最近はイギリスでもカボチャが増えている
「今日は焼き肉食べ放題だ」
「あ、はい」
安達家のリビングにて。
帰宅するなり山盛りの肉を片手に待ち受けていたマカミさんに、呆気に取られとりあえず返事だけしとくカガトくん。
輪切りにした玉ねぎが焼いている内に分裂していくのは果たして正しい焼き方なのか。
「え、晩御飯の時間まだですよね」
「俺は今すぐ始めてもいいのだが。リィンベルに待てと言われている」
「……」
それまんま「待て」ですやんとは空気を読んで言わないカガトくん。
でも肉を構えたマカミさんのしっぽは今か今かとぶんぶんと振られまくっています。
「俺は犬ではなく狼だ」
まだ言ってません。
「でも何でいきなり大量の肉を?」
「ローマンたちが新大陸に着いたそうなのでな。俺も調査隊に加わるために向こうに戻るから食いだめだ」
「ああ。問題起きたみたいでしたけど無事に着いたんですね」
実はグラウゼさんから「転移魔術の機能をオミットしたせいで人間が海に叩き込まれてたぞ」と報告され、頭抱えてたカガトくん。
そこで「俺休み中だし勝手にやった向こうが悪い」と開き直れないところが安定の小心者です。
「現地の王の話からして、俺が居た大陸なのはほぼ間違いないだろう。なるべく早くアズサを見つけ出して日本に帰してやりたいところだ」
「ああ。例の栄養の偏りが懸念されてる」
何か同年代の少年に変な覚え方されてる水留アズサさん(15歳)。
え? アズサさん(15歳)が登場してから何年も経ってるって?
……気のせいだ!
「あれ? でも陸に上がってからもアンカー持ち歩けば、転移魔術で肉の補給はできるんじゃないですか?」
「……一刻も早くローマンに連絡を!」
「するから放して!?」
肉をテーブルに置くと、カガトくんの肩を掴み激しくシェイキングするマカミさん。
その後突然魔術使った連絡が入ったと思ったら「肉を用意しておけ。山盛りだ!」と言われたものの、大体予想してたので抜かりなく準備していたローマンさんの姿が!
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「今からハロウィンの話とかフェアが始まってるのフライングしすぎでは?」
「十月全体をハロウィンの月として扱っているのも見かけますね。まあ何日がハロウィンなのか把握してない人もいるみたいなので大雑把でもいいのでは」
なんか十月入った瞬間から姿を見せ始めたカボチャに違和感を覚えるアマテラス様と、日本人がてきとーにお祝い始めるのはいつものことなのであまり気にしていないツクヨミ様。
こまけぇこたぁいいからお菓子食べようぜ!
「お菓子かあ。そういえばカボチャになったのはアメリカ大陸に渡ってからで元々はカブのランプだったらしいけど、お菓子もカボチャ関係なかったの?」
「ないですよ。イギリスでは普通の飴やチョコを配るそうですね。ハロウィンが近付くと子供たちに配るために大量のお菓子が山積みで売られるようになるとか」
「えーカブのお菓子とかないの?」
「逆に食べたいですかそれ?」
そういうツクヨミ様ですが、調べたらレシピが出てくるカブを使ったお菓子の数々。
いやキノコタケノコに次ぐ第三勢力の切り株のことではなく。
「え? カブのカップケーキ?」
「合うのでしょうか。いやレシピ元を考えれば案外……?」
調べてみたら某お菓子会社のホームページにレシピが乗っていて、判断に迷うアマテラス様とツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。