アマガエルにも毒がある
「これからは魔族もインテリジェンスによるアドバンスが必要だと思うのだ」
「何その意識高い系みたいな特に意味のない横文字」
フィッツガルドへの出張から帰ってくるなり何か言い出したグラウゼさんに、娘が娘だけあってたまにぶっ飛ぶなこの親父と思いながら返す魔王様。
日本語では微妙に言い表せない単語ならともかく、何故日本語に該当する言葉があるのに横文字にするのか。
「いやフィッツガルドを見ていて再確認したのだが、魔族というのは力を重視していて知性という武器を持つ者を軽んじすぎている。今後も争いが続くならともかく、人間との融和を始めた今となってはその価値観も変えていかなければならないだろう」
「サイクロプスあたりが間違いなく反発すると思うんやけど」
「そんなもの力でねじ伏せればいいだろう」
「十秒足らずで堂々と矛盾しやがりやがったこのおっさん」
最後にモノを言うのは力だからね。仕方ないね。
やはり暴力。暴力は(略
「まあ私は提案するだけだ。実行するかどうかは魔王様次第。いらぬ心配だとは思うが」
「ええー。私結構流されるタイプやで」
「ここぞという時には譲らないだろう。それに例えばそこのスケルトン。それなりに強いし頭も回るがスケルトンだからという理由で以前は軽んじられていたというのに、魔王様は重用しているだろう」
「え? そうなん? 普通に仕事はするし便利枠な骨かと」
「まあ私頭は回っても頭脳ありませんし」
驚く魔王様に向けて首を180度回し、カタカタと笑いながら言う普段はトラップ担当なスケルトンさん。
いきなり外交中の付き人命じられても難なくこなすナイス骸です。
「要は力関係なく仕事できるやつは評価しろってことやろ。当たり前やないんそれ」
「サイクロプスがそれをできると思うか」
「思わん。でも教育し直すんもめんどいし他の場所に引き抜く方が早ない?」
「魔王様がそう判断するならそれで構わないが……」
結果ますます脳筋化が進むサイクロプスさんの周囲。
あ、これアカンやつやと魔王様が気付いたものの、だからと言って力でいう事聞かせても方針を曲げそうにないので、痛い目見るまで放置することに。
今日も魔界は平和です。
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一方高天原。
「でーんでんむーしむしかーたつむりー。……そういえば紫陽花の下に死体埋めてたら花の色が変わってバレるって実際起きるものなのかな」
「そういえばで唐突な話題をふるにしても限度があるでしょう」
しとしとと雨の降る庭を眺めながら歌ってたと思ったら、いきなり物騒なことを言いだしたアマテラス様に風情も何もあったもんじゃねえとつっこむツクヨミ様。
カタツムリって子供の頃は平気で本体まで触ってたけど今思えば正気とは思えないよね。
なおカタツムリやナメクジのような陸生貝には寄生虫が居る可能性もあるので、触ったら念入りに石鹸で接触部を洗いましょう。
ガチで。
「種類にもよるでしょうが変わる可能性はありますよ。紫陽花は土壌によって色が変わりますし、人間の死体は腐敗すると酸性になりますから」
「その場合色は何から何に変わるの?」
「酸性が青でアルカリ性が赤なので、赤から青ですね」
「赤から青。よし覚えた」
「覚えて何に使うんですかそんな知識」
まさか近々死体を埋める予定があるのではと訝しむツクヨミ様。
というかそもそも紫陽花の下じゃなくて別の場所に死体埋めればいいよね☆
「じゃあ下に死体が埋まってる桜は養分吸って赤くなるっていうのは?」
「また定番を。桜の花の色には土壌の影響は少ないので、死体程度で変わる可能性は低いですね。むしろ気温による影響が大きいので仮に影響があっても誤差範囲でしょう」
「あーそういえば寒いと濃くなるとか聞いたような」
ちなみに一時期桜の花は受粉すると中心部分が赤くなるという情報がネットで広がりましたがデマだそうです
実際には老化現象によって赤くなるので、受粉に関係なく散る寸前には赤くなるとか。
「じゃあ死体よりアイ〇ノン埋めた方が赤くなる?」
「アイ〇ノン埋めても赤くなる前に溶けますよ」
一体桜を赤くするにはどれほどのアイ〇ノンが必要になるのか。
今日も高天原は平和です。