梅ジュースも好きだけどあまり売ってない
「この国は文官が多くて良いな」
「喧嘩売ってますか?」
フィッツガルド帝国の帝都のとある喫茶店にて。
吸血鬼なのに真昼間から紅茶片手に優雅にティータイムとしゃれこんでるグラウゼさんの発言に、元婚約者にこき使われてて笑顔でぶちギレ寸前なローマンさん。
一刻も早くホムラに逃げたいと思ってますが、そのホムラのヤヨイさんちは「うち政務に強い人材いないんだよね」とぶっちゃけてるので多分そんな楽になりません。
「文官がそれなりの地位にあり数も居るのだから上等だろう。うち(魔界)は強くないといくら頭がキレても役職は得られないのでな」
「魔族は脳筋しかいないのですか?」
ゲームなら中ボスポジションだからね。仕方ないね。
きっと参謀役とかも周囲の幹部に見下されて見返そうとしたら策に溺れて自滅するんだ。
「フッ。私や娘のように知勇兼備の将はいるぞ」
「自分で言いますか。いや今回の支援は助かりましたけど」
どうやら宣言通り転移魔術の改善と指導をきっちりこなしたらしいグラウゼさん。
教授された転移魔術が使える程度に素養があった人たちも、最初は魔界の元幹部な吸血鬼相手に緊張していましたが、付き合いが長くなるにつれて
「あれ? この人結構気配りしてくれるな?」
「なんか発言は高圧的だけどいい人か?」
「日本で言う所のツンデレでは?」
と終盤はグラウゼさんを結構慕っていました。
本人はノリノリで脆弱な人間相手に誇り高き吸血鬼ムーブしてましたが、日本で丸くなった部分が隠れてません。
「今の魔王様は気安過ぎるのでな。今後のことを考えればあの方はそのままでいいのだろうが、だからこそ我らのような者が魔族の恐ろしさを知らしめねばなるまい」
「あーそうですねー」
しかしそんなことは知らずにドヤるグラウゼさんと、慣れているのでてきとーに流しながら紅茶に砂糖をぼとぼと入れる脳が糖分を欲しているローマンさん。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「去年つけた梅酒が飲み頃なのでは?」
「覚えてたんですね」
半年前くらいに隠れて飲もうと思ったら既に隠されていた梅酒を思い出したアマテラス様と驚くツクヨミ様。
梅酒の飲み頃は漬けてから一年が目安とされていますが、さっぱりとしたものが好みなら三か月から半年程度でもいいとされていますし、さらに深みを求めるなら一年どころかさらに一年さらに(略)と漬けこんだりと好みでそれぞれです。
「いや梅雨って梅の字入ってるなあと思って」
「いや入ってますけれども」
何かアマテラス様の脳内で変な回路が成立したので、これから毎年梅雨のたびに梅酒のことを思いだすことが確定しました。
「まあ梅雨の語源は梅の実が熟し収穫時期と重なるからだという説もありますが」
「へー。あ、だからこの時期に梅酒つけてたのか」
ちなみに他の説としては毎日降るから「毎」の含まれる「梅」の字をあてて「梅雨」となった説や、黴が生えやすいから「黴雨」と呼ばれ転じて「梅雨」となった説もあります。
また暦の上では6月11日が入梅とされていますが、某梅酒が有名なメーカーにより梅酒の日としても制定されており、日本記念日協会からも認定を受けてたりします。
みんなも梅酒漬けようぜ!
みかんとかリンゴみたいな他の果物もイケるらしいぞ!
「よし。果実酒作ろう。五種類くらい」
「だから何故普段はものぐさなのにそういう所だけは行動的なのですか」
なお果実の種類によっては皮ごと漬けたら苦くなったりするので、ちゃんと事前に作り方は調べておきましょう。
今日も高天原は平和です。