据え置き機は置き場に困るので携帯機が主流
「暇だ」
「またか」
とある自衛隊の駐屯地にて。
ベッドに横たわり目が死んでいる軽そうな男と、机に向かい何やら勉強中らしい真面目そうな男。
召喚返しで日本にやってきて、なんやかんやあって自衛隊に入った元騎士たちです。
「体力錬成でもしてきたらどうだ」
「もう行った。駐屯地から出られず景色も変わらないまま何時間も走ってられるか」
「まあ確かに走るには手狭だが」
何故軽そうな男が暇そうにしてるかというと、休日なのに外出できないからです。
自衛隊では有事に備え何名かは駐屯地に居なければならないため、休日でも駐屯地内に残っていなければならない居残り要員が発生するのです。
他にも災害派遣が必要になった際に迅速に対応するため、派遣部隊に組み込まれている隊員は数時間以内に駐屯地に戻ることのできる場所にいなければならなかったりと、休日でも割と行動は制限されます。
その手の任務にあてられていなくても、外泊するならどこに泊まるのかまで申請しなければならないという徹底ぶりです。
堂々と「彼女の家」と書く猛者も居ましたが。
「時間つぶしに漫画でも読んでみるか?」
「マンガ? あの絵本みたいなやつか?」
「確かに絵が主だが、中々考えさせられるものも多いぞ。先輩に面白いからと渡されたのだが、これは家族を殺された復讐のために戦う剣士の話だ」
「ほう。剣士だと」
剣士と言われて騎士としての血が騒いだのか、暇つぶしも兼ねて手渡された漫画を読み始める軽そうな男。
こうして外出できない上に暇すぎるせいで、自衛隊員の中にオタクが増えていくのです。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「え? 自衛隊員って三度の飯より体を鍛えるのが好きな脳筋集団じゃないの?」
「まあそういう人間も居ますが……」
アマテラス様の偏見に曖昧に返事を返すツクヨミ様。
いやマジで少しでも空き時間があればウェイトトレーニングとかやってる、キ○肉マンみたいなガタイの人がたまにいるんですよ。
「自衛隊に入るまでは運動をほとんどしていなかったような人間もいますからね。そういう人間たちを半年ほどで一人前とは言わずとも、半人前にまで叩きあげるのが新隊員教育なわけですが」
「大丈夫? それなんか変な強化とかされてない?」
変な強化されてないかと言われれば多分されてる自衛隊の新隊員教育。
ある意味一般常識が通じない理不尽な世界なので、新卒で来た子は社会復帰できるのかなあと軽く心配になるレベルです。
「え? そのまま自衛隊続ければいいんじゃないの?」
「いえ。幹部や曹クラスならまだしも、一番下の士のレベルだと結構な割合がやめていきますよ。といいますか、軍隊の類は通常ピラミッド型の構造になるので、下っ端は大量に次が入っては辞めていっての入れ替わりで維持していて、上にあがるのは一部なのが普通です」
「あー。そういえば数年バイト感覚で自衛隊に行くだけで凄いお金貯まるとか聞いたような」
実際駐屯地内にいると住居はあるし飯は出てくるしでお金を使わなくてすむので、貯めようと思えば数年で数百万くらい普通に貯まります。
それを元手にして夢に挑戦するという人もいるそうです。
「自衛隊は比較的残る人間が多いので、組織としては歪なものになっていますね。それでもなお隊員が足りないので、入隊試験の年齢制限を上げたりと高齢化が進んでいますが」
「やだ自衛隊の高齢化とか笑えない」
少子高齢化社会だからね。仕方ないね。
ちなみに年齢制限が上がった結果32歳まで入隊できるようになったので、興味がある人はお近くの地方協力本部に気軽に聞いてみよう!
気軽に聞いたが最後、凄い勢いで勧誘されることになるぞ!
「どんだけ人手足りないの」
「まあ担当の人間にとってはそれが仕事ですし」
資料請求しただけなのに家に直接訪問された時は軽く恐怖を感じました。
今日も高天原は平和です。