が良し
「母の日にリィンベルさんに花でも送ろうと思うんだけど、何がいいと思う?」
「何気軽にチャレンジングな人生送ってんですか」
安達家のリビングにて。
リィンベルさんに花贈るなら何がいいかなあと聞くカガトくんと、その前にもっと気にするところがあるやろがと呆れるエルテさん。
ちなみに母の日といえばカーネーションが定番ですが、白いカーネーションは避けた方が無難です。
「え? 年齢をネタにされたら怒るのであって、純粋に敬ってたらセーフなんじゃないの?」
「それでも赤の他人にお母さん扱いされるのは微妙だと思いますけど」
「いや。俺にとってお母さんみたいだとかじゃなくて、この家のお母さん的な立場ってリィンベルさんじゃないの?」
「どちらかと言えば長老じゃないですか」
「何で家庭の話をしてるのに長老なんてポジションが出てくるの」
実際地元の森でもぶっちぎりで長老だったからね。仕方ないね。
「うーん。でもカガトさんが贈るのなら私も贈った方がいいですかね。何だかんだでお世話にはなってますし」
「エルテもリィンベルさんに魔術教わってるんだっけ。……もしや姉弟子?」
「なるほど。敬ってください」
「……姉者?」
「何で数ある呼称の中からそれ選んだんですか」
年下の女の子に敬えと言われ、悩んだ末に妙な呼び方が飛び出すカガトくん。
ちなみに母の日当日に二人でリィンベルさんに花束を贈ったところ、次の月の父の日が近付くにつれて期待の目で二人を見る元皇帝の姿が!
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「え? 何で白いカーネーションはダメなの?」
「ダメといいますか、避けた方がいいという程度ですね。母の日が始まったばかりの頃は、母親が健在な場合は赤いカーネーションを、既に亡くなっている場合は白いカーネーションを贈るという区別がされていたそうなので」
「つまりうちのお母さんには白いカーネーションを」
「一瞬納得しかけましたが母上に怒られる覚悟はおありですか」
説明を受けた上であえて白いカーネーションを贈ろうとするアマテラス様と、納得しかけたツクヨミ様。
実際イザナミ様死んでるからね。仕方ないね。
「でも何で白いカーネーションは死んだお母さんになの?」
「母の日が始まるきっかけとなった女性が、亡き母をしのんで彼女の好きだった白いカーネーションを飾ったからだとされていますね」
「ああ。例のアメリカの」
「それに白いカーネーションの花言葉には『私の愛は生きている』というものもあり、死が二人を別っても愛情は生きているという意味があります。なので亡き母をしのぶ花になったのではないでしょうか」
「じゃあやっぱりお母さん向けの花では?」
「いや……ですが……確かに……?」
イザナミ様が死んでるのに気軽に地上に出てくるせいでツクヨミ様すら混乱状態に。
というか元々イザナギ様が岩で塞がなかったらそのままの勢いで出てきそうだったので、黄泉との境界線ゆるすぎでは。
「ギリシャ神話の方はうっかり約束破っただけで連れ戻されたのに、お母さんアグレッシブすぎない?」
「まあ母上がその黄泉の支配者なわけですし」
むしろイザナギ様はよく逃げ切れたなという完全アウェイ。
ギリシャ神話のオルフェウスと死後の世界から妻をとり戻すという大まかな内容は同じなのに、この差は何なのか。
「被害規模では父上たちの方が上ですが、あちらのオルフェウスは八つ裂きにされて非業の死を遂げているので、悲劇としてはどっこいどっこいでは?」
「そんなどっこいどっこいやだ」
むしろイザナギ様たちは壮大な夫婦喧嘩という印象がでかすぎて悲劇感がない件。
今日も高天原は平和です。