海外でも結構ある料理の名前論争
「なんだか知らない間に新大陸の困った王様をとっちめるための鉄砲玉にされそうなんだけど」
「適役では?」
大陸南部のアルジェント公国のとある街にて。
知らない間にリーサルウェポンと化していたことを愚痴るオネエと、むしろそれ以外の何なんだと首を傾げるカオルさん。
隣ではオネエ特製海鮮カレー炒飯を作ってもらったディレットさんが、リスみたいに頬膨らませながらかっくらっています。
「やけに肯定的じゃない。ほとんど騙されて新大陸まで行ったくせに」
「いやーあの王様実際ヤバいと思いますよ。自分の世界で生きてて言葉は通じるけど話が通じないタイプというか」
「なるほど。ストーカーになるタイプね」
「もうなってます」
世界を越えるストーカー。
これがストーカーではなく純愛なら映画とかになりそうですが、残念ながら現時点では誘拐犯と拉致被害者でしかありません。
「というかそれ言うためだけに来たんですか?」
「それもあるけど。ジュウゾウさん拘りのカレー粉のレシピができたからお土産に持ってきたのよ」
「ドライカレーにされてるやん!?」
「むぐ?」
以前市販品のカレーに勝手に敗北して勝手に落ち込んでいたジュウゾウさん渾身のスパイスが、カレーライスではなくカレー炒飯になっていることにつっこむカオルさん。
美味しいよねカレー炒飯。
「だって手早くできるし……って、ドライカレーってキーマカレー風のやつじゃないの? 挽肉主体のやつ」
「え? それはそれこそキーマカレーでは?」
「むぐ?」
カレー炒飯(ドライカレー)の認識についてすれ違いが発生しているオネエとカオルさんに、何が疑問なのか分からないけどとりあえず食べ続けるディレットさん。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「え? ドライカレーってこう挽肉とか野菜とかみじん切りになってるやつだよね」
「私もそう思っていましたが、カレー炒飯をドライカレーと呼ぶこともあるそうです」
「何で??」
自分の知っているドライカレーはドライカレーではなかったのかと不安を覚えるアマテラス様と、冷静に答えるツクヨミ様。
ちなみに前々回の話で「み○なのうたでやってたカレーだろうと思ったら肉じゃがだったぜ的な歌」のことですが、感想で指摘されて調べたところ「み○なのうた」ではなく「お○あさんといっしょ」でした。
お詫びして訂正しますが何でもはしません。
「ええ……カレー炒飯はカレー炒飯でしょ」
「しかし『ドライカレーの素』という名前でカレー炒飯用の調味料などが売られていますからね」
「何故に?」
私にも分からん。
ちなみにアマテラス様が言っているキーマカレー風のドライカレーですが、キーマカレーに似てはいますが日本で独自発展している例のアレです。
日本に展開しているインド料理店は日本人向けなだけあり柔軟なので、ドライカレーを普通に出している所もありますが。
「まあ誕生は恐らくキーマカレー風の物の方が先ですね。明治時代末期の船舶料理人が考案し全国に広まったそうです。料理人の間でもドライカレーと言えばそちらが主だそうですし」
「今回のは由来ハッキリしてるんだ」
「そんな由来がハッキリしてない料理が多いみたいな」
実際多い。
というか由来を調べようと思ったら「うちが元祖だ!」とか「うちが開発したんだ!」とか複数主張しててわけわかんない状態になってる場合もあります。
「あとカレー炒飯だけでなくカレーピラフにもドライカレーと使うこともあるようですね」
「日本人適当すぎか」
うん。
今日も高天原は平和です。