たまに本編書くよりタイトル考える時間の方が長くなる
「体育祭をやろうと思うんです」
「いきなりどうしたの」
ガルディア王国とメルディア王国の国境にある学校にて。
少し顔色が悪いのに吹っ切れた顔をしたちみっこ先生ことリョウコさんの言葉に、差し入れのタルトを切り分けながら聞き返すオネエ。
ちなみにタルトと言えば一般的には皿状の洋菓子を連想するでしょうが、愛媛県松山市周辺では餡子をロールケーキみたいに包んだ郷土菓子を指していたりします。
「知ってどうすんだそんなローカル情報」と思うかもしれませんが、実は「タルト」の名称は愛媛県菓子工業組合が商標登録をしており、他はタルトを名乗ることはできません。
つまり日本における正統なタルトは謎の餡子ロールケーキだったんだよ!
「いえ。なんかもう貴族派と庶民派の対立を抑えるのが面倒になってきたんで、ここらで意図的に爆発させようかなと」
「大丈夫? ちゃんと寝てる?」
もうヤケクソとしか思えないリョウコさんの発言に、これはいよいよ強制的に休みをとらせるべきかと考えるオネエ。
真面目過ぎる人は極端から極端に走るから……。
「何も考えなしに言ってるわけじゃないんですよ。もう仲良しこよしは諦めたんで、せめて健全に争ってほしいというだけで」
「だから体育祭? 大人しくルールに従うとは思えないんだけど」
今更教師のいう事を聞いてくれるなら、ここまで話は拗れていません。
間違いなくバレない範囲で仁義なき戦いが勃発します。
「まあそこも予想範囲内なんで」
「予想しちゃったのね」
「もういっそ当日に王様と王子様呼びつけて見学させて見せしめにしてやろうかと」
「あらやだ。えげつないこと言い出したわこの子」
学生の争いの場に王族召喚。
下手を打てば今後の進路に多大な影響を与える事間違いなしです。
「まあ言ってはみたけど都合よく呼び出せないですよね」
「いやイケるんじゃないかしら」
結構面白そうだと思ったので、後日話を通したみたオネエ。
すると両国ノリノリで参加を決め、裏で何やってるか把握するための人員まで派遣されることに。
当然そんな状況下で無茶する人間はおらず、体育祭は終始健全なまま終了しました。
「あれ? これ成功だけど失敗では?」
「ふむ。監視をあからさまにしすぎたか」
「今度からは意図的に隙を作りましょうか」
以上。爆発を期待したのに爆発しなかったのを残念がる大人げない大人たちの感想。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「暑いけどエアコンつけるほどじゃない微妙な暑さで暑い」
「要するに暑いんですね」
窓を全開にし畳の上で転がってるアマテラス様と、相変わらずピシッと背筋が伸びているツクヨミ様。
だらしない姿勢は楽なように思えますが、実は猫背になると前に出た頭の重量が首にかかるので、背筋をまっすぐ伸ばしていた方が疲れにくかったりします。
「二十四節気で言えば寒露で、朝晩が冷え込み始めるものの空気が澄んで過ごしやすい時期なのですが」
「全然過ごしやすくないよう」
「後は栗や柿などの季節でしょうか」
「栗拾いに行こう」
「何故食べ物が絡むと行動力が上がるんですか」
食欲の秋が発動し立ち上がるアマテラス様と呆れるツクヨミ様。
栗美味しいからね。仕方ないね。
「行くのは構いませんが、暑いという事はまだマダニの活動時期なのですから気を付けてくださいね」
「えー。マダニって危ないって聞くけど、具体的にどう危ないの」
「死亡する可能性もある様々な感染症の原因になる上に、一度噛みついたのを下手に自力で除去すると体の一部などが食い込んだまま残るので、医療機関で取ってもらわないと後々炎症や病気になったりします」
「何それ恐い」
他にも食いついてるのを摘まんだりしたら、スポイトみたいにマダニの体内の色んなもんがブシュッとこちらの体内に噴出されたりするので、噛みつかれたのに気付いたらマジで下手に触らず病院に行きましょう。
今日も高天原は平和です。