そもそも全裸にはなってねえ
大海原をかける大型船。
新大陸を目指してその船が旅立ってから……えーと、何か月だっけ?
……とにかく船は新大陸に到着した!
大して重要でもない(面倒くさい)経緯は、詳しくやらずに省いちゃうのが連載を続けるコツだってばっちゃが言ってた!
「いや、意外に歓迎されたというか」
「正体不明だからといきなり武器持って追いかけまわされる方がおかしいでしょう」
新大陸で発見した港から少し離れた沖合にて。
いきなり接岸するのもアレかと小舟で接近したところ、街の代表と思われる人から「うっひゃー遠いところからよくお出でくださったなあ。ちょっとお偉いさんに話通すんで待っとき」と言われ待機中なカオルさんとローマンさん。
猫耳侍たちもようやく一段落ついたかと、少し気が抜け気味です。
もっとも警戒はしているらしく、猫耳がピンと張っており周囲の音を逃さず拾っているようですが。
「友好的なのはある程度予想していましたが、ここがマカミさんが居た草原に近い国だとしたら、少し懸念事項がありますね」
「それ俺が聞いてもいい話?」
「貴方にも交渉には参加してもらうので聞いてもらわないと困る話です」
「むしろ聞きたくない」
海での戦闘能力と人魚たちの監督役として買われての参加のはずが、なんかナチュラルに外交にも参加させられそうになってて泣きそうなカオルさん。
異世界召喚特典でどんな相手にも言葉が通じるだけで貴重な人材だからね。仕方ないね。
「懸念があたってたら日本政府に話を通さないといけなくなるんですよね」
「何で??」
異世界での外交に何故か世界の壁を飛び越えて自国政府が出てきて混乱するカオルさん。
はたしてローマンさんのいう懸念とは何なのか。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「やはり全裸で行った方が安全なのでは?」
「全裸から離れてください」
何故か全裸外交に全幅の信頼を寄せるアマテラス様と、冷静につっこむツクヨミ様。
初めて会う人が全裸だったら一般人は逃げるので気をつけましょう。
「つまりサルタヒコは一般人じゃなかった?」
「そもそも人ではありませんし、確かに懐の深い神だとは思いますが」
天地を照らしていたとされるので、アマテラス様がくる以前には太陽神として信仰されていたのではないかともされる何気に大物なサルタヒコ様。
アメノウズメ様が脱いだのも、アマテラス様と同じ太陽神だから同じ対応をしたのではないかという説もあったりします。
それだと太陽神がストリップ好きみたいですが深く気にしてはいけません。
ほら。北風と太陽な話もあるし。
「でも実際に会った瞬間ぶち殺しにくる民族っているの?」
「過去の外部との接触が悪いものだと十分ありえることですね。例えばインドには北センチネル島という先住民族が隔離された島があるのですが、上陸すると問答無用で殺されます」
「何それ恐い」
ギャグっぽく言ってますが、殺されたら遺体の回収すら諦めるレベルで敵対的なのでガチで近寄ったらあかん島です。
もっとも長い間外部との接触がなかったことによる感染症への低い耐性や、文化的な問題もあり、法律で半径5キロメートル以内に近寄ることすら禁止されていますが。
「お外恐い。やっぱり家でゴロゴロしてるのが一番だね」
「そうですねー」
それもどうなんだと思うものの、下手に好奇心に任せてうろつかれても困るので肯定しておくツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。