神様系配信者
「アズサさん。何か生活するうえで不都合なことなどはありませんか」
「いえ……大丈夫ですけど」
フィッツガルドの帝都にて。
先日無事保護されたアズサさんの様子を見に来たローマンさんと、そのローマンさんをちょっと警戒してるアズサさん。
召喚された経緯が経緯だからね。仕方ないね。
ローマンさんも自分が警戒される理由は分かっているのか、ため息をつくと無駄に芝居がかった動作で髪をかきあげながら言葉を続けます。
多分それ逆効果だと思うんですけど。
「すいません。同性にしか話せないことというのもあるでしょう。しかし私は日本で暮らしていた経験があるので、貴方のいうことを理解しやすいだろうという判断もありまして」
「え? 日本にいたんですか?」
「ええ。事故のようなものでしたが、日本での経験は得難いものであり、私を大きく成長させてくれました」
「へえー」
日本に居たと聞いただけで少しガード下げちゃうチョロいアズサさん。
もっとも異世界で知り合いもいない状況となれば、少しでも共通点のある人間に心を許してしまうのは仕方ないのかもしれません。
つまりローマンさんは爆発する。
「そういうわけで。何か欲しいものがあれば言ってくだされば、私の方で手配することもできます」
「え? そんな簡単に日本と物のやり取りできるんですか?」
「本当は難しいのですが、ちょっとした伝手がありまして。……内緒ですよ?」
そう言って人差し指を唇に当てておどけてみせるローマンさんに「やっぱりこの人いい人だ」と完全に懐柔されちゃってるアズサさん。
しかしアズサさんが日本に帰った後、ローマンさんが国会中に召喚返しされてやらかしてる動画を見ることとなり、その株は暴落します。
ざまぁ。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「消しても増えるからネットって恐いね」
「だから迂闊な書き込みや投稿はしないでくださいね」
未だにネット上に存在するローマンさんの醜態に恐れを抱くアマテラス様と、オモイカネ様のリテラシー教育がなかったらやらかしてたんだろうなこの姉と思ってるツクヨミ様。
なおネット上の画像や動画などを勝手に拡散するのは、著作権などに触れるので気を付けましょう。
作者も自作の小説が海外で勝手に翻訳されて公開されているのを発見し、ぶったまげたことがあります。
なんで!
よりによって!
書き始めたばかりの頃の黒歴史が海外に!?
「でも私たち既に黒歴史含めて公開されちゃってない?」
「それは……そうですが」
弟の横暴に疲れて引き籠もったのが延々と語り継がれている主神。
後世の箔付けのために子孫が増えまくって、下半身がさらにゆるいことになっちゃったゼウス様よりは多分マシだから……。
「いっそのこと開き直って動画配信とかしたら信仰も増えるんじゃ……」
「間違いなくダメな方向にいくからやめてください」
アマテラス様の実態がバレたら威厳も何もあったものじゃねえと止めるツクヨミ様。
しかし別の意味で信者は増えそうです。はたして萌えは信仰に分類されるのか。
今日も高天原は平和です。