千歳飴の味とか覚えてない
「やっぱり子供ができたら日本で産みたいかなあ」
「何故だアサヒ!?」
ガルディア王国の王宮にて。
書類をさばきながらぼそりと呟いた王妃様の言葉に、地獄耳で反応して絶叫する王様。
王様はヘタ……愛妻家なので、長期間王妃様と離れるのは嫌なのです。
「いや何故って。流石に私も不安だし、向こうの方が安全に産まれる可能性高いだろうしなあ」
医療や衛生の発展と乳児や新生児の死亡率というのは残酷なほど関係があり、日本の昭和初期頃でも10人に1人が産まれて一年以内に亡くなっていたとされています。
しかしその後乳児の死亡率は緩やかに下降を続け、2018年には産まれて一年以内に亡くなる子供は1111人に1人。
世界で一番死亡率が低く、最も赤ちゃんが安全に生まれる国だとされています。
「まあそんなわけで産むなら日本の方がいいんだが」
「むむむ。いやだが待て。こちとら王族だぞ。専門のチームは作るし神官による回復系魔術のサポートもバッチリだ! 少なくとも私が知る限り幼くして亡くなった王家の子供なぞいないぞ!」
「ほほう」
しかし王様による「ファンタジーなめんな地球」が発動。
魔法という割と何でもありの力により、地球で積み重ねられてきたデータが無効化されました。
「確かに魔法ならちょっとやそっとくらいなら蘇生させそうだしなあ」
「もちろんだ。むしろ死なせたら私が殺す!」
「やっぱ日本で産むわ」
「何故だ!?」
せっかく王妃様が納得しかけてたのに自分で台無しにする王様。
神官たちにプレッシャーかけすぎたら可哀想だからね。仕方ないね。
「まあそもそも妊娠してないから時期尚早な話だけどな」
「……そうだな!」
「いや待て。何故担ぎ上げる!?」
さらっと王妃様を肩に乗せて運びながら、絶対王政で時期を早めようとする王様。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「姉貴ー。土産に千歳飴持ってきたぞ」
「その喧嘩買った」
やってくるなり七五三の代名詞なお菓子を差し出すスサノオ様と、差し出された飴をバリムシャァッと噛み砕きながらファイティングポーズをとるアマテラス様。
そして「食べることは食べるんですね」とつっこむツクヨミ様。
中々にカオスな光景です。
「……いや、ノリで持ってきたけど予想以上に似合い過ぎないか?」
「急に冷静になるな!?」
そして自分でやっといてアマテラス様のロリっぷりにひくスサノオ様。
作者としては最初はアマテラス様は大人の女性として書いてたんだけどね。
読者から「ロリとしか思えない」と言われて「中学生くらいかなあ」と軌道修正してね。
でも今完全に幼女だよね。
「七五三かあ。でも今って子供の死亡率下がってるし、七歳は別に区切りにならなさそうだよね」
「それでも親としては嬉しいものなのではないでしょうか」
「おう。そうだな」
ツクヨミ様の言葉に賛同しながら自分も千歳飴をボキガリィッと噛み砕く、マザコンシスコンな上に娘コンなスサノオ様。
娘婿のオオクニヌシ様を嫌がらせで殺しかけたのは伊達ではありません。
「子供は亡くなりやすいからこそ『七歳までは神のうち』という言葉もありますが、その言葉通りに子供の内だけ携わる神事というものもありますからね。習慣としては残り続けるのではないでしょうか」
「あー子供だけ神輿に乗っていいお祭りとかもあるんだっけ」
「最近は神輿に乗るのが禁止されてる地域もあるらしいが、盛り上がりにかけるよなあ。……いや俺は神だから別に乗ってもいいのでは?」
「他の神の神輿にまで乗り込むつもりですか貴方は」
なんか思いついちゃったスサノオ様と、その時は全力で止めようと決意するツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。