チョコ戦争
「渡航制限されてるということは、バレンタインに有名パティシエが日本に来られないんじゃあ?」
「いきなり絶望的な顔をしたと思ったら何を言っとるんじゃ」
安達家のリビングにて。
学校から帰り炬燵でココア飲んでたと思ったら何か言い出したエルテさんと、クールにつっこみを入れるリィンベルさん。
リィンベルさんは動物性由来のもの以外は割と何でも食べますが、特別お菓子が好きなわけでもないのです。
「自分への……ご褒美!」
「以前から思っておったが、おぬし何でその若さでそんなす……老成しとるんじゃ」
すれてると言いかけてやめるリィンベルさん。
老成もどうなんだと思われそうですが、大人びているという意味もあるので中学生で背伸びしたいお年頃なエルテさん的にはセーフです。多分。
「大体アダチには手作りの物を贈っておるじゃろうに」
「だって一回市販のものをあげたことあるんですけど、ちょっとしょんぼりしてたから手作りの方がいいのかなって」
「あの親馬鹿は……」
安達くん親馬鹿どころか家族馬鹿だからね。仕方ないね。
その上あのグラウゼさんすら絆されて「貴様を家族に囲ませて大往生させてやる!」と宣言するのだから結構な人たらしです。
「それに私ってお小遣いもらってる立場ですし、そのお小遣いで買うだけだと私の労力がプラスされないというか、足りないかなあと」
「では自分用に買うのは?」
「自分へのご褒美です」
「ううん?」
一つずつ聞くと間違ってないのに、合わせて考えると何かが間違っている気がして唸るリィンベルさん。
まあ贈り物は贈る方と贈られる方の立場と思いも大切ですよね。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「バレンタインに海外から有名パティシエとか来るの?」
「来ますよ。人が多い都市部のデパート等ではイベントで呼ぶことも多いそうですね」
実は日本がチョコ祭りと化していることが世界に漏れ「この俺のチョコを食わずしてチョコ祭りだと!?」と海外からもパティシエが来日し鎬を削る激戦区と化しているバレンタイン。
一周回って健全な祭りと化しています。
……一周回ってるかコレ?
「当然チョコ好きが参加するので、贈答用ではなく自分用に買う人が多いそうですね」
「バレンタインの原型なくなってない?」
日本人割と勢いと雰囲気で行動するからね。仕方ないね。
今回は外国人も乗っかってますが。
「まあ妻がチョコ好きだからと、場違いなのを気にしながら買いに来るおじさんも居るそうですし」
「何それかわいい」
もっとも最近では「男がチョコ好きで何が悪い!」と堂々とバレンタインにチョコを買いに来る男性も増えているそうです。
もうこれ本当にただのチョコ祭りだな。
「でも結局今のご時世ではその手のイベントやり辛いよね」
「そこまで考えて通販での販売を拡大している所もあるそうですね」
「……よし!」
「ものによっては本当に高いので、よく見てから買ってくださいね」
こうなったら止まらないので、せめて値段を確認するように言うツクヨミ様。
調子に乗ると諭吉さんが気軽に旅立っていくので、皆さんもバレンタインのチョコ祭りに参加するなら気を付けましょう。
今日も高天原は平和です。