たけのこご飯食べたい
「何で日本人で俺だけまともに魔術使えるんですか」
「いっまさらじゃのう」
安達家のリビングにて。
急に暑くなったのでコンビニで買ってきたカップアイスを食べている最中に重大な事実に気付いたカガトくんと、チューチューアイスくわえながら呆れるリィンベルさん。
袋もらうのが面倒で最近コンビニで余計なものを買わなくなったよものぐさ☆
ちなみにチューチューアイスは通称であり語源はチューペットという駄菓子とされていますが、そのチューペット自体は既に生産が終了してたりします。
じゃあ今私たちがチューチューしてるアイスは何者なんだ!?
「仮説ならあるがのう」
「あるんだ」
「まず魔力自体は日本人にもある」
「あるんだ」
割と衝撃の事実をあっさり言うリィンベルさんとあっさり受け入れるカガトくん。
でもオネエとかは別に魔力のせいでブーストかかってるとかいうわけではなく素の身体能力です。
何それ恐い。
「しかし魔術という術を使うには精霊なり悪魔なりの力を借りんとダメなわけでな」
「その辺は基礎なんで知ってますけど」
「じゃあ何で精霊が力を貸してくれるかというと、わしらのような魔術師の祖先が精霊の親玉と直接契約を交わしたからだと言われておる」
「へー。子孫にも力貸してくれるって太っ腹ですね」
「つまり日本人が力を借りようと呪文を唱えて精霊に呼びかけても『知らん人がいきなり話しかけてきた恐』となっとるわけじゃ」
「そんな理由で!?」
意外に人間臭い理由に驚くカガトくん。
でも実際知らん人からいきなり「力を貸してください」と言われても事情が分からなければ警戒します。
「え? じゃあ何で俺には力貸してくれるんですか?」
「たまに魔術師の家系でなくても魔術が使える人間が生まれるが、そういう人間は精霊に気に入られやすいタイプでな。要するに『知らない人だけどイケメンだから話だけでも聞いてあげなきゃ』となっとる」
「例え方!?」
既に忘れ去られているであろうカガトくんのハーレム体質は伏線だった……?
なおあくまで例えであり重要なのは精霊に気に入られるかどうかなので、別にイケメンだったら魔術使えるわけではありません。
「え? じゃあ探せば日本人でも結構魔術使える人いるってことですか?」
「結構はおらんじゃろうなあ。何人か試してみたが今のところは空振りじゃし。見つかったとしてもおぬしが希少なことには変わりがないレベルじゃ諦めろ」
「ですよねー」
ちょっと期待してみたけど無慈悲に否定され遠い目になるカガトくん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「今年も暑くなってまいりました!」
「やけにならないでください」
つい先週まで肌寒かったのにいきなり上がった気温にテンションもあがるアマテラス様と、呆れたように言うツクヨミ様。
いっそ汗かくくらい暑くなったら冷房入れるのに微妙な気温なのが微妙に困ります。
「まあ立夏も過ぎましたしね。七十二候では蛙が鳴きはじめミミズが出てくる時期でしょうか」
「あー田んぼの周りとか蛙が鳴きまくってるよね」
田舎だと車にひかれまくる田んぼの蛙。
ちなみに夕方ごろになると蛙の合唱が始まりますが、これはまな板を包丁で叩く音が蛙の鳴く音の波長に似ているので、夕食の準備の音につられて鳴いているという説もあったりします。
「あとは真竹のタケノコが生えてくる時期ですね」
「採りに行こう」
「普段だらけているのに何故そういうところだけ行動的なんですか」
何気に夏の季語なタケノコ。
ちなみに三月から四月ごろにタケノコが採れるのは孟宗竹という種類で、十月ごろにタケノコが出る四方竹もあったりと、種類によってタケノコが採れる時期は大きく違ったりします。
「あれ? もしかしてタケノコって年中採れる?」
「流石に真冬にタケノコ生やす竹はありませんよ。それにタケノコは成長が早いので十日ほどで食べられなくなるものもあったりと旬が短いです。上旬中旬下旬と旬が十日区切りなのはタケノコの旬から来ているともされていますね」
竹の旬と書いて筍。
タケノコだけではなく竹自体の成長が早いので、近くに竹林があるのに油断していると家の床下ぶちやぶって竹が生えてきたりと何気に厄介な植物です。
「つまり床下をぶちぬかれないためにも速やかにタケノコを見つけ出して食べないといけないと」
「妙な使命感を抱かないでください」
竹の侵略を防ぐためにタケノコを食いつくすことを決意するアマテラス様。
一見無駄に思えますが、竹の地下茎の成長を阻害するためにタケノコを蹴とばして回るという除去方法もあるので、タケノコ食いつくすのも対策としては案外間違ってなかったり。
今日も高天原は平和です。