TKG
「あー卵かけご飯とお味噌汁最高」
「異世界に来た日本人の方々は大体同じこと言ってますが、白米がないと死ぬんですか?」
「一部は死ぬかもしれませんね」
ドワーフ王国のとある料理店にて。
久しぶりのふんわりあったかご飯に感動する最近保護されたばかりなアズサさん。
そしてそれを見て呆れるローマンさんと、ちょっと投げやりに肯定するジュウゾウさん。
まあ最近は朝ごはんに限定すればパン派の方が多いという調査結果もありますし。
なおそのパンも実は日本独特な模様。
「というか何故わざわざうちの店に?」
「いえ。保護したのはいいのですが、念のためしばらくは検査などをしてもらって、すぐに日本に帰すというわけにはいかないので。せめて食事くらいは慣れたものの方がいいかなと」
「あー」
カガトくんお手製の転移門は病原菌などもシャットアウトする科学に喧嘩売ってる代物ですが、念を入れるに越したことはないのです。
あと異世界の文明レベルで生卵は大丈夫なのかというつっこみがはるか昔に来ましたが、それも多分魔法的なファンタジーでなんとかなってます。
某映画で主人公が生卵を一気飲みするシーンで世界が「なんて覚悟だ!」と戦慄していたのに、日本人は「醤油とご飯も欲しいな」とズレていたのはあまりにも有名。
「白菜のおひたしも懐かしい……」
「まだお若いのに珍しいものがお好きですね」
「ずっと肉ばかり食べてたので」
「ああ……」
真顔で言うアズサさんに理由を察するジュウゾウさん。
そしてアズサさんの様子から「俺たちだって肉以外も食う」というマカミさんの証言がますます怪しくなりました。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「年明けうどんとか何それ知らそん」
「そりゃ最近始まったばかりのものですからね」
年越しそばならぬ年明けうどんの存在を知り口の中がうどんになってるアマテラス様と、寒いせいかぶちが懐に入ってきているツクヨミ様。
もはやぶちが完全にツクヨミ様のペットと化しています。
「日本での小麦粉を使った麺類の消費量が落ち込んでいるので、消費拡大のために2009年に始まったそうですよ」
「つまりバレンタインやハロウィンと同類」
「いえ。それらのようなバックボーンとなる行事もない完全な新興イベントです」
「え……? 香川県民って年明けにうどん食べないの!?」
「むしろ年中食べてるのでは?」
「なるほど」
なお本当に香川には年明けにうどんを食べる行事はなかったそうです。
「まあそれでも参加企業は増えているし、売り上げが伸びたという企業も多いので、一定の効果はあるようですね」
「そりゃ増えることはあっても減ることはないだろうけど」
その成果か、2021年には某メーカーから年明けうどん仕様のカップ麺も売り出されたりしています。
年明けうどんの定義は一月十五日までに食べることも含まれるそうなので、気になる人は買ってみましょう。
「ちなみに定義としては純白のうどんに新春を祝うための紅色の具材を用いることだそうです」
「じゃあ餅入れちゃだめなの?」
「いえ別にいいのでは?」
その後トヨウケヒメ様にうどんを作ってもらったものの、調子に乗って餅を入れすぎてうどん食ってるのか雑煮食ってるのか分からない状態になっているアマテラス様の姿が!
今日も高天原は平和です。