カレーの付け合わせアンケートで第一位
「なんか違う」
「何故だ!?」
「ひぃっ!?」
大陸中央にあるドワーフ王国のとある飲食店にて。
渾身のカレーが「なんか違う」判定され頭を抱えてのけぞるジュウゾウさんと、その無駄なオーバーリアクションにドン引くアズサさん。
まだこの作品の世界観とキャラの奇行に慣れていないので手加減してあげてください。
「いや美味しいですよ!? 美味しいんですけど私にはお上品すぎるというか慣れてる味と違うというか」
「そりゃアズサさんが慣れているのは市販のルーで作った一般家庭のカレーでしょうからね」
そう言いながらちゃっかり自分もカレー食ってるローマンさん。
アズサさんのためという大義名分背負ってドワーフ王国まで同行していますが、ぶっちゃけジュウゾウさんの料理が食いたいだけだとは皇帝陛下には気付かれていませんがヴィルヘルミナさんにはバレています。
「というか私はいつになったら帰れるのさ?」
「もうしばしお待ちを。今新大陸に残っていた調査員を徐々に撤退させていますので」
「何で?」
「アズサさんについてかの王と交渉するということは、こちらがアズサさんを発見したこともバレますからね。あちらが強硬手段に出た場合に備えてのことです」
「なんか大事になってる!?」
自分のせいでなんか政情がきな臭いことになってることに驚くアズサさん。
でも最初から全力でめんどくさい立場なのがアズサさんなので今更です。
「そんなことよりカレーに福神漬けをつけるようになったんですね」
「そんなことより!?」
自分のせいでなんか大事になってるのが福神漬けに押しのけられたことに衝撃を受けるアズサさん。
でもローマンさんもどうでもいいと思っているわけではなく、実質休憩中なのであまり仕事について考えたくないだけです。
「ええ。ミィナさんが仕入れてくれると言うのでお言葉に甘えて。カレーと言えば福神漬けですからね」
「日本に居た時から疑問だったのですが、別に福神漬けなくてもよくないですか?」
「何を言ってるんだいローマン!? カレーに福神漬けはパンにバターを塗るくらい当たり前のことだろう!?」
別に福神漬けいらねえというローマンさんに反応して厨房から飛び出してくるデンケンさん。
どうやら料理を幾つか担当させてもらえるくらい地味に成長しているようです。
「私もあまり好きじゃないです」
「そんなアズサさんまで!?」
「え? 私は好きだけどね福神漬け。酸味がカレーと合わないかい?」
デンケンさんに続きバーラさんが賛に回り異世界人の間でも賛否が分かれるカレーの福神漬け。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「そういえば福神漬けってどこからわいてきたの?」
「質問は明瞭にしないと誤解されますよ」
「カレーってインドの物だから元々福神漬けとか関係なかっただろうに何でつけるようになったの?」というアマテラス様の疑問を、きっちり理解しつつも注意はするツクヨミ様。
ちなみにインド料理にはチャツネというソースのような調味料がそえられるのが定番だそうです。
「元は日本のカレーにもチャツネがそえられていたそうですが、あるときとある船舶でチャツネを切らしたので、料理人が代わりに福神漬けをそえたのが始まりだとされていますね」
「何でカレーの逸話って船関連が多いの?」
「ちなみにドライカレーを考案した料理人がいたのと同じ船です」
「何だその船」
何なんでしょうね。
ちなみに今ではカレーにそえられてる時くらいしか見かけない福神漬けですが、元は当然カレーとは関係ない漬物であり単品で食べられることもありました。
日露戦争などでは兵士への携帯食として支給され、ご飯に混ぜて食べたりしていたそうです。
「つまり福神漬けは漬物だった?」
「つまりも何もどう見ても漬物でしょう」
「いや福神漬けは福神漬けという存在でもうオンリーワンというか、カレーと一緒以外の所が想像つかないというか」
「お茶漬けに入れたりもするらしいですよ」
「それ絶対美味しいやつじゃんトヨちゃーん!」
即座に前言を撤回しトヨウケヒメ様に福神漬けのお茶漬けを頼むアマテラス様。
今日も高天原は平和です。